映画– category –
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女装スパイと外交官の官能愛を描く 映画『エム・バタフライ』
北京のフランス大使館に赴任したルネ・ガリマールは蝶々夫人のアリアを歌う女優のソン・リリンに一目惚れし、二人は愛し合うようになる。だが彼女の正体は中国政府の女装スパイだった。実話を元に異形愛を描くクローネンバーグの傑作を動画と画像で解説。 -
映画『アイヒマンを追え! 』なぜ戦犯は裁かれねばならないのか
戦後、絶滅計画に関わったアイヒマンは海外に逃れ、身分を偽って平和に暮らしていた。ドイツのバウアー検事長はアイヒマンを法廷に立たせて史実と向かい合うことがドイツ民主主義の礎になると確信し、拘束に執念を燃やす。 -
悪の凡庸さ ~大衆の思考停止こそ社会的罪 映画『ハンナ・アーレント』
第二次大戦中、ナチス高官のアイヒマンは書類に判子をつくようにユダヤ人虐殺に加担した。「命令されたからやった」と無罪を主張する姿に、哲学者のハンナ・アーレントは大衆の思考停止こそ罪悪と説く。大学の講義で語られるハンナの名台詞を紹介。コラム『考えない体臭が世界を破滅に導く』 -
映画『エクソシスト』~悪魔は嘘に巧妙に真実を織り交ぜる
悪魔の言うことに耳を傾けてはならない。悪魔は嘘つきで、真実を嘘に巧妙に織り交ぜる。現代の悪魔は言葉の中に潜み、弱った人の心に囁きかけて搾取する。ポスターの元となったルネ・マグリットの名画『The Empire of Lights』と併せて。 -
マイノリティに未来はあるのか 映画『グレイテスト・ショーマン』が描くノーマライゼーションの精神
異形、有色、障がい者など、社会的マイノリティにスポットライトを当て、一流の興行師を目指すバーナムと家族の葛藤を描いた新感覚のミュージカル。好奇と蔑みの眼差しの中、『This is Me(これが私)』と熱唱する場面は圧巻。 -
神は言葉なり 映画『ザ・ウォーカー』真理が世界を支配する
世界を支配する『一冊の本』をめぐって、旅人イーライと悪党カーネギーが激突する。イーライの美しい言葉に心ひかれた少女ソラーラは行動を共にするが、カーネギーに捕らえられ、イーライも絶体絶命に陥る。キリスト教の世界観をベースに描く近未来アクションの見どころを画像と動画で紹介。コラム『神は言葉なり~真理が世界を支配する』と併せて。 -
エセ文化人が美と知性を滅ぼす 映画『コックと泥棒、その妻と愛人』
泥棒のアルバートは一流レストランのオーナーだが、文化などまったく理解しない反知性の俗物でもある。虐げられた妻ジョジーナは読書家のマイケルと恋に落ちるが、アルバートにばれて悲劇が起きる。ジョジーナと料理人が企てた壮絶な復讐と文化の死を解説。 -
映画『魔界転生』転生は人間の弱みにつけこみ、命を弄ぶ(1981年)沢田研二&千葉真一
徳川幕府に復讐を誓う天草四郎時貞は細川ガラシャ、宮本武蔵、伊賀の霧丸らを魔界衆に引き入れ、国内を混乱に貶める。絶頂期の沢田研二と千葉真一らの剣術が素晴らしい角川映画の傑作。コラム『『転生』は人間の弱みにつけこみ、命を弄ぶ』と併せて。 -
愛すべきキャラクター「リスベット」二大女優の個性が光る 『ドラゴン・タトゥーの女』
複雑なパーソナリティを有する天才ハッカー、リスベットは、虚偽の汚名を着せられたジャーナリスト、ミカエルと組んで、大富豪から依頼された少女失踪事件の解明に挑む。謎解きよりもリスベット・サランデルというキャラクターの造形に情熱が感じられる秀作。 -
映画『八甲田山』と死の彷徨 日本の組織は昔も、今も…
軍隊という硬直した組織と一部の権力に振り回される庶民の悲哀を描いた超大作。日本を戦争に駆り立てたものは何だったのか。なぜ誰も軍と政府の暴走を止めることができなかったのか。作家・新田次郎の怒りが深く静かに伝わってくる原作とルポルタージュの見どころを紹介。 -
ロシア人のドタバタ珍道中とノスタルジーを描く 音楽映画『オーケストラ!』
ボリショイ交響楽団の名指揮者アンドレイはブレジネフ政権のユダヤ人演奏家排斥を拒否して、掃除夫に降格される。ある時、パリ・シャトレ座からの公演依頼を目にしたアンドレイは昔の仲間を集めてパリに乗り込むが、バイオリニストのアンヌ=マリーの間に秘められた過去があった。チャイコフスキーのバイオリン協奏曲をテーマにロシア人の珍道中を描くハートフル・コメディの傑作を動画で紹介。コラム『過ぎ去った時代へのノスタルジー』 -
チャーリー・パーカーの伝記映画『バード』 ~酩酊の「Lover Man」 レコーディング秘話
ビバップの創始者で伝説のサックス奏者チャーリー・パーカーの短い生涯を描いたクリント・イーストウッドの伝記映画。ドラマとしての物足りなさは否めないが、演奏は素晴らしく、極上のミュージック動画として楽しめる。酩酊状態でレコーディングに挑んだ『Lover Man』を動画とSpotifyで紹介。阿川泰子のヴォーカル&邦訳と併せて。 -
映画『スラムドッグ$ミリオネア』僕と君の違いは『運』だけ
クイズ・ミリオネアに出場したスラム出身の青年が次々に難問を解いてファイナルアンサーに挑む。貧困、人身売買、売春など、インドの壮絶な現実を背景に、少年達のパワフルな生き様と知恵を描いたヒューマンドラマ。コラム「貧困を生き抜いた兄弟 ~正義に生きるか、暴力に走るか」「僕と君の違いは運だけ」「暴力こそ救い ~兄サリームの生き様」 -
映画『トゥモロー・ワールド』人類の希望とは何か ~EUの未来を予見する
2027年。子供が生まれなくなった世界でセオはアフリカ系女性の護送を依頼される。彼女は奇跡的に子供を身ごもり、出産間近だった。現代の欧州を予見するような重いトーンの近未来SF。コラム「映画が予見したEUの未来と人類の希望」「神なる女体と未来の子供」 -
英国王室が分かる4部作「エリザベス」「ゴールデン・エイジ」「ブーリン家の姉妹」「クイーン」
25歳で王位を継承したエリザベス1世の半生をケイト・ブランシェットが知的に演じる歴史ドラマ。老獪な政治家相手に自らの理想を時、政策決定を下すエリザベスの姿は現代キャリアウーマンにも通じる。 -
死刑制度は本当に遺族と社会を救うのか ~映画『デッドマン・ウォーキング』
死刑囚の精神的アドバイザーを務めるシスター・ヘレンは、死刑宣告されたマシューと面会するうち、死刑が本当に解決策なのか疑問を抱くようになる。一方、我が子を殺された遺族は激しい憎悪をつのらせ、死刑にすべきとの態度を崩さない。死刑囚と遺族感情の間でヘレンは苦悩しながらも、最後までマシューに寄り添うことを決意する。 -
映倫のボカシがぼかした作品の本質 サイコスリラーの傑作『羊たちの沈黙』
バッファロービルは性倒錯ではない。自分自身を嫌って『変身』を望んでいる。推理の鍵となる女装ダンスの場面(被害者の生皮を被って鏡の前で全裸で踊る)に挿入された映倫のボカシのせいで、作品の本質までぼやけてしまった日本の劇場公開版に対する異議を動画と画像で説く。 -
WALL-E(ウォーリー)痛烈なる社会風刺と第二の創世記
宇宙コロニーを舞台に、大量消費社会と機械化文明を風刺するロボットアニメの傑作。人々は皆肥大化し、完全自動化された町で、コンピュータに管理され、他人と顔を合わせることもなく、移動マシンに乗って暮らす彼らの姿は未来の人類を思わせる。エヴァを追いかけるウォーリーの行動は町に大混乱を引き起こすが・・ -
映画『野生の証明』と町田義人『戦士の休息』~笑って死ねる人生とは
薬師丸ひろ子のデビュー作『野生の証明』の見どころと主題歌『戦士の休息』から「笑って死ねる人生」の極意を解説。 -
映画『ハミングバード』と償い ~犯罪者は幸福になってはいけないのか
ジェイソン・ステイサムが照れ屋の中学生みたいにポーランド系シスターと可憐な恋を演じる異色のハードアクション。筋肉マッチョながら初めてのキスは純愛全開。心に残る美しいラブストーリー。原題の『償い』に関するコラムと併せて。