子育てとは、子供時代をもう一度生き直すこと  映画『ファインディング・ニモ』

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『子育て』とは、子供時代をもう一度生き直すこと

『ファインディング・ニモ』のDVD特典映像に、アンドリュー・スタントン監督のこんなコメントがある。

『親になる』ということは、子供の気持ちと、親の気持ちと、両方わかることなんだ

本当にその通りだ。

親は「親」であると同時に、「子供」でもある。

子育ての合間に、自分の子供時代や我が親のことがフラッシュバックする人も少なくないだろう。

親に甘えられなかったり、十分に愛されなかった思い出があると、子育ての途中に苦しくなるのは、我が子を通して、自分自身を重ね見るからだ。

泣いて転がる我が子も、反抗ばかりして可愛げのない我が子も、どこか自分の幼い頃を想起させる。

子供の「ギャン泣き」を聞いていると、自分も胸が苦しくなるのは、我が子の泣き声を通して、自分自身の泣き声を聞いているからだ。

ダダこね育ちのすすめ』で幼児の癇癪との付き合い方をといておられる阿部秀雄先生も『子育てとは、もう一度、自分の子供時代をやり直すこと』と書いておられるように、子育てというのは、今一度「自分の子供時代」と向き合いながら、壊れたピースを繕い、我が親の気持ちをなぞらえ、理解と感謝に辿り着く過程なのかもしれない。

子育てといえば、「子供を育てること」と思っている人も多いが(子供を持つまでは、誰でもそう思う)、第二のミッションは、親の気持ちも理解することだ。

親の気持ちは、実際に自分が親になってみないと、絶対に分からない。

親が子供の気持ちを推し量ることは可能でも、その逆は難しい。

たとえ想像力に富んだ子供が、多少、親の気持ちになりきることができても、実際の親の気持ちはもっと複雑である。

親の気持ちが分かったところで、何になる? と思う人もあるかもしれないが、親の気持ちが分かるということは、子供時代にどうしても克服できなかった心の問題をクリアし、感謝に辿り着くプロセスでもある。

自分が親になってみて初めて分かる、「あの日の親の理不尽な仕打ち」を自分自身が経験することで、憑きものが落ちることもあるからだ。

中には、「あんな親、一生許さない」という人もあるかもしれない。

だが、実際に自分で子供を育ててみれば、自分の一番嫌いな親の姿を、一度や二度は自分自身の中に見出して、愕然とするものだ。

同時に、自分の親の実像を理解し、物の見方も変われば、それこそ、あなたにとって最大の人生の処方箋である。

子育てとは、子供時代をもう一度生き直すことであり、壮大な赦しの旅でもある。

自分も、親も許せた時、あなたは人生の課題を全てやり遂げた、と言えるのではないだろうか。

初稿 2011年12月9日

映画『ファインディング・ニモ』について

『ファインディング・ニモ』は、世界中に「カクレクマノミ」熱帯魚ブームを巻き起こしたファミリー・アニメの傑作です。

新婚のマリーンとコーラルは、やがて生まれてくる子供たちの為に、珊瑚礁の外れに素敵な住まいを作ります。

ところが、凶暴なバラクーダに見つかり、卵を守ろうとしたコーラルは、バラクーダに襲われ、卵も全て食べられてしまいます。

たった一つ残ったのは、ひび割れた卵でした。

マリーンは、生まれた子供を「ニモ」と名付け、もう二度と、あんな危ない目に遭わないよう、大事に、大事に、育てます。

ところが、元気なニモは、マリーンの躾が窮屈で、反抗して珊瑚礁から飛び出した時、ダイバーに捕らえられてしまいます。

マリーンはダイバーの船を追いますが、到底、追いつきません。

海の中でパニックを起こしていた時、助けてくれたのが、ナンヨウハギのドリーでした。

ドリーは「ダイバーの乗った船を見た」を言い、マリーンを案内しようとしますが、忘れっぽいドリーは、船がどちらに向かって走り去ったのか、思い出すことができません。

たった一つの手掛かりは、ダイバーが落としていった水中メガネに書かれた「シドニー」の住所でした。

マリーンとドリーは、海の仲間の助けを得ながら、どうにかシドニーに辿り着きますが、ニモは歯科クリニックの水槽に閉じ込められ、とても近付くことができません。

果たして、マリーンはニモを救い出し、珊瑚礁の家に帰ることができるのか・・・という物語です。

見どころ

本作は、ファミリー・ドラマの傑作『モンスターズ・インク』(ディズニーの予告編を見る)の大ヒットで、のりにのっていたピクサーが満を期してリリースしたお子様アニメの最高峰です。

DVD収録の制作ドキュメンタリーでもコメントされていましたが、珊瑚礁や水の揺らぎまで本物そっくりで、「CGだけで、ここまで表現できる」とピクサーの実力を世間に知らしめた会心作。

日本語吹替え版では、マリーンを演じた「とんねるず」の木梨氏が意外なほど上手で、ドリーを演じた室井滋と良い味を出していました。

タレント起用で成功したと言えば、『モンスターズ・インク』のマイク・ワゾウスキーを演じた田中裕二(爆笑問題)も秀逸でしたが。

私も、本編を見るまでは、「ただの魚アニメ」と見くびっていましたが、「親ばなれ」「子ばなれ」の過程が自然に描かれており、エンディングもいつまでも余韻が残る、素晴らしい脚本。

また歯科医の描写も面白く、本職の人が見たら、専門用語に爆笑するらしい。

続編となる『ファインディング・ドリー』(予告編を見る)がいまいちだったので、『ニモ』も興味がない人もあるかもしれませんが、こちらは全く別ものとして見て欲しい。

心温まるファミリードラマの傑作です。

作品情報

ファインディング・ニモ(2003年) ー Finding Nemo(ニモを探す)

監督 : アンドリュー・スタントン
声の出演 : 木梨憲武(マーリン)、宮谷恵多(ニモ)、室井滋(ドリー)、山路和宏(ギル)

ァインディング・ニモ (字幕版)
ァインディング・ニモ (字幕版)

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この記事を書いた人

MOKOのアバター MOKO Author

作家・文芸愛好家。アニメから古典文学まで幅広く親しむ雑色系。科学と文芸が融合した新感覚の小説を手がけています。東欧在住。作品が名刺代わり。Amazon著者ページ https://amzn.to/3VmKhhR

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