紛争ダイヤの悲劇を描く 映画『ブラッド・ダイヤモンド』/ レオナルド・ディカプリオ主演

目次 🏃

映画『ブラッド・ダイヤモンド』について

あらすじ

内戦が続くシエラレオネの村で、漁師ソロモン(ジャイモン・フンスー)とその家族は幸せに暮らしていたが、反政府勢力の革命統一戦線が襲撃し、一家は離散。ソロモンはダイヤ採掘場に送られる。

ある日、ソロモンは川底から大きなピンクダイヤモンドを見つけ、監視の目をかいくぐって、地中に埋める。

だが、ソロモンの動向を見張っていた監視役のポイズン大尉に見つかり、ピンクダイヤも奪われそうになるが、運よく政府軍が乗り込み、二人を捕らえて留置所に拘留する。

一方、ローデシア出身の元白人傭兵アーチャー(レオナルド・ディカプリオ)は、武器調達と引き換えに、革命統一戦線からダイヤを受け取り、隣国リベリアに密輸して、アフリカを脱出する為の資金稼ぎをしていた。が、途中で、シエラレオネ政府軍に捕らえられ、ソロモンと同じ留置所に入れられる。

その過程で、ソロモンが大粒のピンクダイヤモンドを地中に埋めたことを知ったアーチャーは、コネを使って、ソロモンを釈放し、ピンクダイヤモンドの在処を聞き出そうとする。

だが、ソロモンは、ピンクダイヤと引き換えに、離ればなれになった家族を探し出すことをアーチャーに要求する。

アーチャーとソロモンは、紛争ダイヤの問題を追及する女性ジャーナリスト、マディー(ジェニファー・コネリー)と行動を共にするようになるが、想像以上に闇は深く、何度も命の危険に晒される。

果たして、アーチャーとソロモンはピンクダイヤモンドを取り返し、家族を救い出すことができるのか……。

↓ 泥まみれの王子、ディカプリオがとっても新鮮。悲劇のソロモンを演じるジャイモン・フンスーの演技力も素晴らしいです。平凡な田舎漁師が、最後、歴史の証人に生まれ変わる様に注目。

アーチャーとマディの友情

『タイタニック』の世界的ブーム以降、これといった作品に恵まれず、一時期、コスチューム史劇『仮面の男』(予告編を見る)でルイ14世など演じていたレオナルド・ディカプリオが、アスリートのように肉体を鍛え上げ、甘顔のジャニーズ系からアクション俳優に転身した、記念碑的な作品。

本作を皮切りに、中東テロリストとの対決を描いた『ワールド・オブ・ライズ』(予告編を見る)、鬼才クリストファー・ノーランのサイバーSFアクション『インセプション』(予告編を見る)などで、キレのいいアクションを見せ、演技派としても着実にキャリアを積み上げたのは感慨深い。

ちなみに、筆者はタイタニック以前からディカプリオのファンであり、若き天才詩人ランボーとヴェルレーヌの同性愛を描いた『太陽と月に背いて』のラブシーンに嘆息した一人である。
参考→ アルトゥール・ランボーの詩 と 映画『太陽と月に背いて』

そんなレオ様の第二の出世作となった『ブラッド・ダイヤモンド』は、日本でも人気の高い『ラスト・サムライ』(トム・クルーズ、渡辺謙)の監督
エドワード・ズウィックの会心作であり、「違法ダイヤと奴隷労働」という非常に重いテーマながら、それぞれの運命をドラマティックに描き、日頃、政治や社会問題に興味のない人でも、気負わず鑑賞できる社会はドラマに仕上がっている。

わけても好感度が高いのは、熱血ジャーナリストを演じたジェニファー・コネリーの爽やかな魅力と、色恋抜きの、アーチャーとの友情だろう。

ハリウッド映画の場合、ここぞとばかり主演の二人が絡み合うが、本作は、「友だち以上、恋人未満」にとどめ、キスシーンすらない。

だが、それがかえって、二人の心の交流を際立て、ソロモンとピンクダイヤの悲劇に集中できる演出になっている。

もし、作中で、中途半端に二人が絡めば、たちまち興味も失せて、安っぽいタイタニック Part2 と化していただろう。

その点、脚本もよく練れていて、タイタニックとは別モノと分かっていても、ラストシーンはどこかタイタニックで、冬の大西洋に沈み行くジャックを思わせる。

女に同情されつつ、沈む役回りは、ディカプリオの個性にうってつけで、それ故に、本作の評価が高い部分もあるのではないだろうか。

血まみれダイヤと世界の鉱業問題

現代文明とレアメタル ~金属資源がもたらす混乱と悲劇』でも触れているが、過去、現在、未来において、あらゆる紛争の元には鉱物資源・エネルギー問題があり、持主に莫大な利益をもたらす宝石も例外ではない。

そして、最大の悲劇は、こうした稀少金属や宝石の大半が、政情不安な後進国で採掘され、その富は、決して国民に還元されることなく、企業や汚職政治家に吸い上げられることだ。

もちろん、その末端には、先進国で暮らす一般消費者も含まれる。

本作でも、やっと自由を手に入れたソロモンが、ロンドンの宝飾店のショーウィンドウに飾られた美しいジュエリーをまじまじと見つめる場面が登場するが、多くの人は、それがどうやって市場にもたらされたか、深く考えることもなく、採掘者ではなくプロデューサーに莫大な対価を払い、便利で快適な暮らしを謳歌している。

そうと分かっても、後戻りできない哀しさ。

たまたま生まれ落ちた場所が、「そちら側」というだけで、人並みな幸せを手に入れることもできず、ある者は腕を切られ、ある者は不法採掘場に送られ、ある者は少年兵として銃を持たされ、人権も、人命も、蹂躙される。

そうした現実を、まざまざと描きながら、それがちっとも嫌味に感じられないのは、エドワード・図ヴィック監督の視点が、「たまたまその場に居合わせた」ソロモンと、宿命から逃げるに逃げられないアーチャーに注がれているからだろう。

居丈高に社会を批判するわけでもなければ、末端の消費者にお説教するわけでもない。

ただただ彼らの怒り、悲しみ、戸惑い、そして友情を、古典的な手法で描いている。

古典的な手法というのは、「さあ、ここで、お父さんと息子さん、抱き合って、泣きますよ」みたいな、ありきたりの展開。

そして、その通りに展開するから、観る方も安心するし、いいものを見せてもらったという気持ちになる。

なんでも捻ればいいというものではなく、テーマが重く、複雑だからこそ、人間ドラマは理想的であって欲しいのだ。

人によっては、その「くささ」に辟易するかもしれないが、『ラストサムライ』でジ~ンとなった人なら、本作もきっと素直に泣けると思う。

そして、現実の重さを考えるきっかけになるだろう。

考えたところで、現実は一ミリも変わらないかもしれないが、知っているのと、知らないのでは、大きな違いがあると思うから。

インセプションより格好いい

私も長年、レオ様をウォッチしてますが、まさか、筋肉むきむきになって、こういう役を演じるとは夢にも思いませんでした。

ずっと王子様路線で行くのかと思った。

本人は「タイタニック」に出演して、哀れなジャックのイメージが付きまとったことに非常に後悔を覚えていたらしいから、本作のオファーが来た時は、生き返ったような気持ちではないだろうか。

でも、何を演じても、やっぱりどこかジャックで、結末もジャックというのが、レオさまの悲しいところ。

一般には『インセプション』の方が知名度が高いが、レオ様はどう見ても、二児の父親には見えないので(早く結婚しなさい)、あれは、個人的には、どっちらけでした。アクションは良かったけど、レオ様だけが夢の世界で浮いていた、というより、設定に全然はまってなかった。マリオン・コティヤールとも、とても夫婦に見えなかったし(^_^;

ともあれ、人に聞かれたら、二番目におすすめしたい良作です。

作品情報

ブラッド・ダイヤモンド(2006年) - Blood Diamond

監督 : エドワード・ズウィック (代表作『ラスト・サムライ』『完全なるチェックメイト』『恋に落ちたシェイクスピア』)
主演 : レオナルド・ディカプリオ(ダイヤ密輸人アーチャー)、ジェニファー・コネリー(ジャーナリスト・マディ)、ジャイモン・フンス(漁師ソロモン)

ブラッド・ダイヤモンド (字幕版)
ブラッド・ダイヤモンド (字幕版)

初稿:2008年11月05日

誰かにこっそり教えたい 👂
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

MOKOのアバター MOKO Author

作家・文芸愛好家。アニメから古典文学まで幅広く親しむ雑色系。科学と文芸が融合した新感覚の小説を手がけています。東欧在住。作品が名刺代わり。Amazon著者ページ https://amzn.to/3VmKhhR

当サイトの商品リンクにはアフィリエイトを含みます。

目次 🏃