WALL-E(ウォーリー)痛烈なる社会風刺と第二の創世記

宇宙コロニーを舞台に、大量消費社会と機械化文明を風刺するロボットアニメの傑作。
人々は皆肥大化し、完全自動化された町で、コンピュータに管理され、他人と顔を合わせることもなく、移動マシンに乗って暮らす彼らの姿は未来の人類を思わせる。
エヴァを追いかけるウォーリーの行動は町に大混乱を引き起こすが・・

この記事はネタバレを含みます。未見の方はご注意下さい。

目次 🏃

あらすじと見どころ

あらすじ

西暦2805年、人類は大量消費社会の後、地上に山のようなゴミを残して世代宇宙船『アクシオム(AXIOM)』に移り住む。
しかし、ゴミ処理ロボットのWALL-Eは一人で黙々とゴミを拾い集め、自身のボディで圧縮しては、山のように積み上げていた。

そんなある日、上空から宇宙船が飛来し、白色に輝く最新式ロボットのEVE(イブ)が姿を現す。
EVEに一目惚れしたWALL-Eは、彼女を自宅に招き、ゴミ捨て場で拾い集めたコレクションを見せて、彼女を悦ばせるが、靴の中に芽吹いた緑葉を見せた途端、EVEは激しく振動し、それをボディに取り込むと、完全にフリーズしてしまう。

その後、同じ宇宙船が飛来し、フリーズしたEVEを連れ去ると、WALL-Eは機体にしがみつき、EVEの後を追う。
果たしてWALL-EはEVEを取り戻すことができるのか。靴の中の緑葉は何を意味するのか。

ロボット同士の心の交流と、宇宙生活でだれきった市民の覚醒が印象的なCGアニメの傑作です。

見どころ

本作は、人間以外の台詞が存在しないにもかかわらず(全て機械音)、WALL-E、EVE、お掃除ロボット、修理中ロボットらの内面が手に取るように分かる、高度な作品だ。
みな機械なのだが、一つ一つの動きに特徴があり、「この子はせっかち」「この子はのんびり」と、それぞれの個性まで伝わってくる。

また、WALL-E & EVEのカップルと同じように、『アクシオム』の住人にもカップルが誕生し、それが人類再生を予感させるのも印象的だ(後述するが、WALL-Eたちが一騒動を起こすまで、彼らはモニター越しに人と話し、触れ合うこともなかった)

作品の要となる、ロボット同士の会話や効果音は、『スターウォーズ』『インディ・ジョーンズ』『E.T』等の音響を担当したサウンドデザイナーのベン・バートが手がけており、本当に機械が話しているような音使いが素晴らしい。(ライトセーバーのブイ~ンという音を作った人)

ピクサー映画も、だんだん初期の頃の創造性が失われ、旧作の焼き直しみたいな作品が増えているが、本作は初期スタッフの英知と情熱が結晶したような出来映えで、美術、脚本とも最高峰と言える。
「子供向けのロボットアニメ」と敬遠している人もあるかもしれないが、本作は、見る目のある大人にこそ見て欲しい、上質なラブロマンス & 現代社会の啓蒙ドラマである。

作品情報

ウォーリー(2008年) ー WALL-E

製作総指揮 : ジョン・ラセター(代表作「リトル・マーメイド」「ライオン・キング」「モンスターズ・インク」「ファインディング・ニモ」)
監督 : アンドリュー・スタントン
音楽 : トーマス・ニューマン

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【レビュー】 自分の足で歩くことを忘れたWALL-Eの世界

肥満大国アメリカと電動式車椅子の人々

2001年、初めてアメリカを訪れた時、スーパーマーケットの前に、大きな電動式車椅子のカートがずらりと並んでいるのを目にして、「さすが、アメリカ。身障者も楽しくお買い物ができるよう、配慮がなされているのね」と思ったものだ。

ところが、店内に入ってびっくり。

それは身体障害者用ではなく、太りすぎて歩けなくなった肥満者の乗り物だったのだ。

太りすぎて歩けない』。

これがどういう意味か分かるだろうか。

グラマーサイズの女の子が「ああ、もう3キロ、痩せたらなぁ……」とため息をつくのとはレベルが違う。

150キロだか、200キロだか、あまりにも体重が増えすぎて、自分の足で立つことも、歩くこともできないのだ。

理由は明白。

ピザ、ケーキ、ハンバーガー、コーラ、チップスといった、高カロリー&ファストフードの大量摂取に加え、「ドライブスルー・ファーマシー(薬局)」や「ドライブスルー銀行」が当たり前の徹底した車社会。

人々は、摂生することもなければ、意識して歩くこともなく、食べたら、食べた分だけ身について、凄まじい勢いで太っていく。

これも一つの文明病であり、社会の格差が生み出した病でもある。

※ (筆者・追記) 近年では、これに『格差』『低所得』というキーワードが伴う。低所得で、労働に追われる世帯ほど、食生活が「菓子パン」「冷凍ピザ」「スナック」といった高カロリー&炭水化物ものに偏り、肥満になりやすい傾向がある。新鮮や野菜や果物は高価な上、調理に手間と時間がかかるからだ。

大量消費社会のなれの果て

ゆえに、アニメ映画『WALL-E』を見た時、これは決して未来社会の空想ではない、既に始まっている現代アメリカの風刺だと感じた。

肥満だけではない。

広大な敷地にどんと構える大型スーパー・マーケット。

『Buy N Large』(でっかく買おう)のキャッチフレーズの通り、スーパーの商品棚はあらゆるモノであふれ、消費しきれないものが、まだ山積みになって、空き地にあふれかえっている。

まるでアメリカ全土に展開するスーパーマーケット・チェーン『WAL★Mart』の未来形である。

WALL-E / ウォーリー

商品棚には飲食物や日用雑貨など、ありとあらゆる製品が溢れ、『We got all you need, and much more(あなたが必要とする全てのもの、それ以上のものを取り揃えております)』の台詞そのままに、安い物を大量に、必要以上に買わせる商法で、アメリカ経済を形作っている。

WALL-E / ウォーリー

アナログとデジタルが出会う時 : ウォーリーとEVEの恋

その結果、地球はどうなった?

成層圏までゴミだらけになり、人類はとうとう『アクシオム』に乗り込み、はるか宇宙の彼方へ旅立ってしまった。

There's plenty of space in space(宇宙にならもっと空きスペースがある)」と笑いながら。

だが、WALL-Eは地球に一人残り、黙々とゴミ処理を続けていた。

果てしない作業の中で、WALL-Eは、古いビデオテープに録画されたミュージカル映画『ハロードーリー』の若い恋人たちのように、いつか誰かと手を繋ぐことを夢見ている。

WALL-E / ウォーリー

そんなWALL-Eの目の前に現れたのが、特命を帯びて地球にやって来た最新型ロボットEVEだ。

どうにかEVEの心を開き、自分の住まいに招待すと、WALL-Eは自慢のコレクションを披露する。

中でも、EVEが心ひかれたのは、ライターの『火』だ。

WALL-E / ウォーリー

なぜ、『火』なのか。

現代の住まいはどこもオール電化が進み、火を使う家庭は減っている。

「火で調理する」という概念さえない子供さえいる。

そもそも『火』を見る機会がない。

仏壇もなければ、ライターもなく、友達と花火で遊ぶこともなければ、悪戯心で小枝や枯れ葉に火を付けることもないからだ。

それは宇宙船で暮らすEVEも同然だ。

全てのエネルギーを電気でまかなう宇宙船において、火は危険なツールでしかない。

EVEも『火』というものを、知識としては持っていても、実物を目にするのは初めてだったのだろう。

未来社会の申し子みたいなEVEが、生まれて初めて『火』を目にして感動したのは、非常に象徴的だ。
(ちなみに、この「火」は映画のエンディングで生活の重要なエネルギー源となり、人々が火を囲んで再び自然な暮らしを取り戻すプロセスが丁寧に描かれている)

現実社会のアイロニー : 誰も歩かず、顔を合わせることもない

そんなEVEにますます心を惹かれたWALL-Eは、もっとEVEを喜ばせようと、とっておきの宝物を見せる。

それは古びた靴に詰まった土から、ぽつんと芽吹いた緑の葉だった。

突然、EVEのボディが震えだし、靴ごとボディに取り込んだかと思うと、フリーズしてしまう。

そして、そのまま宇宙船に連れ去られ、「アクシオム」に運ばれていく。

EVEを失うまいと、夢中で宇宙船に飛び乗ったWALL-Eは、もう7世紀も銀河の片隅で航行している宇宙船『アクシオム』にドックインする。

そこで目にしたのは、コンピュータに完全管理され、肉体的にも肥大化した人間社会だった。

WALL-E / ウォーリー

彼らは一日中、コンピュータのモニターと向かい合い、相手が隣に居るにもかかわらず、モニター越しに会話を続けている。

実際、現代の私たちはSNSやメッセンジャー、オンライン会議などを通して、モニター越しのコミュニケーションを体験している。

隣人に対する気遣いも、社会への関心も薄れて、モニターに映し出される情報が世界の全てになっているのは、現代のITと全く同じだ。

彼らはまた、重力の小さい船内で、何世紀にもわたって生活してきた為に、骨容量が著しく減少し、今では歩行さえままならない。

ずっと移動チェアに座りっぱなしで、何でもロボットがやってくれるので、筋肉が発達することもなく、脂肪でぶよぶよだ。

そのくせ、コンソールを操作する指先だけは器用に動き、それ以外のものは完全に退化してしまっている。

作中では、『重力が小さいので、このような体型になった』と説明されているが、現代人に対するアイロニーであることは誰の目にも明らかだ。

24時間、オートパイロットに世話されて、文字通り、『There's no need to walk(宇宙船の中では歩く必要はありません)』の世界を生きる現代人のなれの果てである。

WALL-E / ウォーリー

コンピュータに支配される人々

しかも、人類の変化はコミュニケーションや肉体にとどまらない。

彼らはファーストフードのミルクシェークのような流動食を与えられ、噛むことも亡ければ、調理することもない。

これもまた「手間いらず」で済ませる現代の食生活に対する皮肉で、みな一様に、どろどろのシェークを啜る場面は、ジョークを通り越して、もはやホラーである。

WALL-E / ウォーリー

極めつけは、なおも宇宙船を支配する大手スーパーマーケット『Buy N Large(でっかく買おう)』のコマーシャルだ。

彼らのプロパガンダのようなコマーシャルは、人の思考や好みを完全に支配し、『Attension, Axiom shoppers, Try Blue. It's new Red(ブルーを着てみて、これが”新しい赤”よ)』というアナウンスが流れると、皆の洋服が一斉に青に変わる。

好みまでコンピュータに支配され、もはや意思さえないみたいだ。

WALL-E / ウォーリー

人類を変えた自然からの贈り物

そんな機械社会を根底から覆したのが、EVEの持ち帰った葉っぱだ。

葉っぱは、地球復活を告げる、希望の『芽』でもある。

ところが、人類の機関を喜ばないものがいた。

『アクシオム』のシステムを司る、オートパイロットだ。

葉っぱを見て、地球に帰還すべきと判断した船長をキャビンに閉じ込め、艦橋を乗っ取ってしまう。

だが、完全に機械に飼い慣らされたような人々が、本当に母なる大地に帰還することができるのか?

そこで登場するのが、アクシオムの住人、ジョンとメアリだ。

WALL-E / ウォーリー

彼らはたまたまWALL-Eのドタバタに巻き込まれ、移動チェアから転落して、モニターから解放されたことで、現実を自分の目で見るkとおが叶った人たちである。

生まれた時からずっとモニターと向かい合って生きてきたジョンとメアリは、目の前に拡がる「本物の世界」と、星空に舞うWALL-EとEVEのダンスに感動し、「素敵ね」と微笑み合う。

そんな二人の手が偶然触れ合ったことから、ジョンとメアリは今まで経験したことのない高揚感を覚え、プールに連れ立って、子供のようにはしゃぐ。

長年、アクシオムに住みながら、そこに大きなプールがあることさ絵知らなかったメアリ。

「そんな馬鹿な」と思うかもしれないが、日がな一日、モニターと向かいって、自分以外のものに関心を示さない人の情報量など、そんなものだ。

そして、一度、肉眼で世界を見つめ、本物の触れ合いを知ったジョンとメアリは、二度とモニターの世界に戻ることはなかった。

全ては一つの『芽』から始まる

すったもんだの末、地球に帰り着いた人々は、恐る恐る大地に降り立ち、まずは緑を育てることから始める。

そんな彼らが、どんな未来を作ったか。

それはエンディングで巧みに表現されている。

まずは、原始人が描いたラスコー洞窟の壁画のようなアクシオムの帰還。

WALL-E / ウォーリー

次いで、古代マヤ文明のような壁画。

ここで原始のエネルギーである『火』が使われている。

WALL-E / ウォーリー

次に、ルネッサンス時代のような素描。

WALL-E / ウォーリー

17世紀から18世紀にかけてのクラシックな絵画。

WALL-E / ウォーリー

最後は19世紀後半に登場した印象派のような油絵。

WALL-E / ウォーリー

ロボットたちのボディランゲージ

『WALL-E』の素晴らしい点は、これだけ痛烈なメッセージを人間の口からいっさい主張せず、ロボットたちの無声映画のようなやり取りの中に、深く、静かに描いた点だ。

彼らは「愛している」とも言わないし、「自然が一番」とも言わない。

ただ、見つめ合い、人類の希望の芽を必死で守り抜いて、「誰かと手を取り合う」という夢を果たす。

ロボットよりもロボット的な生き方をしている人々の合間を縫って、ドタバタと恋を成就させる(ついでに人類救済も)、WALL-Eたちの活躍の、なんと尊く、いじらしいことか。

』──すなわち、かつて人々が大地に生きたことを物語る古びたグッズの中に――アクシオムの住人はリクライニングシートで移動するため、靴すら履かない――ひそかに芽生えたWALL-Eの宝物は、世界を支えるトネリコの樹のように大きく育ち、いつまでも二人の恋と人類を見守ってくれるはずだ。

映画『ハロードーリー』について

この作品を理解する上で欠かせないのが『WALL-E』の大好きなミュージカル映画「ハロー・ドーリー!」

私はこの映画を観たことがないので、どんな内容なのかは以下のサイトから引用しておきます。

秀作アニメ「WALL-E/ウォーリー」の主人公が宝物にしているのが、この古いアメリカ映画「ハロー・ドーリー!」のビデオ・テープだ。ブロードウェイの大ヒット作品の映画化で、監督はダンスの名手で俳優のジーン・ケリーが務めている。

美人で世話好きの未亡人ドーリーは、他人の縁結びが大好きな女性。町の名士だが金儲けばかりに夢中の中年男ホレスにもお相手を見つけるが、すったもんだのあげく、結局は自分が彼と結ばれる。

ウォーリーが繰り返し見ているその場面は、ホレスが営む飼料店の従業員の、コーネリアスとバーナビーの二人が町の人々と歌い踊る楽しげなシークエンス。二人の青年が、ロクに休みもくれない雇い主に嫌気がさし、すてきな恋がしたい!と小さな町を飛び出して大都会NYへと向かう場面だ。弾むようなメロディの曲「日曜日には晴着で」にのって、美しい娘に出会って彼女にキスするまで帰らないと高らかに歌う。優雅なロングドレスと背広姿の男女の装いはクラシックだが、次々に変化するメンバーの踊りで町と駅を埋め尽くす様は圧巻だ。主演のバーブラ・ストライサンドも一緒に歌うが、彼女がクローズアップされる場面ではなく、多くの着飾った男女が歌い踊る群舞の迫力が魅力。恋をすると決めて町を飛び出す青年たちの姿と、大好きなイヴを追って未知の宇宙に飛び出すウォーリーの姿が符合する。ただ、ウォーリーがこだわる“手をつなぐ”行為は特に強調されるわけではなく、単にダンスの振付の一部という印象だ。

劇中では、ジャズ界の巨人サッチモことルイ・アームストロングも登場し、独特のダミ声で歌を披露している。ちなみに、このサッチモの十八番のひとつに「バラ色の人生」があるが、「ウォーリー」の中でも効果的に使われていた。製作時はミュージカルの黄金期を過ぎてはいるが、バーブラ・ストライサンドという素晴らしい歌手・女優を得て華麗なミュージカル映画となった。

(出演:バーブラ・ストライサンド、ウォルター・マッソー、マイケル・クロフォード、他)
(1969年/アメリカ/ジーン・ケリー監督/原題「Hello Dolly!」)

『WALL-E』がうっとりと見入る踊りの場面で歌われているのは「Put on your Sunday clothes(日曜日には晴れ着を着て)」

なぜこの曲が使われたかについては、下記サイトに詳しい解説がありますので、ぜひご参照下さい。

「WALL・E」を観る前に観るべき映画その1-「ハロー・ドーリー!」

Put on your Sunday clothes,
There's lots of world out there
Get out the brillantine and dime cigars
We're gonna find adventure in the evening air
Girls in white in a perfumed night
Where the lights are bright as the stars!
Put on your Sunday clothes, we're gonna ride through town
In one of those new horsedrawn open cars

日曜日には晴れ着を着よう
外の世界にはたくさんのものがある
安物のタバコやポマード(?)brillantine=An oily, perfumed hairdressing.
から おさらばして
黄昏の中に冒険を見つけに行くんだ
星のように光り輝く 薫り高い夜の中に
白いドレスに身を包んだ美しい娘達を見つけにね
日曜日には晴れ着を着て
町の外にくりだそう
新しいオープンカーの一つに乗って(?)

『WALL-E』がEVEと出会った時に流れる『La vie en Rose』も素敵な曲でした。
歌っているのはルイ・アームストロング。
オリジナルは偉大なフランスの歌手エディット・ピアフの歌うシャンソンです。

Hold me close and hold me fast
The magic spell you cast
This is la vie en rose

When you kiss me heaven sighs
And tho I close my eyes
I see la vie en rose

When you press me to your heart
Im in a world apart
A world where roses bloom

And when you speak...angels sing from above
Everyday words seem...to turn into love songs

Give your heart and soul to me
And life will always be
La vie en rose

近く 今すぐ 私を抱きしめて
あなたが綴る魔法の言葉
それはバラ色の人生

あなたが口づける時 天国がため息をつく
目を閉じると私には見えるの
バラ色の人生が

あなたがあなたの心に私を焼き付ける時
私はあなたの心の一部になる
バラの咲き誇る世界の一つに

そしてあなたが 天使がささやくように 
何かを話す時
毎日 すべての言葉が 愛の歌のように思えるの

あなたの心と魂を どうぞ私に捧げて下さい
そうすれば この人生は
いつもバラ色に輝き続けることでしょう

子供が見ても楽しいし、大人でも感動する。

いつものピクサーらしいクオリティの高さだと思います。

映画レビューとしては、ブログ『セガール気分で逢いましょう』の本職ライターさんがとても素敵な文章を書いて下さっているので、ぜひご覧になって下さいね。

たとえばこんな描写がある。

一日の作業が終わると、ウォーリーはたったひとりで自宅に帰り、自らのメンテナンスに余念がない。そして一息つくと、作業中に見つけたビデオデッキにVTRを入れテレビを付ける。あふれ出す音楽、広がり行く映像。そこではもう何千回と映し出されたであろうミュージカル映画「ハロー・ドリー」が色彩豊かに映し出されている。この世のものとは思えないくらいに楽しげな音楽に身も心も奪われながら、ウォーリーはそっと自分の身体に備わったスイッチを押す。ガチャリ。録音機能だ。そして彼は、翌日の作業中もこの音楽を再生しながら、いつしか誰かの手をそっと握りしめる日を夢見ている。あのミュージカル・スターみたいに・・・。

人生で心奪われる場面に出逢うと、人は誰でも「この瞬間を忘れたくない」と切に願う。それは人間にとって生まれながらに備え付けられた反射運動で、僕らは日々の生活の中でついつい慣れっこになってしまいその大切な思考過程ついて意識することを忘れがちだ。ウォーリーは自身に組み込まれた思考回路を使って、この「感動のメカニズム」について非常に端的に教えてくれる。つまり、ミュージカルに感動し、そっとスイッチを押す、のだ。ああ、そうか。僕らはいつもこんなふうに心を振るわせ、そっと記憶のスイッチを押していたのだ。

牛津 厚信氏の映画レビュー『WALL-E ウォーリー』

そうか、あれは「記憶のスイッチ」だったのか。

私は、WALL-Eはコレクターだから、この素敵なミュージカルも俺様コレクションに加えよう、ってんで録音してるのかと思ってました。

それはEVEの「研究資料として持ち帰る録画」とはまた違い、心を込めたインプットなのですね。

だからアナログのカセットテープなのかなぁ。

それにしても、WALL-Eの「最初の持ち主」はどんな人間だったんだろう。

そして、Axiomに乗り損なった何十億という他の人々は……?

もしかしたら、それ以外の人は本当に全部滅んでしまったのかもしれない。

最後の一人が息を引き取って、誰も答えてくれる人がなくなった時から、WALL-Eは一人でずっと、手を取り合える誰かを待ち続けていたのかもしれないね。

サウンドトラック盤とSpotify

この作品は音楽もいい。
「ハロードーリー」からの挿入歌はもちろん、要所要所に流れるBGMも夢のように美しく、壮大。
聞いていると、可愛いロボットたちが頭の中を空中遊泳するよう。
未来的なサウンドでありながら、妙に心に残る秀作です。

ウォーリー (オリジナル・サウンドトラック)
ウォーリー (オリジナル・サウンドトラック)

Spotifyでも視聴できます。

初稿 2008年12月10日

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