映画– category –
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飛べない蝶にも意味はある 映画『パピヨン』 ドガは本当に負け犬なのか?
映画の結末については、断崖から飛び降りたパピヨン(スティーブ・マックイーン)が英雄で、島に留まったドガ(ダスティン・ホフマン)は臆病な負け犬という見方が一般的ですが、果たしてそうでしょうか。自身の体力を考え、島で生き抜く決意をしたドガにも矜持はあります。どんな道を選ぼうと、最後まで生き抜けば、それは人生の勝者ではないかというお話。 -
現実社会と魂の居場所 映画『ルートヴィヒ』(2012年)とバイロイト祝祭劇場の旅行記
芸術を愛する若きバイエルン王・ルートヴィヒはワーグナーのオペラに魅せられ、世界平和の為に祝祭劇場の建設を進めるが、臣下の反感を買い、ついには幽閉されて、湖で非業の死を遂げる。だがルートヴィヒは本当に「狂王」だったのか。美しい理想に身を投じた若き王の純粋な魂とワーグナーの関わりを華麗に描いたドイツ映画の傑作。資料として、バイロイト祝祭劇場、ワーグナー博物館、ヴァーンフリート荘の墓碑、ワーグナーの行きつけのレストランなどを写真で紹介。ルートヴィヒの内面に迫るコラムと併せて。 -
人生とは霧の中を走るが如く 映画『ミスト』(スティーヴン・キング原作)
霧の中に奇怪な生物が現れ、人々が襲われる。スーパーに閉じ込められたデヴィッドとビリーは必死で逃走を図るが、一人また一人と命を落とす。疑心暗鬼に陥る人々の心理面にフォーカスした恐怖ドラマ。不条理なエンディングは映画史に残る衝撃である。コラム『人生とは霧の中を走るが如く』と併せて。 -
エセ文化人が美と知性を滅ぼす 映画『コックと泥棒、その妻と愛人』
泥棒のアルバートは一流レストランのオーナーだが、文化などまったく理解しない反知性の俗物でもある。虐げられた妻ジョジーナは読書家のマイケルと恋に落ちるが、アルバートにばれて悲劇が起きる。ジョジーナと料理人が企てた壮絶な復讐と文化の死を解説。 -
Witness Me とMy name is MAX の意味『マッドマックス 怒りのデスロード』
マックスはなぜ名乗らなかったのか。名前の社会的意義から理由を考察。ウォーボーイの決め台詞 Witness Me の真意は何か。そこには儚く命を終える戦士たちの命をかけた矜持があった。ディズニーランドで出会った吃音の販売員と身体の不自由を長所に転じてハリウッドで活躍する人々をテーマに、アメリカ流の自立と自由について語るコラムも掲載。 -
毒親にさよなら! 娘の自立を励ます映画『塔の上のラプンツェル』
塔に閉じ込められたラプンツェルは、外に出ることも、外の世界を知ることも禁じられます。母ゴーテルは「お前のため」と言い聞かせ、ラプンツェルを支配しようとします。そこに盗賊のフリンがやって来て、ラプンツェルはついに外の世界に飛び出し舞うが、「支配する毒親」と「支配される子供」の葛藤と自立を描いた良作。画像と動画を添えて解説します。 -
神を笑うなかれ 修道院ゴシックホラーの傑作『薔薇の名前』 ショーン・コネリー主演
ゴシックホラーの異色作。高邁な修道僧ショーン・コネリーと若きクリスチャン・スレーターが厳格な修道院で起きる連続殺人事件に挑む。殺害の理由には中世キリスト教における『笑い』が秘められていた。なぜ僧は笑いを禁じられたのか、笑いと神にどんな関係があるのか、映画のスクリーンショットを交えて解説するレビュー。 -
愛なき評論はアーティストを殺す ~淀川長治氏の映画解説より~
「どんな作品でも、必ず一つは褒めるところがある。その良い所を見つけ出すのが評論家の仕事」。映画評論家・淀川長治氏とTVロードショーの役割に関するコラム。 -
ヤクザは人間ではない 角川映画『キャバレー』とサックスの名曲「レフトアローン」
ミュージシャンが指を切り落とされて「ひどい、あんた人間じゃない(野村宏伸)」「オレはヤクザなんだよ(鹿賀丈史)」でお馴染みの80年代角川映画のヒット作。マリーンの歌うジャズの名曲『レフトアローン』も印象的で、曲だけ憶えている人も多いはず。果てして実際のやくざはどうなのか。親分さんの思い出から綴る。 -
アラン・リックマン 魅惑の悪役『ロビンフッド』と『ダイ・ハード』より
アラン・リックマンといえば「ダイ・ハード」の悪役テロリスト。そして英国アカデミー賞助演男優賞を受賞した「ロビンフッド」のノッティンガム司法官。演技達者でユニークなリックマンの世界を画像で解説。 -
技術を共有すれば世界戦争は防げるのか? 映画『ジョーンの秘密』
ケンブリッジ大学で物理学を専攻していたジョーンは原子力開発の機密に携わるようになる。やがて研究が原爆に使われ、何十万人が命を落としたことを知ると、ジョーンの心に変化が訪れる。ジョーンの主張は正しいのか? 実際に起きた事件を題材とした歴史ドラマ。 -
現代の魔女狩りとキャンセルカルチャー 映画『アダムス・ファミリー 1 & 2』(1991年~1993年)
ブラックユーモアとゴシックホラーが融合したコメディで一世を風靡した映画『アダムス・ファミリー』も、キャンセルカルチャーの嵐が吹き荒れる現代にはとても放映できないというコラム。#1000文字 映画評 -
LGBTの違和感とどう向き合うか 映画『ステージ・マザー』の戸惑いと挑戦
聖歌隊の指揮者メイベリンの元に息子の訃報が届く。息子はドラァグクイーンで、ゲイバーの人気者だった。事実を知ったメイベリンは残された仲間を支え、倒産寸前のゲイバーの再建に力を尽くす。希望を感じさせるステージが印象的なハートフルドラマ。 コラム『エルトン・ジョンのベッドシーンまで見たくない』『問題提起にヒステリックになり過ぎではないか?』『世間はLGBTの当事者ではなく、活動家が苦手』 -
ジェット・リーが熱い リュック・ベッソン監督の傑作『キス・オブ・ザ・ドラゴン』
中国の捜査官リュウは麻薬捜査に協力する為にパリに赴任するが、逆に密売人殺害の汚名を着せられ、仏警察に追われる。ジェット・リーのカンフー・アクションが炸裂する痛快な娯楽サスペンス。インタビュー『enjoy yourself(自分自身を楽しめ』のコラムと併せて。 -
映画『アメリカン・スナイパー』は何のために死んだのか ~米軍のアフガン撤退に寄せて
イラク戦争で活躍した伝説の狙撃手クリス・カイルの活躍を描いた伝記映画。クリント・イーストウッドのメッセージが込められた、米国の葬列のようなエンディングが印象的。アフガン撤退の話題と併せて。 -
勝者の語る正義に説得力なし 映画『ジョーカー』とホアキン・フェニックスの魅力
病苦と貧困にあえぎながらも笑いを忘れないアーサー。しかし格差の壁は厚く、仕事も失い、だんだん心を病んでいく。壊れざるを得なかったジョーカーの狂気をホアキン・フェニックスが好演。 -
ネットで話題になっても真のヒット作に成り得ない訳(映画・動画編)
作り手が、身内の評価や、機械的に現れる数値や、ネット上でやり取りされる一部の評判だけを見て、「ウケてる!」と思い込むのはあまりに単純。いずれ『映画』そのものが飽きられ、自分が主演の『ヴァーチャルビデオ』が主流になるかもしれない。 -
映画『復活』(RISEN) 復活とは何か ~12人の弟子と信仰の奇跡
イエスが磔刑に処されると、ピラト総督は『復活』を恐れて、百人隊長クラヴィウスに遺体を見張るよう命じる。だが遺体は忽然と姿を消し、イエスが復活したという噂が広まる。クラヴィウスは12人の弟子の後を追い、信じられない光景を目にする。『復活』とは何を意味するのか、12人の弟子の内面に着目した良質な宗教ドラマ。 -
ティム・バートンの『PLANET OF THE APES/猿の惑星』 / コラム『おひとり様の映画列伝』
ティム・バートン監督の続編はオリジナルから逸脱し、ビジュアル重視の演出だった為、賛否両論となったが、重厚な新三部作を生み出すステップとなった。バートンらしいユニークな造形といまだに評価の高いオープニングを動画で紹介。一人で劇場に通い詰めた思い出を綴るコラム『おひとり様の映画列伝』と併せて。 -
女は強く、賢く ヒロインの源泉 ~リプリーからワンダーウーマンまで
20世紀を代表するヒロイン、シガニー・ウィーバー(リプリー)と、21世紀を代表するヒロインが並び立った2020アカデミー賞授賞式。リプリーはそれまでヒーローの添え物のようだったヒロイン像を覆し、闘う女性の姿を確立した。