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映画『イベント・ホライゾン』 美しきSFゴシック・ホラー ~モフィアスの前哨戦
映画『イベント・ホライゾン』は90年代を代表するSFゴシック・ホラーの異色作だ。 『エイリアン』に似たダークな美術に、色形を持たない悪の表象。どこか映画『シャイニング』を思わせるグロ&スプラッタに、王道的な結末。 視聴者の中には「盛り上がりに欠ける」「二番煎じ感が否めない」といった理由で低評価をつける人も少なからずあるが... -
現代に生きるためには、無垢な心がどのような報復をうけねばならないか 映画『シベールの日曜日』
ガラス玉を星のかけらと思い込める感受性は、その星のかけらの鋭い刃先でみずからの心を傷つける。現代の生きづらさの正体と人間の感受性に関する文芸コラム。 -
薬師丸ひろ子&真田弘之の角川映画『里見八犬伝』 80年代エンタメ系時代劇の傑作
薬師丸ひろ子、真田広之、千葉真一、京本政樹、志穂美悦子など、錚々たるメンバーが出演したアクション時代劇の魅力を紹介。夏木マリが全裸で血の池に入浴するなど体当たりの演技が話題を呼んだ。 -
男女平等より、愛が大事 冴えないジャーナリストと大統領候補のロマンスを描く 映画『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』
容姿も仕事も冴えない独身ジャーナリストのフレッドは、国務長官で次期大統領候補でもあるシャーロットと恋に落ちる。格差恋愛は選挙戦でも問題となり、二人は別れを余儀なくされるが……次代の恋と男女平等の在り方を軽妙に描いたラブコメディ。 -
他人の人生を見かけで判断してはいけない 映画『ヴィンセントが教えてくれたこと』
一人暮らしの不良ジジイ、ヴィンセントは、隣に引っ越してきた小学生オリヴァーの子守を引き受けるが、競馬場やバーに連れ戻し、問題となる。だがオリヴァーはヴィンセントの優しい性情に気付き、学校の課題『身近な聖人』のレポートを仕上げるために彼の人生を調べ始める。誰の人生にも歴史と事情があるという話 -
どの国にも誇るべき歴史がある ノルウェー映画『ラスト・キング 王家の血を守りし勇者たち』
13世紀ノルウェーで偉大な王ホーコン3世が謀殺される。次期王位継承者である遺児を守るため、ノルウェー兵士(ビルケバイネル)の二人が雪原をスキーで滑走する。当時の暮らしが垣間見える、疾走感のあるアクション史劇。 -
映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』女性と向きあえない男たち
一見クレイジーなナンパ娘・カサンドラには深い心の傷があった。無残な形で将来を絶たれた親友ニーナのために、男たちに復讐していたのだ。そんな中、バイト先で再会した同窓生ライアンと恋に落ち、カサンドラは幸福を掴もうとする。ところが、ライアンの意外な過去が明らかになり……。 現代の性犯罪と男女差別、女性の意識の変化などをポップ... -
ヒポクラテスの誓いと良心の呵責 『殺意の誓約』(2016年)
優秀な外科医フィンヌルは娘アンナの恋人がヤクの売人であり、娘も薬物依存症であることを知って、別れを迫るが、逆に手切れ金を寄越せと脅される。切羽詰まったフィンヌルは、恋人を拉致し、殺害することを計画するが、意外なところからアリバイが綻び始める。 -
生みの母か、育ての母か。親子の絆を描いた TVドラマ『カミヤ・モブリー 私の母は誘拐犯』
少女アレックスは大家族で幸せに暮らしていたが、16歳になったある日、最愛の母グロリアから、「お前は誘拐して育てた子」と打ち明けられる。不安になったアレックスがネットの情報を頼りに生みの母に連絡を取ったことがきっかけで、警察が動き出し、家族の幸福に終止符が打たれる。 -
人生もドライブの如く 心にしみるヒューマンドラマ 映画『しあわせへのまわり道』
【映画『しあわせへのまわり道』】 作品の概要 しあわせへのまわり道 - Learning to Drive (運転を学ぶ。自動車教習の意味) 主演 : パトリシア・クラークソン(ウェンディ)、ベン・キングスレー(インド系の教官・ダルワーン) しあわせへのまわり道(吹替版) あらすじ 書評家として活躍するウェンディは、タクシーの中で、夫と口論に... -
両親が離婚しても、家族は心で繋がる ファミリーコメディの傑作『ミセス・ダウト』
考え方の違いから、ダニエルとミランダは離婚する。だが、ダニエルは大好きな子供たちと一緒に過ごすため、上品な英国婦人『ミセス・ダウトファイア』になりすまし、家政婦として出入りするようになる。コメディではあるが、夫婦関係や家族の在り方について問いかける良質なコメディ。 -
老いらくの恋こそ盲目 ~人生の結果をいかに引き受けるか 映画『鑑定士と顔のない依頼人』
美術鑑定士ヴァージルは若い令嬢から美術品の競売を依頼される。顔を見せない依頼人に次第に心惹かれるが、そこには巧妙な罠が仕掛けられいた。老いらくの恋で嘘が見抜けなかった老人の悲哀を描く。 -
いかに戦い、いかに終るか ~良い負け方が明日の道を開く 映画『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』
氷の男ビヨン・ボルグが前人未踏のウィンブルドン5連覇に挑む。強敵はテニス界の悪童、ジョン・マッケンロー。二人の対決は連続タイブレークにもつれこみ、22分間の死闘を繰り広げる。凄まじいまでのプレッシャーの中、ボルグを懸命に支えるコーチの指導が素晴らしい。 -
アイデアはどこからやって来るのか ~大友克洋の『AKIRA』より
アキラとは、絶対的なエネルギー サイバーパンクで有名な大友克洋のアニメ映画『AKIRA』の映画版にこんな台詞があります。 前にリュウが言ってたわ。アキラって、絶対のエネルギーなんだって。 人間ってさあ、一生の間にいろんな事をするでしょう。何かを発見したり、造ったり……。 家とかオートバイとか橋や街やロケット…… そんな知識とかエ... -
空襲で黒い雨を降らせ、戦後はお前達の価値観を押しつけられた ~日米貿易摩擦の米国の贖罪 映画『ブラックレイン』
「お前達は空襲で黒い雨を降らせ、戦後はお前たちの価値観を押しつけた」日米貿易摩擦とパッシングの時代、リドリー・スコット監督が日米の違いと日本の文化風習をドラマティックに描くアクション映画の傑作。 -
セカンドレイプと裁判の実態を描く ジョディ・フォスター主演の映画『告発の行方』
世界的な#MeTooに先駆けて、ジョディ・フォスターが体当たりで演じたレイプ裁判の実態を画像付きで解説します。被害者でありながら病院や警察の取り調べでは辱められ、世間には「同意の上」と非難される性犯罪。被害者が圧倒的に不利な中、弁護士は犯人を有罪にすることができるのか。法の盲点を突いた社会派ドラマの傑作。 -
そして女の奇跡が始まる 映画『キャットウーマン』/ ~美と若さの思い込みから自由になろう
化粧品会社に勤務するペイシェンスは美容クリームが副作用を引き起こすことを知った為に命を落とす。だが古代エジプトの猫神から超能力を授かり、強く美しいキャットウーマンとなって蘇る。コラム『美と若さの思い込みから自由になろう』 -
繊細だと絵は売れない 映画『ビッグ・アイズ』
内気な妻マーガレットに成り代わり、口八丁手八丁の夫ウォルターは作者を装って少女画『ビッグ・アイズ』を売りまくるが、嘘は長続きしなかった。派手な宣伝や評判に惑わされずに『真実を見ろ』。絵の中の大きな瞳は見る人にそう語りかけている。映画の見どころと芸術商法に関するコラムを掲載。 -
異文化交流の理想と葛藤を描く 映画『マダム・マロリーと魔法のスパイス』
移民問題に揺れる欧州。高級レストランの真向かいに、まさかのインド料理店。気品溢れる女主人マロリーと香辛料プンプンの移民一家は対立するが、料理を通じて次第に理解し合うようになる。異文化共生について考えさせられる心温まる人間ドラマ。コラム『伝統だけでは廃れる。自己流だけだと伸び悩む』と合わせて -
売れない芸人の夢と悲哀を描く 映画『恋のゆくえ/ファビュラス・ベイカー・ボーイズ』
デイブ・グルーシンのお洒落なジャズをサウンドをバックに、売れないジャズ・ピアニストの恋と生き様描く。キム・ベイジンガーのセクシーな歌声が素晴らしい。コラム『思い通りに生きられなくても』