エッセー本『ラブ・ウィズダム ~恋に揺れるあなたへ56の処方箋』は、20代後半から30代前半にかけて、筆者が好んで読んでいたエッセイ本です。(現在は廃刊になっています)
「恋に揺れるあなたへ」と標題にあるので、一見、恋愛指南のようですが、内容は、生き方、人間関係、リフレッシュなど、テーマは多岐にわたり、どれもが疲れた心に響く、やさしい言葉で書かれています。
ボリュームも、寝る前に目を通すのに最適な分量で、「本のおみくじ」みたいに、読みたい時に、読みたい箇所にリーチできるような仕様になっています。
現在は絶版で、入手困難な状況ですが、皆さんに広く知っていただきたく、自身の解説と併せて紹介しています。(丸写しはできないので)
恋と暮らしに疲れた若い女性のヒントになれば幸いです。
ラブ・ウィズダム 恋に揺れるあなたへ56の処方箋 [ キャロリン・テムジ ] (楽天ブックス)
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わたしたちの物語 ~ダメダメだった人生
わたしたちの物語 ~~キャロリン・テムジ &キャロ・ハンドレイの言葉
私たち二人が最初に出会ったのは、ともにシングルマザーとして働いていた頃でした。
キャロリンはマーケティング・コンサルタントとして、私、キャロは女性誌に執筆するジ ャーナリストとして、それぞれ活動しており、お互い忙しい毎日を送っていました。
そんな二人が、あるサイコセラピーの講習会で出会い、ふとしたきっかけで互いに興味を 持ちました。そして実際に話してみたところ、数多くの共通点があることがわかったのです。
なかでも、特に印象深かったのが、次の二点です。
● 仕事をしながら幼い子供を育てていること。
● 不幸にも結婚生活を失敗に終わらせた過去があること。
私たちはたちまち意気投合し、無二の親友となりました。 そして、互いに次のような誓い を立てました。
● 再婚すること。
● 今度こそ結婚生活を成功させ、夫と信頼し合い、深く愛し合うこと。
たとえどんなに時間がかかっても、どれほどそれが難しいことであっても、理想の男性を見つけるまでは絶対にあきらめないと、私たちはかたく誓い合ったのです。
こう誓い合ってからの二人の道のりは、まさに山あり谷ありでした。
「とうとう理想の男性とめぐり会えた!」と思っても、また以前と同じようにうまくいかな くなったり、好きでもない人からしつこく誘われて閉口したりと、結局、過去の恋愛体質から抜け出せず、挫折感を何度も味わったものです。
「あなたって、ほんとうに意気地がないのね!」
「あなたこそ、頑固で言い出したら聞かないんだから!」
と互いを罵り合い、しばらく口をきかなかったこともありました。
希望が持てなくなり、二人で泣いたこともあります。 それでも涙が涸れ、我に返るとフウッと吐息をつき、声をあげて笑い、ふたたび姿勢を正し、きちんと前を向いてもう一度初めからやり直そうと気持ちをあらたにしたものです。
こうして困難という壁にぶつかる度に、私たちは新しいことを学んでいきました。
とくに、「夢の実現を邪魔しているのは自分自身である」という事実に気がついたときには、たいへんなショックを受けました。
傷つくのが怖くて、自分から新しい愛に飛び込んでいけない。
恐怖心が先に立ち、勇気を奮い起こすことができない。
そんな自分の姿を初めて知ったのです。
そして、重要な教訓を得ました。
「自分の人生は自分で決めるもの、未来は自分で選択するもの」という事実を学んだのです。
やがて、自分の人生を自分で選択しようという努力が一つまた一つと実りはじめ、ついに私たちは理想の男性とめぐり会うことができました。
いま、私たちは幸福な結婚生活を送っています。 そして、 これまで結婚に求めてきたすべ てのものを、夫婦として分かち合っています。
愛、信頼、尊敬、思いやり、責任、笑い、楽しい会話、友情、誠実、率直。
たしかに、いまでもつらいときはあります。 しかし、いまでは愛する人と一緒に困難に立ち向かっています。
「死が二人を別つまで」 愛し合い、支え合う相手を見つけたのです。
『ラブ・ウィズダム』は、こんな私たちの経験の集大成です。
本書を、自分自身に、夫に、子供たちに、そしてこの本を手にしているあなたに、捧げます。
解説
自分の人生は自分で決めるもの、未来は自分で選択するもの
何を当たり前のことを――と思うかもしれませんが、できない人も少なくありません。
親や周りに遠慮して、自分の希望を口にできないだけでなく、「ネットや雑誌の意見にすぐ影響される」「他人の評価が異常に気になる」といった理由から、自分のやりたい事もできず、だんだん、生きるのが辛くなるのです。
何でも自分の頭で考えているようで、案外、周りに左右されるものです。
そんな時は、本当の自分自身、自分の気持ちに立ち返って、「幸せになる」と決心することが一番大切ではないでしょうか。
はじめに ~心の中の疑問を大切にしよう
Hold a question in your mind ~心の中の疑問を大切にしよう
誰もが、誠実で、愛情に満ち、官能的で、責任のある一夫一婦制のもとで、お互いを尊敬 し合う結婚生活を送るにふさわしい存在であると、私たちは信じています。
それはあなたの権利であると、私たちは信じています。
『ラブ・ウィズダム」は、思いを寄せている男性がいる人、恋人とうまくいっていない人、 また、恋人と別れたほうがいいかどうか迷っている人の心の中にあるさまざまな疑問に、 答えます。
夫との結婚生活に不安をいだいている人の疑問にも、答えます。
悩み、苦しんでいるあなたに、救いの手をさしのべます。
この本は、あなたが独身でも、すでに結婚していても、満ち足りた結婚生活への道しるべとなるでしょう。
人生における真実の愛を見つけ、それを持続させるための知恵を、私たちはこの本に書き ました。
どうぞ、この本を読み、 あなたにふさわしい愛の歓び、そして充足感を味わってください。
あなたの幸福を願って。
解説
標題の『Hold a question in your mind』は、直訳すれば、「心の中の疑問を持ち続ける」となりますが、分かりやすく言えば、人生の「なぜ」、疑問や違和感を理屈やその他のものでごまかさない、という意味です。
たとえば、恋愛が上手くいかない時、ある人は、こう思うでしょう。
「恋愛だけが人生の全てじゃない。こんなものは無意味だ。私は仕事に生きる!」
でも、本当にそれで幸せになれるでしょうか。
その人にとって、一番大事なのは、なぜ彼との関係がこじれてしまったのか、真剣に考え、相手と向き合うことではないでしょうか。
そんな風に、若い女性は、こじつけや、的外れの決心で、今本当に考えるべきことを蔑ろにしがちです。
現実から目を背け、今解決すべき問題を「なかったこと」にしてしまうのです。
しかし、そんなことをしていたら、穴のあいたバケツを放置するのと同じ。
水はどんどん漏れ出して、心もからからに渇いてしまいます。
そこに「穴」があるのに、見ない、聞かない、考えないで、真剣に直そうとせず、勢いだけで幸せになろうとするんですね。
穴だらけのバケツで、どんどん水を汲んでも、疲れるだけ。
水瓶の水は、いつまでたっても、いっぱいになりません。
人生の疑問や違和感を、なかったことにするのは、穴だらけのバケツを、穴のあいたまま放置するのと同じです。
Hold a question in your mind は、どんな小さな疑問や違和感も、心の中に大切に持ち続け、答えを探す大切さを説いています。
「なぜ彼と喧嘩してしまったのだろう」
「心がこんなに苦しいんだろう」
一見、くだらないと思うことも、必死に考えれば道も開けます。
言い訳や見て見ぬ振りは、決して人を幸せにしないのです。
この本を読むヒント
愛に疑問を感じ、 答えを探し求めているあなたは、次のことを心にとめてください。
- シンプルに考える
- 「イエス」か「ノー」か、どちらかの答えを求めるのではなく、アドバイスを求めるような気持ちでページをめくる
- 自分の気持ちがあてはまると思われるタイトルのページから読みはじめる
この本を愛の教科書にしたいと思っているあなたは、次のことを心にとめてください。
- あわてず、じっくりと読み進む
- あなたの気持ちに何らかの変化が起こっても、おそれず心を開き、新しい経験に挑戦する
- たとえあなたにとって気が進まないアドバイスが書かれていても、素直に従う
そして、愛に対する不安をぬぐい去りたいのなら、あなたの疑問を思い浮かべながら、この本を三回開いてください。
- 最初に開いたページには、あなたのいま現在の気持ちが書かれています。
- 二回目に開いたページには、これから先にあなたが経験する喜びや不安が説明されています。
- そして、三回目に開いたページには、あなたの心の奥底に潜んでいる根本的な問題が書か れています。
解説
大事なのは、たとえあなたにとって気が進まないアドバイスが書かれていても、素直に従うということでしょう。
世の中には、相手の回答が自分の気に入らないと、すぐに腹を立て、耳を塞いでしまう人も少なくありません。
その人の腹の中では、すでに答えが決まっていて、自分の聞きたい答えを、誰かに言って欲しいだけなんですね。
しかし、万事その調子では、上手くいくものも、いかなくなります。
電気工事を依頼して、「今すぐ配線を変えた方がいいです」と適切なアドバイスをしてくれているのに、「配線を変えるなんて、とんでもない。変えないで直す方法を教えて欲しい」と、今度は別の修理屋を訪ね歩くようなものです。誰が見ても、配線の修理が必要なのに、「そんなアドバイスは受け入れられない!」と拒絶していたら、直るものも直らなくなってしまいますね。
どんな人も、想定外の答えが返ってくると、驚き、拒否したくなるものです。
復縁を期待してるのに、「その男性とは別れた方がいいです」と言われたら、「この占い師はおかしい。次は四柱推命の人に聞く」と、いろんな占い師を訪ね歩く人もありますね。
しかし、そんなことを繰り返していたら、永久に正しい答えに辿り着けないどころか、しまいに周りにも見放されるのではないでしょうか。
自分に不都合な答えが返ってきた時、「こんな答えは認めない」と耳を塞いでいたら、大事な忠告も聞こえなくなります。
「良薬、口に苦し」の喩えもあるように、大事な忠告は、誰にとっても耳が痛いもの。
それでも受け入れ、素直に従う人が、安全な道に方向転換することができます。
悩み、落ち込んだ時こそ、素直になることが何よりも大事です。
目次 ~恋に揺れるあなたへの56の処方箋
ラブ・ウィズダムで取り上げられているのは、次の56項目です。
リンクをクリックすると、該当のページにジャンプします。
※ サイト内のタイトルは、当方でアレンジしています。
- 自分を大切に …… 愛を見失いそうな人へ
- 不満から愛は育たない …… 不満がつのっている人へ
- 信じれば、夢はかなう …… 自信や勇気を失ってしまっている人へ
- たくさん話をしよう …… 自分の気持ちをはっきり伝えられない人へ
- 相手のために何かをしよう …… わがままばかり言っている人へ
- バランスが大切 …… 幸福な生活を送りたい人へ
- 誇りを持とう …… 自分のことを好きになれない人へ
- 素直な気持ちを伝えよう …… 自分の気持ちに正直になれない人へ
- 人生にはユーモアが必要だ! …… 窮屈な毎日に息がつまりそうな人へ
- 愛や生命の誕生を祝おう …… 新しい始まりの予感を感じている人へ
- 被害者意識を捨てよう …… 自分ばかり損をしていると思っている人へ
- 信じる者は救われる …… 夢の実現を待ち望んでいる人へ
- 愛を拒まない …… 出会いがないと嘆いている人へ
- いまは、自分を犠牲にするとき …… 充実した生活を送っていない人へ
- お節介をやかない …… 相手のことが気になって仕方がない人へ
- 互いを信頼する …… 気ままなつきあいを続けている人へ
- 祝福を受けよう …… まさに祝福されようとしている人へ
- 責任を持つ …… 怠惰な生活をしている人へ
- 現実を直視する …… 自分だけの世界にひたっている人へ
- 旅の過程を味わおう …… 新しい一歩を踏み出そうとしている人へ
- 男女関係の基本は安らぎにある …… 暴力をふるわれている人へ
- いつまでもときめきを忘れずに …… 愛する歓びを感じている人へ
- 勇気を奮い起こそう …… つきあうことにおびえている人へ
- 距離を置こう 恋人に夢中になっている人へ
- 依存症を克服しよう …… 心のバランスが崩れている人へ
- 過去を見直そう …… 子どもの頃に、心に痛みを負った人へ
- 感謝しよう …… 生きている実感を感じられない人へ
- あなたの欠点を相手の欠点にしない …… 恋人の欠点ばかりが目につく人へ
- つらいときも共に生きる覚悟を持って …… もうすぐ結婚する人へ
- すべては、生きていくための「授業」 …… 何度も同じ失敗を繰り返している人へ
- 金の切れ目が縁の切れ目 …… お金のことで問題を抱えている人へ
- 冷静に考え、家族の理解を得る …… 結婚を反対されている人へ
- ルールを設けよう …… 理想とする結婚がよくわからない人へ
- 自分の行為を省みよう …… 恋人に大切にされていないと感じている人へ
- 人生の過渡期を乗り切る …… 人生の変わり目を感じている人へ
- 自分自身の嘘や偽りを認めよう …… 恋人の嘘に悩んでいる人へ
- これからは自分に尽くそう …… 他人のことばかり気にしている人へ
- 一人の時間を持とう …… 忙しい毎日を送っている人へ
- 出口のないトンネルはない …… 希望をなくしそうな人へ
- 愛はあせらずに …… 新しい愛を育もうとしている人へ
- 自分の力を信じよう! …… 自信が持てなくなっている人へ
- 望みをはっきり伝えよう …… 甘え方が下手な人へ
- 好きなようにさせよう …… 恋人を自分の思いどおりにしようとしている人へ
- 癒しの力を信じよう …… 心に深い傷を負った人へ
- 否定的にものを見ない …… 文句を言わずにはいられない人へ
- 境界線をはっきりさせよう …… 自分を客観的に見られなくなっている人へ
- 忍耐強くなろう …… 思うように事が運ばずイライラしている人へ
- 過去を清算し再出発する …… やり残したことが気になってしようがない人へ
- 「さよなら」は、新しい始まり …… 恋人と別れようとしている人へ
- 大いなる存在を感じよう …… 人生に行き詰まっている人へ
- 自分の力で歩もう …… 恋人にしがみついている人へ
- いまが絶好のチャンス …… 幸運が続いている人へ
- 怒りをためないようにしよう …… 怒りっぽくなっている人へ
- ありのままの姿を受け入れる …… 恋人を理想のタイプに変えたいと思っている人へ
- やきもちは心の毒 …… 嫉妬を覚えている人へ
- 愛は悩むもの …… 愛に苦しみ、傷ついている人へ
訳者あとがき ~ラブ・ウィズダムとは
訳者 栗木さつき氏の解説
本書『ラブ・ウィズダム」は、イギリスで一九九九年バレンタインデーに発売されるやい なや、女性の絶大なる支持を得てベストセラーとなりました。 アメリカ、ヨーロッパ、アジ アの九カ国でも、年内には出版されるそうです。 こんな背景からも、この作品がいかに大反 響を巻き起こしているかがおわかりいただけるでしょう。
著者キャロリン・テムジとキャロ・ハンドレイは、二人とも離婚を経験したシングルマザ ーでした。 キャロリンはマーケティング・コンサルタントとして、キャロはジャーナリスト として、それぞれ非情なビジネスの世界でキャリアを積み、シングルマザーとして子どもを育てていました。その努力は並大抵なものではなかったはずです。まさに孤軍奮闘、ときにはつらくてわけもなく涙を流したこともあったと、二人は本書で正直に語っています。
そんな二人が、 あるサイコセラピーの集いで出会い、意気投合しました。 そして「絶対に 再婚しよう」「今度こそ結婚を成功させ、いつまでも深く愛し合う夫婦関係を築こう」と誓い 合いました。 そして二人は、その誓いを守ったのです。 二人ともその後、運命の人と出会い、 再婚しました。 そして現在も、幸福な結婚生活を続けています。
本書で二人は、そんなみずからの体験を踏まえ、やさしく語りかけるように愛のアドバイ スを記しています。愛に傷つき、迷っている心を癒す二人のことばは、きっと読者の心にし みいり、深い感動を与えるでしょう。
日本人はとかく悲観的だと言われています。そのうえ、現代の社会は生き方も人それぞれ、 家庭形態も多様化し、人生の選択肢は多岐にわたっています。 結婚せず、一生を独身で過ご すことを選ぶ人も年々増えています。 「私は絶対に結婚して、愛する人と幸せになるのよ」と自信を持って断言できなくなるのも当然かもしれません。 でも、と著者は言います。 心から 愛し合える人とめぐり会い、満ち足りた結婚生活を送ることこそ人生の幸福なのだ、と。 そして、幸福になる権利は誰もが持っている、と。
あわただしい日常に追われ、ふと自分を見失いそうになったとき、ぜひ本書を手に取って ください。そして、気の向くままにページを開いてください。 そこにはきっと、そのときど きのあなたに必要な愛のアドバイスや生きていくうえでのヒントが、記されているはずです。
訳者も本書の翻訳作業を進めながら、おおいに励まされ、そして日頃のふるまいを反省さ せられました。 「自分を大切に」 「否定的にものを見ない」「人生にはユーモアが必要だ!」 「被害者意識を捨てよう」「一人の時間を持とう」「あなたの欠点を相手の欠点にしない」……。わかっていながら忙しさにかまけて忘れてしまっていたこともありましたし、そう言われて みればたしかにそうね!と目からウロコが落ちたものもありました。
読者にアドバイスを与えるような の本は、ともすれば説教くさくなりがちですが、本書はそんなことはありません。 人生の先輩、頼りになるお姉さんがやさしく相談に乗ってくれるといったところでしょうか。 そして何より、説得力があります。 なんといっても二人は、 バツイチの子持ち女性として懸命に働きながら、愛する人との幸福を実際に手に入れたわけ ですから。
いま、愛を探している女性、思いを寄せている人がいる女性、そして夫や恋人との関係に 不安を感じている女性、すべての女性に読んでいただきたい本です。
そう、希望を持って人生を歩んでいけば、きっと道はひらけるのです!
1999年5月
栗木さつき
解説
この本が刊行された1999年頃は、まだインターネットも一般的でなく、ウェブサイトを運営している人も少数でした。
インターネットの話をしても、「Eメールって、何?」と言われるレベルで、困ったことがあっても、本や雑誌で為になる情報を探すのが主流でした。
90年代はバブルが弾け、新卒の就職難や中高年者のリストラに加え、阪神大震災、宗教団体による無差別殺人など、社会を震撼させるような出来事が相次いだこともあり、それまでイケイケだった恋愛ブームも一転。「癒やし」や「私らしさ」がもてはやされるようになり、エッセイ本の顔ぶれもがらりと変わったことを記憶しています。
昭和の時代から、恋愛ものは鉄板ネタで、「いかに愛されるか」を主眼にした本はたくさん存在しますが、「ラブ・ウィズダム」は他の「愛され本」とは一線を画しており、装幀も、上品かつエレガントなデザインに仕上がっています。
今なら、こうした文章は、ネット上にいくらでも見つかるかもしれませんが、ネットの文章は、正体不明のスピリチュアルカウンセラーが、その日その日に思い立ったことを、だらだら書き綴ることが多く、しかも、どこかで見たような、既視感のある話ばかりで、うんざりしている人も少なくないのではないでしょうか。
その点、本書はテーマも絞り込まれ、栗木さんの邦訳も日本女性に向けた優しいテイストに仕上がっています。
また、数ある目次の中から、その時気になった項目にさっと目を通すことができるのも、紙の書籍ならではですね。スマホのスクロールでは、こうはいきません。
そう考えると、恋や生き方に迷った時、答えを求めて、本屋や図書館を散策した90年代の女性たちは、ネットの情報に振りまわされる令和の女性より、案外、良質な情報にリーチしやすかったのではないかと思うことしきりです。本棚には、女性が好きそうなタイトルがずらりと並び、その中から、運命の一冊に出会う楽しみもありました。それらも含めて、青春時代を楽しんでいたような気がします。
残念ながら、この本はすでに絶版となり、近所の書店で気軽に手に取れるものではなくなりました。
令和の時代とは、事情が異なる部分もあるかもしれませんが、本書が悩める皆様の助けになれば幸いです。