恋人に夢中になっている人へ
人にはそれぞれ個性があります。このページを開いたあなたは、それを肝に銘じてください。どれほどロマンティックな恋に落ちていようとも、どんなに深く相手を愛していようとも、私たちは一人ひとりが独立した個人です。たとえあなたがいまの彼に夢中で、かたときも離れたくないとしても、相手とは少し距離を置かなければなりません。そして、自分がちゃんと自立しているかどうか、常に注意を怠らないようにしてください。
いま現在、夫や恋人がいるあなたは、人間がそれぞれ独立した個人であることを、よく理解してください。
あなたはいったいどんな個性の持ち主なのでしょう?
自分の個性がどういうものなのか、あなたははっきりわかっていますか?
そして、あなたのほんとうの個性が、夫や恋人にきちんと伝わっていますか?
ときに私たちは、相手に好感を持ってもらいたいばかりに、自分とはまったく違うタイプの女性像を演じ、ほんとうの自分を見失ってしまいます。また、夫や恋人と衝突を繰り返していると、精神的に傷つき、心の余裕をくし、自分の内面を見つめることができなくなってしまいます。
でも、それではいけません。いまこそ、自分の個性を確立してください。自分の心を見つめる時間を持ってください。相手を尊重する一方で、自分はどういう人間なのか、自分の個
性とはどんなものかを明確にするのです。
たとえば、自分の意見を述べるのに、他人の顔色をうかがう必要はありません。
いったい、あなたは何が好きなのでしょう?
何を夢見て、何を願っているのでしょう?
それをはっきりさせてください。そして、彼にもそれを具体的に伝えてください。
独身のあなたは、新しい恋人とつきあいはじめても、自分が自立していることを誇りに思ってください。決してあなたの個性を失ってはいけません。それはなにも、彼の考えを頑として受け入れず、自分の欲求だけを優先させればいいということではありません。
「自分が本来持っている個性と価値観を大切にする」ということなのです。ですから、彼があなたに対してこうあってほしいと願っている姿に、自分を窮屈に押し込める必要はないのです。あなたは、あなたのままでいてください。そうすれば、ちょうどあなたのような女性を望んでいる、あなたにぴったりの男性とめぐり会うことができるのです。
もし、いま、彼とあなたとの関係があまりにもベッタリしすぎているのなら、少し距離を置いてみましょう。
「この人に甘えたい。この人に頼りたい」という欲求はたいへん強いものです。しかし、それがあまりにも強いと、お互いに息がつまってしまいます。
新鮮な空気を保つためには十分な空間が必要であるのと同じように、二人の間には少し距離が必要です。だいじょうぶ、離れていても、彼との仲はうまくいきます。結局、相手を信頼し、相手に誠実であれば、二人の間に少し距離ができようとまったく問題はないのです。
どんなに彼と深く愛し合っていても、あなたと彼が常に身体をぴったり密着させているようでは、二人の間に太陽が差し込む隙がありません。お互いに相手から一歩離れて、二人の間に太陽の光が差し込む空間を作ってください。
「自分自身であること」――それが、二人の関係を維持する秘訣です。
出典 : 距離を置こう ~恋人に夢中になっている人へ 『恋に揺れるあなたへ 56の処方箋』より
【コラム】 会えない時間が愛を育てる
昔から「会えない時間が愛を育てる」というように、好きな人といつまでも仲よくしたければ、適度な距離は必要です。
相手から一分でも離れたら、愛を失うのではないかと恐れて、いつもメールをチェックしたり、アプリなどで追跡したり、携帯電話を肌身離さず握りしめて、恋人の動向を追いかけている人に幸せな結末はありません。
交際当初は可愛いなと思っても、一から十まで監視されているように感じて、だんだん鬱陶しくなるからです。
大人同士の交際では、一緒に居ること=愛を深める、にはなりません。
むしろ、仕事や生活環境の違いから、なかなか会うことができず、「今頃どうしてるかなあ」と思い巡らす時間こそが、再会への情熱を高め、いとしさをつのらせるものです。
恐らく、彼氏にしがみつくタイプの人は、「愛とは、自分を一番に構ってくれること」と勘違いしているのではないでしょうか。
いつでも話を聞いてくれて、自分の欲しいものを与えてくれる人が恋人だと思いこんでいませんか?
残念ながら、そんな都合のいい人は世界の何所を探してもいませんし、誰もが同じように愛を求めているものです。
にもかかわらず、あなたの方から、あれも寄越せ、これもくれと迫ったら、どれほど顔形が可愛くても、うんざりするでしょう。
それより、相手が必要ない時は、さりげに距離を置き、そっと見守ってくれる大人の女性の方が相手には有り難いはず。
あなたは「親切」のつもりでも、相手にはそうではないこともたくさんあるのではないでしょうか。
何日も連絡を取らないからといって、すぐに壊れることはないですし、距離を空けることで、相手が浮気したり、心変わりするようなら、所詮、その程度だったということです。
恋愛に限らず、「相手の返事が待てる」「相手の意思を尊重する」「余計なことに首を突っ込まない」のは、人間関係における大事なルールです。
一日中監視して、相手の考えや行動をコントロールしようとするのは、今すぐにやめた方が賢明です。
Separateness 人と人を繋ぐ絶妙の間
この章の原題は、Separatenessです。
separatenessは、’separate’の名詞形で、「分離する」「区別する」「隔てる」といった意味があります。 [ジーニアス英和辞典第5版]
いくら仲好くても、ずかずかと相手のテリトリーに踏みこむものではありません。
また、二十四時間、相手の動きを監視して、「リプは5分以内に送れ」「朝昼晩、必ずDMして」みたいな決まりを押しつけたら、相手も疲れてしまいます。
『人と人を繋ぐのは絶妙な間』と言われるように、人が幸福を感じるには、自分だけの空間が不可欠です。
テリトリーを侵害されたら、可愛い小犬でもワンワン吠えて怒るように、「自分だけの時間と空間」は、自我を保つ上で、非常に大事なんですね。
傍目には、イチャイチャ、ベタベタするカップルが一番仲いいように見えますが、今、目の前でいちゃついているカップルも、一ヶ月ぶりに再会したのかもしれません。
「あの二人、そんなにデートもしてないし、頻繁に連絡を取りあってる風でもないのに、まだ続いてるの?」と思うカップルも、他人人は窺い知れない強い絆があるのかもしれません。
愛や信頼は、密着度や回数では測れないところがあります。
逆の見方をすれば、そこまで到達すれば、頻回なデートや連絡は必要なく、たとえ相手が三年、単身赴任しても、浮気や孤独で切れたりしないのです。
「間を置いたら、相手が離れていくのではないか」と、いつも不安な人は、そんな事を気にしなくても、気軽に付き合える人を探しましょう。
そして、それが本物の信頼関係ではないでしょうか。