お前が何をどう頑張ろうと、この世のことは人次第だ。
人を動かさぬ限り何も変えられない。
海洋小説 MORGENROOD -曙光の主人公は、海洋都市のいっそうの発展を願い、各機関に混在している観測データを一元管理し、便利な検索ポータルとして提供する『海洋情報ネットワーク』の構築を提案しますが、政府は重要性を理解せず、簡単に実現しそうにありません。
自身の無力を痛感するヴァルターに、カリスマ経営者のアル・マクダエルは上記のようにアドバイスします。
事業やグループワークにおいては、地位や資本や実績が物を言う世界に違いありません。
では、どんな人でも力があればスタッフを思いのままに動かし、理想通りにプロジェクトを実現できるのでしょうか。
たとえ力で押し切っても、周りにやる気が無ければ、大したものは作れないでしょう。
逆に、資本や技術の乏しい中で始めても、皆が熱意をもって取り組み、一つ一つ積み上げれば、だんだん力もつくし、思いがけない協力者も現れるかもしれません。
結局は、『人』。
自分に何も無ければ、周りの人間を動かせ、とアルはアドバイスしているのです。
「人を動かす」とは、心を動かすこと。
心を動かすには、どうしたらいいのだろう。
それを考えるのが、リーダーシップであり、マネジメントであり、創意工夫だと思います。
カネやモノの流れだけ追うのが仕事ではない。
小手先のテクニックや褒め言葉ごときで人の心は動かせません。
最終的には人間力が問われるのは、どの分野、どの階層でも同じでしょう。
レベルの高い人と、レベルの高い仕事をしようと思ったら、技術より信用が問われるのは言うまでもありません。
出会いの場で、ヴァルターは、アルが生まれながらに地位や財産や名声や、ありとあらゆるものを持っていた事について言及しますが(アルも大会社の跡取りとして生まれてきたので)、いくつもの現場を経験して、アルが痛感したのは「この世のことは人次第」ということです。
だからこそ、「自分に地位や資本さえあれば」と考えてしまう若いヴァルターに、上記のようにアドバイスするのです。
この台詞は最終的にボツにしましたが、同じような主旨の言葉は随所に登場します。