詩とアフォリズム– tag –
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さよならという名の猫 ~寺山修司の少女詩集より
むかしむかし あるところに さよならという名の猫を さがしつづけている ひとりのおじいさんがいました でもこのおじいさんは さよならという名の猫がどこにいるのか 見たことがなかったんです だれにも愛されなかった詩の中の かわいそうなおじいさん! ぼくが消しゴムで消してあげることにしましょう 《寺山修司 少女詩集》 角川文庫 「... -
寺山修司の詩『ダイヤモンド』~ほんとに愛し始めた時だけ淋しさが訪れる
木という字を一つ書きました 一本じゃかわいそうだから と思ってもう一本ならべると 林という字になりました 淋しいという字をじっと見ていると 二本の木が なぜ涙ぐんでいるのか よくわかる ほんとに愛しはじめたときにだけ 淋しさが訪れるのです 愛さないの、愛せないの (ハルキ文庫) 人は、独りで居る時は、孤独を感じない。 他者の存在を... -
寺山修司 宝石の詩『ガーネット』 ~思い出をかためて一つの石にできたなら
ガーネット もしも 思い出をかためて 一つの石にすることが出来るならば あの日二人で眺めた夕焼の空を 石にしてしまいたい と 女は手紙に書きました その返事に 恋人が送ってよこしたのは ガーネットの指輪でした あかい小さなガーネットの指輪を 見つめていると 二人はいつでも 婚約した日のことを思い出すのです 愛さないの、愛せないの (... -
愛の能力を使い方を覚えていくしかない フォースター『眺めのいい部屋』より
Man has to pick up the use of his functions as he goes along ―― especially the function of Love. From “ A Room with a View” by E.M.Forster 『人生では、さまざまな能力を使ってみて、その使い方を覚えていくしかない ――とくに、愛する能力の場合は。』 “眺めのいい部屋”から E.M フォースター ここでは能力と翻訳されていますが、... -
チグリス川の日は暮れて ~バビロンの石板と法の精神
「王様はハダカだ!」と言える自由と、それを受け入れる社会の健全さ。 紀元前1700年の昔にも、 やれ「お前が悪い」「アイツが悪い」と言い争い、 「お代官さま、公正なお裁きを!」 と訴える人が後を絶たなかった。 誰だって我が身が可愛い。 自分の利益は守りたい。 何事も平等に扱って欲しい。 人を殴って、何のお咎めもないのはオカ... -
月光浴と言葉 ~Clair de Luneのように心を照らす
ホームページのタイトル『Clair de Lune』の所以と闇夜を照らす月の光のような存在でありたいと願うコラム。月齢とそれぞれの意味について紹介しています。 -
「今日」という日は、贈り物
昨日までのことは、歴史。明日のことは、ミステリー。今日という日は贈り物。ゆえに「プレゼント」と呼ばれる。映画『カンフーパンダ』でも使われていたアリス・モース・アールの詩より。 -
外の世界に憧れる猫と閉ざされた窓 ~猫のいる風景
猫には、外に憧れる気持ちはあるけれど、自分でドアを開ける力はない。 誰かが開けてやらないと、いつまでも家の中に閉じ込められたまま。 どれほど外に出たくても、ドアの前でにゃーにゃー鳴くだけ、夢を叶えるには、大人の手が必要なのだ。 近頃はドアや出窓の近くでウロウロするだけで外に出たいのだと分かるようになった。 こちらが気付... -
人は決意した瞬間が一番美しい ニーチェの『新たなる海へ』と『シルス・マリア』
かなたへ――われは向かわんと欲する 今より頼るは この我と わがうで(伎倆)のみ 海原は眼前にひらけ その蒼茫の涯へと わがジェノアの船は乗り出す 大きな試練は大きな苦痛を伴うかもしれないが、それは選ばれた人間だけが背負うことのできる天命と思う。 -
ムーミンの名言集 ~この人は怒ることもできないんだわ。それがあんたの悪いとこよ
「世界には素晴らしいことがたくさんある。でも、その素晴らしいことに出会えるのは、それにふさわしい人だけなんだ(ムーミンパパ)」 トーベ・ヤンソンの原作は北欧的な哲学の宝庫。大人も必読の名言集です。 -
僕が死んだら、この曲のように僕を思い出して。ビル・エヴァンスの名曲に寄せて
もし、僕が突然死んだら、この曲のように僕を思い出して。この世に記憶する人が在る限り、その願いは叶うだろう。でも、いつかは、僕を偲ぶ人も消え去る。だからといって、今、生きていることが無意味だとは思わない。僕はこの世の全てを味わうために生まれてきたのだから。 -
この世は辛い事ばかりだから、私なら最初から産まないわ ~ミケランジェロの『ピエタ』より
お堅いクリスチャンのハワードは美少女フローレスに恋するが、彼女は悲しい生い立ちからハワードの信仰心を揶揄し、反抗的な態度を取る。ミケランジェロの『ピエタ』を前にフローレスは「産まないことが愛の証」と言い、ハワードはそんな彼女の苦しみに寄り添う。 -
初めに《御言葉》があった。《御言葉》は神であった
ヨハンネスによる福音 《御言葉》が人間となった 初めに《御言葉》があった。《御言葉》は神とともにいた。《御言葉》は神であった。 このかたは、初めに神とともにいた。 神はこのかたによって万物を造った。 造られたもので、このかたによらないで造られたものは何一つなかった。 このかたによらないで造られたものは何一つなかった。 こ... -
ジレ・ジョーヌを着た『島の馬』(ジャック・プレヴェール)
どこか遠くの島に、ひとりぼちの馬がいる。 馬が草など食べている。そのむこうに一艘の船が見える。それは馬がこの島へ来るとき乗った船で、いずれ帰るときにも乗る船だ。 もともとひとりぽっちの馬ではない。 ほかの馬との付き合いが大好きだから、こうしてひとりでいると退屈でたまらない。 何か、ほかの馬の役に立つことをしたいと馬は思... -
詩心がなければ世界は灰色 『葬式に行くカタツムリの唄』ジャック・プレヴェール
死んだ葉っぱの葬式に 二匹のカタツムリが出かける 黒い殻をかぶり 角には喪章を巻いて くらがりのなかへ出かける...そしてカタツムリは何に出会うのでしょうか? ジャック・プレヴェールの優しい詩情が感じられる傑作。 -
松涛弘道『釈迦の名言108の知恵』より ~もっと美しい、ほんとうに尊いものを大切に
「いくら この世が 喧騒と欺瞞にみちあふれていても みんながもっと美しい ほんとうに尊いものが あることを知っている」社会の平和と秩序の根幹を成す美徳を大切にしようという心のコラム。 -
新年の夜明けに寄せて『曙光』と『落日』廻る光の物語
東向きの部屋に移り住み、昼夜逆転の生活をするようになってから、夜明けを目にすることが多くなりました。 私はそれまで『日の出』というものを見たことがなく、いつも頭上で燦燦と輝く太陽しか知らなかったのですが、初めて曙光を見た時、胸にしみいるような感動を覚えたものです。 山間を薄紫に染めながら、ゆっくり昇ってくる、生まれた... -
フランス 恋の詩 ジャック・プレヴェール、ヴェルレーヌ、アンデルセン、他
ジャック・プレヴェール、ポール・ヴェルレーヌ、アンデルセン、ジョン・キーツ、ウィリアム・ブレイク、アポリネールなど、フランスの名詞とイギリスの名句を紹介しています。 -
谷川俊太郎の詩集『空の青さを見つめていると』『魂のいちばんおいしいところ』より
谷川俊太郎の初期の詩集『空の青さを見つめていると』『魂のいちばんおいしいところ』に収録されている詩を紹介。私と世界の関わり、実存主義に関するコラムを掲載。 -
曙光と落日 廻る光の哲学とニーチェ
今にも落ちそうな陽に、哀れを感じたことはありませんか? 西日の強さにうんざりさせられたことはありませんか? 私はどうしても『沈む陽』の気持ちが分からなくて、西の空を燃えるような赤や黄金に染める太陽に、何度も問いかけたものでした。