文芸– category –
-
若者のひもじさと年長者のご馳走の思い出
10代から20代にかけて、いつもお腹が空いていたのを今も思い出します。 食べても、食べても、すぐにお腹が減って、「お腹空いた……」って、食べ物のことばかり考えてた時もありました。 年寄りになると基礎代謝も激減して、空腹もめったに感じなくなるけれど、若い時分の空腹感って半端ないですよね。 何もしなくても、仕事がなくても、とにか... -
延死 ~医療が引き延ばす死~
命を延ばすというよりは、死を引き延ばすような医療の在り方について。人間としての思考も意識も完全に停止し、自分で自分が誰であるかも分からない、ただ呼吸するだけの肉体として存在するに過ぎないなら、それも人間として尊厳のある「生」のうちに入るのだろうか? -
死ぬことと生きること 『病院は社会の縮図、そして人生の縮図』
分娩に立ち会った次の日の朝、 いつものように白い洗面器にぬるま湯をはり、一番最初に洗面介助をした重症のおばあちゃんの個室に運んで行くと、すでに名札が外され、部屋は空になっていた。 「あの……あの方、部屋を替わられたんですか?」 と看護婦さんに聞くと、 「ああ、**さんね、夕べ、亡くなったのよ」 私はワゴンを押してユティリテ... -
人は言葉を作るが、やがては、人が言葉に作られるようになる
言葉は怖い。人を癒しもすれば、傷つけもする。だけど言葉の本当の怖さを知ったのは、メルマガで配信するようになってからだと思う。 「人は言葉を作るが、やがては、人が言葉に作られるようになる」 それが私の得た第一の教訓だ。 人間、言葉によって一つのスタイルを作ると、いつしかそのスタイルに支配されるようになる。自分が言葉の主人... -
サルに学ぶ処世術と人生論 猿山のイノシシ&ひょうたん猿
猿山にイノシシが同居するのは最下層で抑圧される猿のストレス解消に役立つからである。ひょうたん猿は、ひょうたんの中に入った米を掴みだそうとして手が抜けなくなり、そのまま農夫に捕らえられる愚かな習性を物語るエピソード。人間社会も決して笑えないという話 -
曙光の言葉 ~海の愛、人の知恵、恋のささやき
『海洋小説 MORGENROOD -曙光』の中から心に響く言葉を集めています。 仕事、人生、恋愛、等々。 お気に入りの言葉が見つかれば幸いです。 曙光の言葉 [wp_show_posts id="2831"] Kindleストア -
海のように深く静かに沈潜する ~内省こそ人生の処方箋
『沈潜』とは深く沈んで黙考すること。人は喋ったり、書いたりしている間、深くは考えないものです。時に立ち止まり、深く沈潜することで、人生が好転することもあります。小説の一場面をモチーフとした心のコラムです。 -
オイディプス王と精神的な親殺しについて
心理学者にして文人でもある河合隼雄氏の名著『家族関係を考える』とギリシャ悲劇『オイディプス』をベースに、思春期の子供の自立と内面的な親殺しについて綴るコラム。同氏の「竜退治と自立と内的な母親殺し」に関する記述と併せて。 -
【短編】沈める寺 ~ドビュッシーの名曲より
短編『沈める寺』 一人の男が、湖のほとりにたたずんでいた。 彼は、ひと月ほど前から、湖の近くのホテルに滞在していた。そして、夕暮れになると、こうして湖のほとりに立ち、何時までも動かぬ水面をじっと見つめているのだった。 彼が何者で、何のために湖を見つめ続けているのか、知る者は一人としてなかった。 だが、同じホテルの客の一... -
E=MC2 人生の質量は心のエネルギー × 時間の2乗に優る
いよいよ21世紀が始まりました。皆様の抱負はいかがですか。 今回は、21世紀の始まりにふさわしく、ちょっと宇宙的な話を書こうと思います。 皆さんは、「時間」という概念をどのようにお持ちですか。 人間のタイムスパンは、一日24時間。 一生はだいたい80年です。 しかし、その時間の『量』も、人間が考え出した単位に基づくもの。 宇宙の... -
レコードアルバムという物語 ~A面で恋をして、B面で納得
アナログレコードという物語 A面とB面 : 作り手の駆け引き 近年、アナログレコードが売り上げを伸ばしているという。 うちの近所の家電量販店も、DVD売り場の1/3がアナログレコードに置き換わった。 30年以上前に目にして、それっきりの、あの有名ジャケットが、どーんと売り場の顔になっているのは感無量だ。 今、若い人の目で見ても、十分... -
人生の春 ~泣けるうちが花
わあわあ泣けるのも、若さの特権です。 年取ってから嘆き悲しんでも、惨めなだけです。 私も枕カバーが変色するほど泣き明かしたクチですが、 今はあれほど落ち込む理由もないし(諦念にまみれて)、 純粋に泣けた時代が本当に懐かしいです。 変色した枕カバーを洗濯して、 春の日射しで乾かし、 来年こそは幸せになる! と誓った日。 そんな... -
カジミェシ・スモーレンの序文より ~アウシュヴィッツ強制収容所について
カジミェシ・スモーレンの序文より ~強制収容所について カジミエシュ・スモーレン(1920年4月19日~2012年1月27日)は、大事に世界大戦中のアウシュヴィッツ強制収容所のポーランド政治犯で、戦後は、アウシュヴィッツ・ビルケナウ国立博物館の館長として尽力された方です。 公式サイトのプロフィールより。 https://www.auschwitz.org/en... -
罪人の償いと本当の救い ~犯罪者は幸福になってはいけないのか 映画『ハミング・バード』より
原題は『Redemption』(償い)。 戦場の狂気から、罪なき民間人を殺害したジョゼフと、性的ハラスメントから逃れる為に体操コーチを殺めてしまったクリスティーナの、それぞれの償いを描いています。 罪を背負った人に共通するのは、『罪をおかした人間は、決して幸せになってはならない』という思い込みです。 本人がそれを自分に課している... -
ウェーバーの言葉 ~政治家とは「それにもかかわらず!(ダンノッホ)」と言い切る自信のある人間
現実の世の中が――自分の立場からみて――どんなに愚かであり卑俗であっても、断じて挫けない人間。 どんな事態に直面しても「それにもかかわらず!(ダンノッホ)」と言い切る自信のある人間。 そういう人間だけが政治への『天職(ベルーフ)』を持つ。 ウェーバー『職業としての政治』より 『政治』というと、みな、特別なものを思い浮かべま... -
アルトゥール・ランボーの詩集 『地獄での一季節(篠沢秀夫・訳)』より
詩集『地獄での一季節』について アルトゥール・ランボーの訳詩と言えば、小林秀雄の『地獄の季節 (岩波文庫)』がよく知られていますが、私の一押しは仏文学者の篠沢秀夫・訳による『地獄での一季節 Kindle版』。です。 篠沢氏も解説で述べているように、小林訳はあまりに思い入れが強すぎて、「俺様ワールド」みたいな世界観がとっつきにく... -
【質問】鳥になれたら最初にどこに飛んで行きたいですか?
もし鳥になれたら最初にどこへ飛んで行きたいですか? 『質問』 田中未知さんより それは『過去の自分』です。 『あの頃の私』が頑張ってくれたから、今がある。 過去の私には感謝しても、しきれないくらい。 挫けなかった私。 決して諦めなかった私。 思えば、どんな危機に陥っても、不思議と「絶望しきる」ということはありませんでした。... -
仕事の良し悪しはパートナーで決まる ・ 能力よりも出会い運 ~イソップ寓話『炭屋と洗濯屋』
炭屋と洗濯屋が無理に一緒に働けば、どれほど綺麗に仕上げた洗濯物も真っ黒になる。どれほど能力があっても、成功するか否かは、職場の人間関係や出会い運が大きく左右されるという喩え。 -
大層な空理空論を吐くくせに、人間として当たり前のことができない『天文学者』~イソップ寓話より
「ねえ、先生。空のものは見ようとなさるのに、地上のものは見ないんですかい」大層な空理空論を吐くくせに、人間としてあたり前のことができないような連中にこの話は適用できる。イソップ寓話の有名なエピソードより。 -
詐欺師は他人にも詐欺行為を勧める イソップ寓話『尻尾のない狐』
なぜ尻尾のない狐は、尻尾の価値を否定し、他人にも尻尾がない事を勧めるのか。それは尻尾のない狐が増えた方が自分に都合がいいからである。同じ理屈が世間でもまかり通っていないだろうか。尻尾の価値を全否定する主張は要注意である。