文学・哲学– category –
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小説『カルメン』 バスク語と恋の始まり ~女の話す言葉に、男が故郷を感じる時
映画やオペラで有名な『カルメン』の原作は観客のイメージとかなり異なり、ボヘミア文化に詳しい考古学者の旅から始まり、死刑囚ドン・ホセの回想録として恋の物語が語られます。自由奔放で炎の女カルメンは本当にドン・ホセを愛していたのでしょうか。二人の心を繋いだバスク語の話題を中心に、メリメの原作を紹介。 -
捨てる神に拾う神 早坂茂三の言葉 / 田中角栄と共に闘ったオヤジの遺言
田中角栄の秘書として激動の昭和を生き抜いた早坂氏の名言集。『老人の跋扈は国を滅ぼす。しかし、青年の失敗は国を滅ぼさない』『国乱れて忠臣現れ、家貧しくして孝子現る』『何回も繰り返しひどい目に遇ったほうがいい』『惻隠の情』『意地とは人間が生きていくうえでの背骨』など。 -
『チャタレイ夫人の恋人』~肉体の声に耳を傾け、自分に素直に生きる
上流階級のコニーは半身不随となった夫に振り回され、疲れ切っていたが、森番メリーズと知り合って、生きる歓びを取り戻す。猥褻か、芸術かで裁判沙汰になったD・H・ロレンスの性愛小説。過激な性描写と思われがちだが、本質は、肉体を通じた男女の愛と、ありのままに生きる大切さを謳った人生賛歌である。小説の抜粋とショーン・ビーン主演のTVドラマを動画で紹介。 -
歩く人が多くなれば、それが道になるのだ 魯迅『阿Q正伝』と教科書の名作『一切れのパン』
歩く人が多くなれば、それが道になる 希望とは、もともとあるものともいえぬし、ないものともいえない。 それは地上の道のようなものである。 もともと地上には道はない。 歩く人が多くなれば、それが道になるのだ。 魯迅『阿Q正伝・狂人日記 他十二篇(吶喊) (岩波文庫)』 小学校の高学年の教科書に掲載されていた魯迅の短編。 タイトルも、... -
バルタサル・グラシアンの成功の哲学 人生を磨く永遠の知恵
17世紀から今日に至るまで、ニーチェやショーペンハウアーといったヨーロッパの知識人に読み継がれた『知恵の書』。『人づきあいの知恵』『自分づくりの知恵』『仕事に関する知恵』『友情を育てる知恵』『ライバルに差をつける知恵』『人から愛される知恵』『ツキと幸運を呼び込む知恵』『よりよい人生を送る知恵』など読みやすい人生訓。 -
映画『八甲田山』と死の彷徨 日本の組織は昔も、今も…
軍隊という硬直した組織と一部の権力に振り回される庶民の悲哀を描いた超大作。日本を戦争に駆り立てたものは何だったのか。なぜ誰も軍と政府の暴走を止めることができなかったのか。作家・新田次郎の怒りが深く静かに伝わってくる原作とルポルタージュの見どころを紹介。 -
獣性のままに生きるか、善性に殉じるか イソップ寓話『善と悪』
イエスの言葉を聖なる教えとするなら、イソップ寓話は脈々と受け継がれてきた処世術のようなもの。 岩波文庫いわく『実は、歴史上の人物としてのイソップ(アイソーポス)が作ったと実証できる話はひとつもない、いわば「イソップ風」寓話集であるが、そこには、読み手の立場にょってさまざまな解釈が可能な、実に奥深い世界が展開されている... -
成就の秘訣は『根気・本気・運気』 フジ子・ヘミングの『運命の言葉』より
波瀾万丈の人生で知られるピアニスト、フジ子・ヘミング氏の著書より名言を紹介。 氏の「正直に生きる」という信条をテーマにしたコラム。 -
悪女 VS キャリアウーマン 事件の印象が証言を左右する 松本清張の『疑惑』
一台の車が埠頭から海に突っ込み、鬼塚球磨子は救助されるが、車内に取り残された夫の白河福太郎は死亡する。前科四犯の毒婦の先入観から、球磨子の犯行という前提の元に裁判が進むが、彼女の弁護を引き受けた佐原律子の鋭い推理により、思いがけない事実が明らかになる。桃井かおりと岩下志麻、二大女優が火花を散らす野村芳太郎監督の傑作。小説と映画の違いを併せて紹介。 -
『憚(はばか)りながら』と『ミンボーの女』
ヤクザが許せないのは、暴力で他人の人生を支配するから -
松田優作の映画『野獣死すべし』 荻原朔太郎の『漂泊者の歌』とリップ・ヴァン・ウィンクルについて
松田優作の鬼気迫る演技で知られる『リップ・ヴァン・ウィンクル』の台詞と風俗の場面で流れる荻原朔太郎の詩『漂泊者の歌』を中心に映画の見どころを解説。戦場ジャーナリスト伊達邦彦の狂気をあますことなく見せつけるハードボイルドの傑作。 -
人は決意した瞬間が一番美しい ニーチェの『新たなる海へ』と『シルス・マリア』
かなたへ――われは向かわんと欲する 今より頼るは この我と わがうで(伎倆)のみ 海原は眼前にひらけ その蒼茫の涯へと わがジェノアの船は乗り出す 大きな試練は大きな苦痛を伴うかもしれないが、それは選ばれた人間だけが背負うことのできる天命と思う。 -
本田宗一郎の名言 『得手に帆を上げて』~好きなこと・得意なことで生きていこう
人生は「得てに帆あげて」生きるのが最上だと信じている。 だから今でも機会があると、若い人に得意な分野で働けといっている。 -
生き続けて行け。きっとわかって来るだろう ~ゲーテの格言より
「われわれには理解できないことが少なくない。生き続けて行け。きっとわかって来るだろう」ゲーテの格言をモチーフに生きる意味と希望について綴る心のコラム。 -
ムーミンの名言集 ~この人は怒ることもできないんだわ。それがあんたの悪いとこよ
「世界には素晴らしいことがたくさんある。でも、その素晴らしいことに出会えるのは、それにふさわしい人だけなんだ(ムーミンパパ)」 トーベ・ヤンソンの原作は北欧的な哲学の宝庫。大人も必読の名言集です。 -
『ジャガイモを食べる人々』 『聖書のある静物』『疲れ果てて』 ヴィンセント・ヴァン・ゴッホの名作
ゴッホの初期の名作『ジャガイモを食べる人々』から問題児だった青年期のエピソードを紹介。いまだ東欧の人々にとって主要な食糧であるジャガイモに関するコラムを掲載しています。『疲れ果てて』『聖書のある静物』と併せて。 -
男は死んでも櫻色 (三島由紀夫) / 武士道とは、死ぬ事と見付けたり
男は死んでも櫻色。切腹の前には 死んでも生気を失わない様に頬に紅をひき、唇に紅をひく作法があった。敵に封じて恥じない道徳は死の後までも自分を美しく装い自分を生気あるように見せるたしなみを必要とする。散り際の美学を説く三島由紀夫の名言。 -
三島由紀夫&美輪明宏『黒蜥蜴』妖艶と美麗の極致
美貌の女盗賊・黒蜥蜴と明智小五郎の死闘を描いた江戸川乱歩の傑作。三島由紀夫が戯曲化し、美輪明宏が演じた舞台は耽美の極みであり、妖艶な世界観と流麗な台詞が素晴らしい。特に気に入った部分を紹介。 -
ジレ・ジョーヌを着た『島の馬』(ジャック・プレヴェール)
どこか遠くの島に、ひとりぼちの馬がいる。 馬が草など食べている。そのむこうに一艘の船が見える。それは馬がこの島へ来るとき乗った船で、いずれ帰るときにも乗る船だ。 もともとひとりぽっちの馬ではない。 ほかの馬との付き合いが大好きだから、こうしてひとりでいると退屈でたまらない。 何か、ほかの馬の役に立つことをしたいと馬は思... -
渡辺淳一の医療小説『光と影』 ~手術の順番が二人の患者の明暗を分ける
手術時の患者の取り違いをテーマに人生の光と影を描く直木賞受賞作。まさに運としか言い様がない二人の男の栄光と挫折を渡辺氏らしい流暢な筆致で描く。