寺山修司– category –
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さよならという名の猫 ~寺山修司の少女詩集より
むかしむかし あるところに さよならという名の猫を さがしつづけている ひとりのおじいさんがいました でもこのおじいさんは さよならという名の猫がどこにいるのか 見たことがなかったんです だれにも愛されなかった詩の中の かわいそうなおじいさん! ぼくが消しゴムで消してあげることにしましょう 《寺山修司 少女詩集》 角川文庫 「... -
寺山修司の詩『ダイヤモンド』~ほんとに愛し始めた時だけ淋しさが訪れる
木という字を一つ書きました 一本じゃかわいそうだから と思ってもう一本ならべると 林という字になりました 淋しいという字をじっと見ていると 二本の木が なぜ涙ぐんでいるのか よくわかる ほんとに愛しはじめたときにだけ 淋しさが訪れるのです 愛さないの、愛せないの (ハルキ文庫) 人は、独りで居る時は、孤独を感じない。 他者の存在を... -
寺山修司 宝石の詩『ガーネット』 ~思い出をかためて一つの石にできたなら
ガーネット もしも 思い出をかためて 一つの石にすることが出来るならば あの日二人で眺めた夕焼の空を 石にしてしまいたい と 女は手紙に書きました その返事に 恋人が送ってよこしたのは ガーネットの指輪でした あかい小さなガーネットの指輪を 見つめていると 二人はいつでも 婚約した日のことを思い出すのです 愛さないの、愛せないの (... -
思想のないものはせめて方法を持て
思想のないものはせめて方法を持て 酒場がぼくの学校だった ここはことばの暴力教室だ 思想のボクシングジム 自己の絶壁をのぞく勇気を 思想のないものはせめて方法を持て 怒りをぶちまけてサンドバッグをたたけ 「出会い」と「関係」と「対決」を 人生に退屈してはいけない すべての疑問についてやりとりを ぼくが変わったのか読者が変わっ... -
酒場が僕の学校だった ~どこで学ぶかより、何を知りたいか
酒場がぼくの学校だった バイロンという詩人が書きました。「酒場がぼくの学校だった」と。 文部省の作ったものを認可したものだけが学校なのではなく、ときには映画館が学校だったり、デパートが学校だったりすることもある。この5ページはぼくの考える〈もう一つの学校》として、諸君の意見とぼくの意見の対決によって作っていきたい。 た... -
芸術には使命も目的もありはしない ~人間は進化せず、変化するだけ
【高校生の質問】 ピカソはぼくに何も与えなかった 高校生の質問 ピカソが死んだ。9歳の高齢だったそうだ。天才は概してその芸術活動において寡作であるという世の通説に反して、非常な多作で、特に晩年の盛んな活動は年齢を感じさせないくらい驚くべきものがあったそう. ピカソの絵の中には何億円という高値がついたものがあるという。世界... -
現代に生きるためには、無垢な心がどのような報復をうけねばならないか 映画『シベールの日曜日』
ガラス玉を星のかけらと思い込める感受性は、その星のかけらの鋭い刃先でみずからの心を傷つける。現代の生きづらさの正体と人間の感受性に関する文芸コラム。 -
「生きる」ということを10行くらいで書いて悩むような軽薄さを好まない
生きることに悩む高校生への回答 高校生のお便り ○月○日 何のために どんなふうに 生きればよいというのだ オレがいなくても オレが死んでも人間は動きまわる 時間はどんどん過ぎ去って 再び帰ることはない あのときは幼かったが 一所懸命生きていた 食うために生きろというのか 生きるとはどういうことか いたずらに老い、死んでいくのか (... -
寺山修司の戯曲『星の王子さま』 現実社会で星はいかに輝くか
サン=テクジュペリの『星の王子さま』をモチーフとした現代人の生き方を示唆する初期の戯曲。作りものの星に固執し、無知なまま年だけ取った老処女ウワバミを通して、点子は今も自分の頭上に輝く「本物の星」の存在に気付く。皮肉のきいた作品ながら、台詞は詩のように美しく、寺山氏にとっても思い入れのある秀作。コラム『現実社会で星はいかに輝くか』『物語より処世の知恵』と併せて -
寺山修司はなぜ女にモテるのか
寺山修司の魅力を女性の立場から分析する文芸コラム。誰にも答えられない人生の悩みに答えてくれる唯一の詩人にして家出人の味方。寺山修司の強さと優しさについて解説。 -
寺山修司の『ポケットに名言を』 言葉を友人に持ちたいと思うことがある
「言葉を友人に持ちたいと思うことがある。それは、旅路の途中でじぶんがたった一人だということに気がついたときにである」寺山修司の好きな言葉のコレクション。コラム『言葉を友人に持ちたいと思うことがある / 言葉をジャックナイフのようにひらめかせる / シャツでも着るように軽く着こなしては、脱ぎ捨ててゆく / 旅路の途中でじぶんがたった一人だということに気がつく時』 -
寺山修司の戯曲『邪宗門』 あらすじと名句 ~人生以上でも、人生以下でもない人形使いの人生
海外でも高評価を得た戯曲『邪宗門』のあらすじと名句を紹介。呪詛的な内容ながら、自我、人生、母子関係といった根源的なテーマを問いかける野心作。『糸を切るより操ってみろ / 自己批判しすぎて鬼になる / 捨てられてくれ、おっ母さん!』 -
寺山修司の『あしたはどっちだ』 明日とは一番無縁な人の明日論
『あしたのジョー』の主題歌「あしたは どっちだ」は寺山修司の作詞。寺山修司ほど「あした」という言葉が似合わない人もない。寺山修司の場合、「今、この瞬間」、「今日」こそが人生そのものだから。 -
寺山修司の名言とモルゲッソヨ
平昌五輪で大人気の『モルゲッソヨ』のアスキーアートがあまりに素晴らしいので、寺山修司の名句と掛け合わせてみました。 モルゲッソヨは立ち会いを許された覗き魔である。 寺山修司の仮面画報より 正しくは、「観客は立ち会いを許された覗き魔である」。 どんな鳥だって モルゲッソヨより高く飛ぶことは できないだろう 『ロング・グッドバ... -
人生というのは、いつ始まるのだろう
泥水すすって、初めて知る世間もあり、生きていくということは、実に奥深い。奥深いからこそ、子供には第二の誕生が必要で、二度目に生まれた時には、人生はただ苦痛なものではなく、不様でも生きるに値するということが、ようやく分かってくるのである。 -
寺山修司の『時速100キロの人生相談』~高校生の悩みに芸術的回答~
寺山修司が高校三年生の悩みに芸術的に回答。斜め下から真理を突き刺すような分析と比喩が素晴らしい。『幸福はもっと、たけだけしいものだ / 地獄を肉眼でとらえなさい / 怒るなら、もっとでっかく怒ることです / 想像力で人生を変えなさい /目的を作り出してゆくのが日々の営み / 人間は進歩するのではなく、変化するもの』など。 -
生まれた時代が悪いのか、それとも俺が悪いのか ~ガラクタでも輝けた1960年代
「生まれた時代が悪いのか、それとも俺が悪いのか。何もしないで生きてゆくなら、それはたやすいことだけど」。若者が権力に逆らった時代でもある1960年代の追想と、スポーツ界の敗者について綴るコラム。ガラクタでも光り輝ける時代の寛容さと現代の厳しさ。 -
文学と自己啓発の違い ~詩を役立てる心とは 寺山修司『人生処方詩集』
『人生処方詩集』の冒頭で、寺山修司は詩が役に立たないものとして無視されてきた歴史を指摘する。対照的に「役立つ詩」「食える詩」が自己啓発だ。人間の本質を無視した理想一点張りの人生論はかえって人を不幸にする。文学は人間のありのままを描く芸術である。文学と自己啓発の違いについて考察するコラム。 -
支配する母親と囚われる息子の歪な愛憎を描く 戯曲『毛皮のマリー』
男娼マリーは美少年・欣也を部屋に閉じ込めて育てていたが、ある日、美少女が現れ、外の世界に誘う。寺山修司と母・はつの親子関係を彷彿とする戯曲の名台詞と舞台劇の見どころを紹介。 支配する母親と囚われる息子の歪な愛憎をテーマにしたコラムを掲載しています。 -
『幸せ』が人生の目的ではなく 寺山修司の『幸福論』 / 佐藤忠男の解説「自分の不幸も表現しよう」
一般的な幸福論と異なり、自分が幸せと信じるものを根底から覆し、世界の見方を教えてくれる斬新な一冊。『自分の不幸も表現せよ』という評論家・佐藤忠男氏の解説と併せて、見どころを紹介。コラム『幸せになれない自分も大切にしよう』と併せて。
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