文芸– category –
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死を受容する必要なんか、ない 渡辺淳一の医療小説『無影灯』
難病に苦しむエリート医師と看護婦の恋を描いた『無影灯』は渡辺淳一氏の死生観や医療観が色濃く反映された医療小説。がん患者に告知することは正しいのか。優しい嘘をつくことが患者の救いになることもある。末期医療の在り方に一石を投じる傑作。医療コラム『がん告知 ~優しい嘘が患者を救うこともある』 -
曙光と落日 廻る光の哲学とニーチェ
今にも落ちそうな陽に、哀れを感じたことはありませんか? 西日の強さにうんざりさせられたことはありませんか? 私はどうしても『沈む陽』の気持ちが分からなくて、西の空を燃えるような赤や黄金に染める太陽に、何度も問いかけたものでした。 -
早坂茂三の著書「鈍牛にも角がある」「オヤジとわたし」
奇蹟の秘密は何か。政治音痴の日本人のなかで、角栄だけが政治を理解していたからである。人間洞察の深さにおいて桁違いであったからである。 -
饗庭孝男『フランス 四季と愛の詩』 詩と写真で感じる大人の絵本
フランス文学の評論で著名な饗庭孝男氏の名著(絶版)から「恋する女の存在の不安は、たえず相矛盾する極から極へ移ることから生じる。愛は生から死へ、歓喜から涙へ、苦しみから安らぎへ、至福から絶望へと絶えず詩人を揺り動かし、片時も休むことがない」等の抜粋と、フランス語の原文とフランスの美しい風景写真から構成される本の一部を写真付きで紹介。 -
江戸川乱歩の『芋虫』~現代の老人介護を想う
時子の夫は戦争で負傷し、手足を失って、芋虫のような寝たきりになってしまう。時子はかいがいしく世話していたが、やがて疲れ切り、暗い感情を抱くようになる。発作的に夫を傷つけた後、時子が目にしたものは……。現代の介護者の苦悩を思わせる壮絶な心理描写と結末が衝撃的な乱歩の傑作。作品をモチーフとした介護コラムを掲載。 -
青春と革命は相性がいい 三好徹『チェ・ゲバラ伝』 ~青春期の情熱と信念を貫いて
裕福なアルゼンチンの家に生まれ、喘息というハンディすらもつチェ・ゲバラは南米の貧困問題や独裁に心を痛め、盟友カストロと共にキューバ革命を達成する。青年期の疑問や情熱を生涯持ち続けたゲバラの生涯と感動的な『別れの手紙』を紹介。優れた言論人であり詩人でもあるゲバラの一面が窺える良書。『フィデル・カストロへの手紙~祖国か死か』『両親への手紙~信念を証明する』『不正に敏感であれ』『青春と革命は相性がいい』 -
『フランダースの犬』に対するベルギー人の価値観
貧乏だろうが、泥棒扱いされようが、十五歳にもなれば、自分で人生を切り開き、逞しく生き延びねばならない。それがベルギー国民の価値観だ。ネロ少年は十五歳の割に自立心に乏しく、”愛犬と一緒に好きな絵の前で野垂れ死に”というのはお粗末な結末らしい。 -
オスカー・ワイルドはFacebookの「いいね」が嫌い
オスカー・ワイルドがSNSをやっていたら、たくさんの「いいね!」にかえって恐怖を感じ、アカウントを閉じてしまうだろうというお話。周囲の安易な賛同は時として自分を見失わせます。 -
『ツァラトゥストラ』で読み解く ニーチェの『永劫回帰』と『自己超克』
難解と言われるニーチェの『永劫回帰』も「海と太陽」に喩えれば分かりやすい。自己を肯定し、意思もって生きることの大切さを説いたニーチェの生の哲学の集大成を分かりやすく解説しています。 -
熱意なくして道は開けず 植村直己『青春を山に賭けて』
五大陸最高峰を制覇し、日本人で初めてエベレスト登頂に成功した冒険家・植村直己氏の自伝を紹介。日本国民に愛された冒険家の素顔はシャイで、ひたむきで、大変な努力家だった思い出と併せて。 -
人は労働を通して社会的存在になる ~カール・マルクスの哲学
人間は労働を通して社会的存在になる。社会的存在とは、自分一人の世界の中ではなく、人々との交流の中に生きているということである。労働者革命の一大潮流を生み出したカール・マルクスの名言を紹介。今マルクスを読むべき理由や思想についてのコラムです。 -
人間が大事なのか、商品が大事なのか ~ 共産主義思想が誕生した歴史的背景 人と思想『マルクス』小牧治
マルクスの思想の真髄は労働者が資本主義社会における立ち位置を理解し、高い社会意識をもって仕事に取り組むこと。労働者が人として尊重され、各自の能力が社会に活かされる点にある。私たちは日常のささやかな改革を行うことで、自身も周りも幸福にすることができる。それが革命やイデオロギーよりも大切なマルクスの願いである。 -
若者のひもじさと年長者のご馳走の思い出
10代から20代にかけて、いつもお腹が空いていたのを今も思い出します。 食べても、食べても、すぐにお腹が減って、「お腹空いた……」って、食べ物のことばかり考えてた時もありました。 年寄りになると基礎代謝も激減して、空腹もめったに感じなくなるけれど、若い時分の空腹感って半端ないですよね。 何もしなくても、仕事がなくても、とにか... -
ミス・ゼロ ~働くということ~ 臨床検査技師のアルバイトから
二十歳の時、臨床検査センターで検査技師のアルバイトをしていた。扱うのは、主に血液。他には尿や便、喀痰や臓器組織など。取引先の病院や診療所などで採取された検体を営業部員が回収し、検査結果を通知書に打ち出して、病院に提供するのがメインの業務だ。 私が所属していたのは、放射性同位元素を使ったRI測定室。 部屋中、微細な放射線... -
カメがウサギに勝つこともある ~高橋直子さんの努力
『時間は決して夢を裏切らない』。決して最後まで諦めず、努力する限り、時間は必ず人に味方してくれるだろう。 非凡な人間とは、ありきたりのことを地道に続けられる人のことをいう。普通の人間には、そのありきたりのことさえ、億劫に感じられるものだ。 -
幸福な人生とは「あの人も、この人も、いい人だった」と思えること
振り返ってみると、本気で人を嫌いになったことなどないような気がする。 どんな人間にも、『そうならざるを得ない理由』があって、それを裁く権利など、誰にもないからだ。 むしろ、そうした弱さや哀しさがあるからこそ、誰もが愛すべき存在であるといえるし、人の世が面白く、飽きないものになるのだ。 もし、神様みたいな人ばかりの世界で... -
意思が運命に働いて、幸運も運ばれる
意思の力が幸運を運ぶ 『フォルトゥナの娘』と呼ばれるリズは、不利な条件で海洋都市の改善を訴える恋人のヴァルターに幸運の風を吹かせるべく、プレゼンテーションの機会を設けます。 もちろん、プレゼンテーションに挑んだからといって、必ず勝利するとは限りません。 しかし、何もしなければ、無はいつまでたっても『無』のままです。 何... -
理屈で人を変えることはできない
私が初めてPCを買ってネットに接続したのは'97年、自分でもフォーラムに投稿したり、掲示板に書き込みしたりするようになったのが'98年なのですが、当初は確かに新鮮で面白かったです。 うわー、ネットが普及したら、すごい時代になるなぁ、とも思ってました。 でも、いろんな経験を通して、すぐにそれは幻想だと気付きました。 少なくとも、... -
情けは人の為ならず ~自己責任論の矛先
自己責任論の矛先は、いずれ自分自身に向かう。 自分も同じ境遇に陥った時、周りに「助けて」と言えないからだ。 言えば、自分も同じように「自己責任」とあしらわれているのが目に見えている。 誰にも言えず、他人を信じることすらできず、自己責任の罠にはまって落ちていく。 昔から『情けは人の為ならず』というが、自身の暗黒もいつ訪れ... -
やっても悪口を言われ、やらなくても悪口を言われる
『やっても悪口を言われ、やらなくても悪口を言われる』というのは、西洋の文化人の言葉です。私も誰の言葉だったか、まったく覚えがないし(英首相・チャーチルか?)、もしかしたら「書いても悪口を言われ、書かなくても悪口を言われる」だったかもしれない。名言サイトで似たような文言を見かけたら、頭の片隅にメモして下さい。 多分、実...