アルが思い巡らせていると、リズが水色の瞳を瞬きながら言った。
「でも、パパは信じているのでしょう。そうでなければ、人生を懸けたミッションに、一年以上もブランクのあるパイロットを連れて来たりしないわ」
「彼には可能性があるからね」
「アステリアの海と同じね」
リズは目の前の海を見渡した。
「一見、何も無さそうだけど、深い海の底には世界を変える鉱物が眠っている。でも、それが浮かび上がるかどうかは、その人次第なの」
「そうだよ、リズ。お前にも世界を変える力はある。自分で気付いてないだけで、誰の中にも未明の光は存在する。だが、水面に浮き上がるには、自分で思い切り水底を蹴らないといけない。そこで初めて、運という浮力が手助けしてくれる」
「パパは手助けしないの?」
「何でもかんでも手助けすればいいというものではない。傷つき、過ち、痛い目に遭ってから、ようやく気付くこともある。良くも悪くも、あの男は多情多感だ。行き場のないマグマみたいに自分を持て余している。だが、何かを成すなら、それぐらい情念の濃い方がいい。あの男も今は心が塞いで盲目だが、流れ出る先が見つかれば、岩をも砕く激流になる」