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海底鉱物資源の採鉱システム ~洋上のギルド工場

海洋小説 MORGENROOD -曙光では、水深3000メートルの海底から、宇宙文明の基礎を成す希少金属《ニムロディウム》を含む海台クラストの採鉱に挑みます。

採鉱プラットフォームの設定においては、実際にパプアニューギニア沖、ソルワラ海域で試験採掘していたNautilus Minerals社の採鉱システムをモデルにしています。2010年代の半ばまで研究開発が続けられてきましたが、技術的困難に加え、環境保護問題や政治情勢などが絡み、採鉱事業を断念。事業を整理して、現在は権利のみ保有されています。

採鉱システムの要となる「破砕・集鉱・揚収」に関する情報はこちらをご参照ください。
破砕機・集鉱機・揚鉱管・水中ポンプ 各パーツについて画像と動画で紹介しています。

作品の詳細とキャラクター紹介はこちら

Exploring Our Sea Floor Production Equipment and How It Will Work
目次 🏃

採鉱プラットフォームの概要

Nautilus Minerals社の採鉱システムは、「支援船」「揚鉱管と水中ポンプ」「重機」の三つのパートからなります。
こちらの動画は、洋上から採掘用の重機を海中降下し、フレキシブルホースと揚鉱管を経由して、支援船に揚鉱する過程が描かれています。

こちらは、Nautilus Minerals社の採鉱プロジェクトについて紹介するニュース番組。この頃はまだ前途洋々だったのです。オフィシャルサイトも映っていますね。私が執筆に使った、投資家向けの非常に詳細なPDF資料が公開されていたのもこの頃です。

Nautilus Minerals社について

本作に登場する『採鉱システム』、および、『(半潜水式)採鉱プラットフォーム』は、実際にパプアニューギニア海域で海底鉱物資源の採掘を試みたNautilus Mineral社の採鉱システムをモデルにしています。

Nautilus Mineral社(本拠地・トロント)は1987年に設立され、海底鉱物資源(主に銅、金、亜鉛、銀)の商業採掘を目指した世界最初の企業です。

2010年より、パプアニューギニア領海にて、採掘船を用いた商業採掘を計画していましたが、資金調達や管理が不十分な上、採鉱予定であったビスマルク湾岸の住民の猛反対もあり、2019年には日本の民事再生法に相当するカナダの企業債権者整理法が適用され、Nautilus社は清算されています。

しかしながら、支援船を始め、三台の海底掘削機、ソルワラ海域の詳細な海洋調査データなど、様々なレガシーを残しており、決して無駄な投資ではなかったはず。

もしかしたら、近い将来、全ての条件が整ったところで、採鉱計画も再開されるかもしれません。

2021年現在、Nautilus社の企業資産は、Deep Sea Mine Finance(DSMF)社が引き継いでおり、公式サイトやYouTubeに採鉱計画の概要が僅かに残るのみです。

参照記事

採鉱システムの概要と洋上支援船

こちらは深海底での採掘のプロセスを描いたプロモーションビデオ。
洋上の支援船から、採掘用の重機を海中に降下し、フレキシブルホース、水中ポンプ、揚鉱管(ラザーパイプ)を経由して、海底の鉱物が洋上の支援船に揚収される過程が描かれています。

本作では、石油プラットフォームのような半潜水式リグとして設定していますが、Nautilus Minerals社の採鉱モデルでは、『PSV(Production Support Vessel)』(生産支援船)という作りになっています。

2010年にオフィシャルサイトで公開されていた株主・投資家向けのPDFパンフレット『Offshore Pro0duction System Definition and Cost Study』では、下図のようなプランになっています。

現在はネット上より削除されているので、閲覧のみです。(Google Drive)
(275ページにわたる冊子なので読込にご注意下さい)

Nautilus Minerals社の海底鉱物資源 採鉱システム Offshore Production System Definition and Cost Study

Production Support Vessel (Production System / Equipment Description)』に関する記述は170ページから、詳細に紹介されています。

How a Canadian company will mine the sea bed near Papua New Guinea

破砕機・集鉱機・揚鉱システム

上記にもあるように、Nautilus Minerals社の採鉱システムは、海底鉱物資源を基礎岩から剥がして破砕する二種類の『破砕機』、破砕した鉱物を集める『集鉱機』、集鉱機から洋上の支援船に揚収する『揚鉱管(ライザーパイプ)』『水中ポンプ』から構成されます。

詳しくは、『破砕機・集鉱機・揚鉱管・水中ポンプの概要』をご参照下さい。

オフショア(洋上プラットフォーム)の暮らし

洋上プラットフォームの仕事や暮らしは、英語圏では、『OFFHORE(オフショア=沖合)』で表され、YouTubeなどで、「offshore life」で検索すると、様々なPRビデオを視聴することができます。

以前は、個人がスマホで撮影したプライベート動画が多かったですが、近年は、プロモーションと求人を兼ねた、ハリウッド映画のような高品質の企業ビデオが増えました。

日本には石油リグが存在しない為、なかなかイメージしにくいですが、北海やメキシコ湾など、海底油田の掘削が盛んな地域では、かなり高収入な仕事で知られています。2015年に調べた時は、一般の技術職でも平均年収600万円~700万円、マネジャークラスになれば、軽く1000万円を超えます。(ただし洋上施設に拘束される期間は長い)

下記の動画は、洋上での暮らしを描いたエクソンモービル社のプロモーションビデオ。
プラットフォームの全体像をはじめ、タワーデリック、クレーン、ヘリポート、オフィス、オペレーションルーム、アコモデーション(ランドリー、食堂)など、内部の様子が詳細に描かれています。
なんと音楽室もあって、楽器演奏も可能なんですね。

一般に、プラットフォーム職員は、数ヶ月から半年、洋上に拘束される為、従業員のストレスが溜まらないよう、様々な工夫がなされています。石油施設というよりは、海上ホテルのような快適さです。現在はITも発達して、家族ともSkaypeなどで話せるので、昔のような疎外感や隔離感もないかもしれないですね。

Life on an Oil Rig Behind the Scenes | ExxonMobil

JOGMECの採鉱システム

日本では、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構[JOGMEC]が地道に研究開発を続けています。
2019年には海底熱水鉱床の連続揚鉱に成功しており、ぜひ実現して頂きたいところです。

海底熱水鉱床の連続揚鉱に成功

【小説】 採鉱プラットフォーム ~洋上のギルド工場

『海洋小説 MORGENROOD -曙光』では、ファルコン・マイニング社から解放を目指す特殊鋼メーカーの雄、アル・マクダエルが、海の星アステリアのローレシア島沖に採鉱プラットフォームを建造し、接続ミッションの為にスカウトした潜水艇パイロットのヴァルター・フォーゲルを初めて連れて行く場面を描いています。

ステラマリスでは何度も海底鉱物資源の採掘に失敗しただけに、ヴァルターも半信半疑でしたが、石油リグのように立派な施設に圧倒されます。彼は初めてアルと出会った時、海底鉱物資源の採掘には否定的でした。
参照→ 生命の始まりは微生物 ~今日の利益か、数億年後の生命か
後に協力的になります。

Kindleストア

上記のパートは、『第1章 運命と意思』に掲載されています。
ストアで立ち読みもできますので、興味のある方はお気軽に覗いてみて下さい。

誰かにこっそり教えたい 👂
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