レッド・ツェッペリン『カシミール』について
レッド・ツェッペリンの印象的なイントロといえば『天国への階段』が圧倒的に有名だが、それに負けず劣らず、強烈な印象を残すのが、異国風の『カシミール』だ。
1975年に発表され、演奏時間は約8分30秒に及ぶ。
時間と空間を旅するこの曲も、『天国への階段』に似て、宇宙的な広がりを感じさせる秀作である。
歌詞付きの動画はこちらからどうぞ。 https://youtu.be/sfR_HWMzgyc
Spotifyでも無料で視聴できます。(リンク先は『カシミール』ですが、アルバムごとOK)
https://open.spotify.com/intl-ja/track/6Vjk8MNXpQpi0F4BefdTyq?si=ab47969663204d79
■ 商品情報
ツェッペリン史上初の2枚組オリジナル・アルバムにして最高傑作と呼び声の高い名盤を
今回もジミー・ペイジによる最新リマスタリングでリリース。
完全未発表の貴重な音源を追加収録したボーナス・ディスクや、
ブックレット、DLカードなど特典満載の超豪華限定BOXなど、第3弾も3パッケージで同時発売。
音楽の要はメロディラインにあり
『Kashmir』を聴いていると、私たちは『アーティスト』を聴いているのではない。
『美しいメロディ』に耳を傾けているのだと、当たり前のことを思い出さずにいられない。
アーティストだから、美しいメロディを作るのではなく、美しいメロディを作るから、『アーティスト』と呼ばれるのだと。
昨今は、どうやら、このあたりが逆転して、売る側も、リスナーも、「音楽」ではなく、「アーティストを聴く」という認識に変わってきているような気がする。
とにかく、パッケージにアーティストの名前を付ければいい。
曲の内容など、実はどうでもよく、常に新しいものを提供して、世間の関心を繋ぎ止めればいい。
……そんな感じ。
しかし、音楽市場がどうあれ、音楽の要はやはりメロディラインだ。
たとえ、バンド名や曲のタイトルは記憶に残らなくても、一度、耳にすれば、忘れられない曲がある。
『Kashmir』も、まさにそんな曲の一つで、冒頭のギターソロの段階で、釘付けになる。
誰が歌っているのか、今も人気なのか、そんな事はどうでもいい。
ただただ、メロディの美しさに引き込まれる。
プロの作る音楽は、本来、そういうものだと思うのだが、どうも、近頃は、スピードばかりが求められているような気がしてならない。
売り出すのも早ければ、忘れ去られるのも早く、数年経てば、人の口にも上らない感じだ。
その時、その時、ヒットチャートを席捲するのも大事だろうけど、『カシミール』のように、印象的な曲を一つでも残せば、伝説になる。
さながらA-haの『Take on Me』みたいに。
一発屋でもいいじゃないか。
何年、何十年の長きにわたり、塵が積もるように、売り上げ、語り継がれる曲もある。
アーティストの原点に立つならば、不滅の曲こそ、真のヒット曲ではないだろうか。
【コラム】レコード盤とよき音楽の永劫回帰
追記 2019年12月6日
その昔、レコード盤には物語があった。
A面の一曲目は、ドヤ顔のオープニング。
華やかな曲もあれば、重厚な曲もある。
二曲目、三曲目は、しっとりと。
ちょっと意表をついた感じで、
ああ、こんな曲も作るのかと、アーティストを見直す。
A面の締めは、たいてい力作だ。
そこにアーティストの意気込みを感じることもある。
A面が終われば、レコード盤をひっくり返して、B面。
この作業が儀式のように厳かだったりする。
B面はがらりと雰囲気が変わって、バラード調。
たまに地味で、物足りないこともあるが、
作り手の苦心(疲れ)が垣間見えるのも、たいていB面の半ばだ。
最後の締めは、宇宙的。
ああ、今回は、こういう世界観でやりたかったのかと納得し、
次作を楽しみにすることもあれば、
このバンド、大丈夫か?? と不安を覚えることもある。
だって、前作と、全然雰囲気が違うんだもん(・ω・)
それでもA面の一曲目から通して、B面の最後の収録曲まで聴き終えると、
音楽アルバムといえど、ドラマなのだとつくづく思う。
絵本や小説みたいに、くどくど説明がなされているわけではないけれど、
そこには必ず作り手の美学があって、適当に並んでいる曲順は一つとしてない。
どの曲を一番に持ってくるか、
どの曲で締めるかで、
アルバムのイメージはがらりと変わる。
A面に入れるか、B面にずらすか
慎重になるのは当たり前。
このように聞いて欲しい、というアーティストの願いもある。
物語のページを繰るように、一曲、一曲、追いかければ、
一度も会ったことのないアーティストでも、
どんな哲学を持っているのか、
どんな大志を出しているのか、
何となく分かるものだ。
しかし、そんなA面&B面物語も、今はCD一枚に収まるようになり、
動画サイトや音楽配信の普及で、とうとう切り売りの時代になってしまった。
聴く方は楽しいが、
物語全体を理解してもらえないアーティストは忸怩たる思いだろう。
ある日、突然、曲だけが、ポンと生まれてくるはずもなく、
昨日から今日、今日から明日へと続く想いの中で、
一つ、また一つと、形を成していくものだからだ。
そんなドライな風潮に反抗してか、再びレコード盤が人気だという。
少しくぐもったような音質や、A面からB面にひっくり返す儀式が、
今のデジタル世代には新しいからだろう。
となると、昔、音楽配信やCD以前、
アルバムの物語性を意識しながら曲を作っていた、
60年代から80年代のレジェンドはこれから先も長く続く。
どんな世界も、いいものは滅びない。
さながら太陽が巡るように、何度でも、何度でも、この世に姿を現す。
レコード盤とよき音楽の永劫回帰。
初回公開日 2014年12月3日
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