私は恋なんてしたくない、でも恋してしまった
私は恋なんてしたくない。
でも恋してしまった。
この恋には入り口も出口も無い。
その悦びの果てにあるものは、深い悲しみと別れだけ。
いつの日かまた涙して、恋したことを悔いるだろう。
それでもいい。
今一瞬の悦びを追い求めていたい。
永遠に心に刻まれるだろう、この一瞬を。
人を恋するのに理屈なんかいらない。
気がついた時には、心に棲みついている。
私はただ戸惑いながら、恋したことに気づくだけ。
理屈なんてない。
朝に夕に君のことを想う。――君のことばかりを。
たとえその果てにあるものが、深い悲しみと別れでも
今一瞬の悦びに生きる。
’98 Autumn…
Clair de Lune
私の密かな吐息
世界で誰も知り得ぬ想いを
月が代わりに語ってくれる
夜
私たちは怯えながら
身を寄せ合い
言葉にならぬ言葉を交わした
この恋は 誰も知らない
知られてはならない
秘密が心を燃やし
沈黙が愛をいっそう貴くする
ひりひりと風が吹きすさぶ中
夜闇だけが優しかった
二人の恋を守ってくれた
見上げれば月が輝く
甘い苦しみにも悦び満ちて
Clair de Lune
私の密かな吐息
世界で誰も知り得ぬ想いが
今日も地上に滴り落ちる
初稿:2002年5月1日
Liebe (愛) 世界であなたほど愛している人はないから
世界で あなたほど愛している人はないから
だからこそ
あなたに「愛している」と言う訳にはいかない
愛は
愛する人を苦しめるためでなく
ただ ひたすら愛するためにあるから
そして
この不条理こそが『人の世』なのだ
愛の極で 私が見たのは
我が身を縛る法則と
一切から解き放たれた
『死』のような気がする
’98 Autumn…
Fall in Love 不幸な恋と哀れな女
今 私ほど不幸な女もないだろう
空は灰色
地には空っ風
憂鬱以外 何もありゃしない
恋に憑かれてからというもの――
恋は一瞬にして
心の平安を奪ってしまった
今じゃ希望も悦びも
あなたなしには あり得ない
あなただけが唯一私を救うことができる
哀れな私 哀れな恋
もう一度 何も知らなかった頃に戻れたら!
空は灰色
地には空っ風
憂鬱以外 何もありゃしない
恋に憑かれてからというもの――
Fall in Love ~恋というもの~
自分の気持ちに気付いてから
来る日も 来る日も
溜め息ばかり
寝ても 醒めても
何をしていても
だって どこにも答えがない
この想いが
何処へ行くのか
いつまで続くのか
先にあるのは
悲しみなのか 悦びなのか
いつか ため息にうもれて
死んでしまいそう
君への想いを胸に抱いたまま……
初稿:1999年秋
恋とは、隠しきれるものではないから~
『恋とはひっきょう隠しきれるものではない』
想いは必ず心から言葉、心から瞳にあふれ出る
そして心から心へと伝わっていく
黙っていても眼差しは正直だ
眼差しの先にはいつでも恋する人がいて、
その姿を追いかけている
視界から消えても、まだ追い求めている
他人が二人の間を覗き見る時、
この世から二人以外のものはすべて
消え去ってしまえばいいと思う
誰もこの恋に気づかなければいいのに……と
今はただ秘めやかに
心を交わす
想いあふれるままに
’98 Autmun…
※ 「恋とはひっきょう隠しきれるものではないのだ」というのは「トリスタンとイズー物語」の一節です。
愛と死の世界・ワーグナーの楽劇『トリスタンとイゾルデ』に酔う / ルネ・コロ&カルロス・クライバーの名演
好きになってもいいですか。
好きになってもいいですか。
気付いた時は、どうしようもなく
あなたにひかれてしまっていたのです。
あなたの仕草。
あなたの吐息。
あなたの足音。
あなたの眼差し。
あなたのすることで、
私の心をふるわさないものは何一つありません。
あなたという人が、ただ存在するだけで、
すべてが悦ばしいのです。
許されるなら、いつまでも、
あなたの姿を見ていたい。
ただ、私の目に映るだけで、
たとえようもなく幸福だから。
初稿:2005年1月5日
恋だけが、真の意味で、人間を完全にする
恋は、異質世界との融合だ。
「異性」という、異質の人間との遭遇――
「情熱」という、未知の感情との遭遇――
「自分」という、自身でさえ気付かぬものとの遭遇――
『異』なればこそ、憧れ、欲する。
心と身体の≪何か≫を満たそうとして。
恋は変え、恋は解き放つ。
この『魂の変容(メタモルフォーゼ)』こそ、恋の本質と見た。
恋だけが、真の意味で、人間を完全にする。
私たちは皆、片翼の鳥なのだ。
記:1998年秋
Finamor -至純の愛-
この世に残された最後の純愛は、道ならぬ恋という。
お互い、何の打算も駆け引きも無く、
ただ互いの魂だけを見詰めて、引かれ合うからこそ、
純粋に燃焼できるのかもしれない。
愛極まれば、死に至る。
それはまた人間に残された最後の神話でもある。
初稿:1999年11月28日