人は言葉によって、自身の考えや欲求や感情を表し、相手に伝えることができます。
その逆もしかり。
一言といえど、そこには、発した人の心があり、動機があります。
言葉とは、全人的な存在なのです。
もし、何かの原因によって、言葉に不自由が生じたら、人はどんなストレスを感じるでしょうか。
外国語が通じない、身体的な問題がある、精神的なプレッシャーから言葉を発せない、等々。
自分の言わんとすることが誰にも通じなかったら、大変な孤独と疎外感を覚えるでしょう。
あるいは、自身の意思も欲求も思うように伝えられない為に、自尊心が傷つくかもしれません。
言葉は、どんな些細な一言であっても、その人の心髄に直結しているのです。
ここでは、心理的なプレッシャーから、幼稚園で話せなくなった息子の状況を描いています。
息子の言葉の問題を直そうと、父親は必死で駆け回りますが、状況はひどくなるばかり。
そんな中、独特の言語療法をほどこすオステルハウト先生に出会います。
そこで学んだのは、「自分を好きになること」。
言葉に問題があっても、能力的に劣っても、自分を好きでいる気持ちが子どもを幸せにするのです。
スキャットマン・ジョンと英国王のスピーチ
天才シンガー スキャットマン・ジョン
緘黙症とは異なりますが、言葉の問題で真っ先に思い浮かぶのが、天才シンガーのスキャットマン・ジョンです。
心が壊れるほどの吃音に苦しみ続けたジョンは、自らの弱点をスキャットに活かし、スピード感あふれる独特の音楽を作り出しました。
私も初めて聞いた時は、器用なおじさんがペラペラ歌ってるだけかと思いましたが、エピソードを知って感動。
世界的なヒット曲、Scatman (Ski Ba Bop Ba Dop Bop)も一度聞いたら忘れられないです。
現在は、YouTubeなどで、特訓の様子を積極的に公開されている方もあり、当人や社会の意識も大きく変わってきたように感じます。
映画『英国王のスピーチ』
映画ではアカデミー受賞作『英国王のスピーチ』が非常に印象的でした。
吃音に悩む英国王ジョージ6世が言葉の問題を克服し、国民の心の支えとなる過程を描いた感動作です。
当時の英国でさえ、まともに治療できる専門家は少なく、煙草を吸ったり、ビー玉を口に含んで発声の練習をしたり、めちゃくちゃな指導をする人もあったようです。
どれほど人柄がよく、知能に優れても、喋りが下手だと、実際の能力や実年齢よりも低く見られるもの。言葉の違う外国で苦労する移民がそうですね。
それはそのまま差別や孤立に繋がる為、何の問題もない人が想像するより、事態はずっと深刻です。
『英国王のスピーチ』は本人および家族の心理的な葛藤も上手に描いており、主演のコリン・ファースやジェフリー・ラッシュ、ヘレン・ボナム・カーターが素晴らしいです。
一番印象に残っている場面は、シェイクスピアの『ハムレット』の名句「To be, or Not to be, That’s is question」を朗読する際、普通に読み上げた時は吃音がひどかったのに、ヘッドホンで大音量で音楽を聴きながら朗読すれば、よどみなく読めた場面です。
つまり、自分の喋りを意識すると、余計でつっかえてしまうんですね。
「生まれながらに吃音の子などない」という所以です。
ジョージ6世の場合、厳格な父王と、王位に対するプレッシャーが引き金でした。
無理に左利きを矯正したり、足を真っ直ぐにする為にギプスを装着したり、ほとんど虐待みたいな扱いが大きな原因だったようです。
ちなみに本作のヴァルターは吃音ではなく緘黙症とディクレシアの混合型です。非常にシャイで、文字を読むのが苦手です。
これも人によって、いろんな事例があります。
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言葉と自尊心をテーマにした小説のパートです。
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