現実の世の中が――自分の立場からみて――どんなに愚かであり卑俗であっても、断じて挫けない人間。
どんな事態に直面しても「それにもかかわらず!(ダンノッホ)」と言い切る自信のある人間。
そういう人間だけが政治への『天職(ベルーフ)』を持つ。
ウェーバー『職業としての政治』より
『政治』というと、みな、特別なものを思い浮かべますが、村の果樹園で収穫できた林檎をどのように村人に分配するか、考えるのが政治で、皆の代表者として切り盛りするのが政治家です。村人が十人なら、話し合いのしようもありますが、一万人もいれば、話し合いのしようもないからです。
そこで、代表者を選ぶのが選挙、林檎や果樹園の取り扱いについて、ある程度の決まりを設けるのを法律と考えれば、政治家とは何か、自ずと理解できるのではないでしょうか。
そこで、ウェーバーの言葉ですが、何百年と受け継がれた果樹園の仕組みについて、疑いもせず、学びもせず、ただ頷くだけでは、林檎の収穫もどんどん落ちていきますし、腹を空かせた村人を幸せにすることはできません。
変えるべき事は、変える。
改めるべき事は、改める。
現実の歪みに対して、何の働きかけもできないなら、政治家の意味がありません。
政治は、妥協とは対極のものです。
たとえ現実は簡単に動かぬと分かっても、「それにもかかわらず」、改革に向けて働きかけることができるのか、政治家に最も必要とされる資質です。
――というのが、ウェーバーの言葉の意味ではないでしょうか。