冨田勲の『惑星』と宇宙を旅する シンセサイザー音楽の真髄

子供の頃、私の宇宙の入り口と言えば、「ギリシャ神話」「学研の科学」「プラネタリウム」「NHKスペシャル」「カール・セーガン」、プラス幾多のアニメ&特撮。それにロマンの味付けして、壮大に膨らませてくれたのが、宮川泰さんの音楽。交響組曲『宇宙戦艦ヤマト』に代表されるように、あの方のサウンドトラックはまさに宇宙そのもの。「イスカンダルのスターシャ」そのものの川島和子さんのスキャットも神がかっており、何度、暗がりで聞いて(→ここがポイント)、涙したことか。(ついでにレコード盤のプチプチというノイズが宇宙神を思わせるんですよね)

「ヤマト」に関しては、無節操な続編に裏切られましたが(今でも怒ってます)、宮川さんの音楽は俗世の思惑をはるかに超えて、イスカンダルの果てまで続いている。

マスターテープの問題とか、著作権の問題とか、いろいろ言われてなかなか再販されない、この交響組曲サウンドトラック盤。マーケットプレイスで6000円とか8000円の高値がついても「欲しい!」というコアなファンがいることを見ても分かるように、ヤマトがあそこまで成功したのも宮川さんの素晴らしい音楽があっての話なんですよね。

↓ 私もレコード針がすり減るほど聴いた。
YAMATO SOUND ALMANAC 1978-II「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち 音楽集」

そんなヤマトからもう一歩、足を進めて出会ったのが冨田勲さんの『惑星』。

かの有名なホルストの管弦楽曲『惑星』をシンセサイザー音楽にアレンジしたものです。

この分野の第一人者であり、日本を代表する作曲家でもある冨田さんの『惑星』は、1977年に発表され、世界的に高い評価を得たものの、日本ではなかなかCD化されず、幻の名曲となっていました。

私なんか、ホルストの管弦楽曲を聞く前に冨田さんの『惑星』を聞いてたので、初めてホルストを聴いた時、「なんや、ロケットの音が入ってへん」と思ったぐらい。

こちらのジャケットは、私の姉が買ってきたLPレコードの紙ジャケットと同じ。
確か、このイラストを手がけた人もとても有名なアーティストだったと記憶しているのですが、ちょっと情報が見当たりません。
「宇宙のカブトガニ」のようなデザインが子供心に衝撃でした。

ホルスト:組曲「惑星」

目次 🏃

冨田勲の『惑星』より お気に入り

『惑星』は、次の5つの楽章から構成されています。(1976年にリリースされたLP盤の構成。最新盤はちょっと違っています)

1. 火星 ~戦争をもたらすもの~
2. 金星 ~平和をもたらすもの~
3. 水星 ~翼のある使者~
4. 木星~土星
5. 天王星~海王星

MARS 火星

やはり圧巻は『火星』。まるでNHKスペシャルのオープニングのようなシンセサイザーの響きに始まり、懐かしいオルゴールのサウンドが現れ、次に宇宙飛行士の交信のような「ビビデバ バビデバビババブ」というマイク音声や宇宙ロケットの発射音が次々に重ねられていく。これはアレンジというより、シンセサイザー音楽のオリジナルといっても過言ではないくらい。

ああ、そう、本当に火星人がいるとしたら、こういう音楽を聴いてるに違いない、と納得。

ボレロ風の「ダダダダン、ダン、ダダダン」の部分も、ホルストの管弦楽は軍団の進撃みたいだけども、冨田さんの火星は「争いの神」というより人類の足音。宇宙に向かって飛び立つの。

いつか火星にも行けるよね、きっと。

VENUS 金星

こちらはシンセサイザー音楽の魅力がいっぱいに詰まった『金星』。
ホルストの管弦楽も綺麗だけど、冨田さんのは宇宙的な広がりと透明感に満ち、まさに明けの明星を思わせる。
「ミミミ~ミミ~」という口笛のような高音が素敵。それと対照的ににホロロロ~と下がってくる音階が流れ星みたいで。

ホルストの『金星』。実際の金星は分厚いガスに覆われ、気温500度にもなる灼熱地獄なんですけどネ。

「銀河旋風ブライガー」で金星都市が出てきたけど、「さすがに、それはあり得んやろ」と子供心に思ってた。

こちらはギリシャ(&ローマ)の大神ジュピターをイメージした『木星』。
でも有名なのは、イギリスの民謡風の第4主題ですよね。
ここで「ビビバボ」おじさんのマイク音声が挿入されているのがポイントです。
宇宙を旅する人が地球を懐かしむとしたら、きっとこのパート。
ビビバボおじさんは、通信環境の悪い中、地球の総司令本部に「家族は元気か?」と尋ねているのでしょう。
……ほら、交信が終わると、最後にエンジンを噴かせて、超高速運航に入ったでしょ?
あの最後のシンセサイザーの音は異空間の響きですよ。

出た先は、マゼラン大星雲?

いえいえ、もっと遙か彼方。オリオン星雲と暗黒星雲がとけあう所です。

でも、エンジン不調っぽくて、異次元の藻屑と化した。

そういう終わり方です。

ホルストの『木星』は第4主題が素晴らしい。英国の愛国的な賛歌として広く歌われている“I vow to thee, my country”(我は汝に誓う、我が祖国よ)は、この主題に合わせて作られたとのこと。(Wiki→
望郷の念を思わせる、遠く、懐かしい響きです。

「こんばんは、夜のNHKニュースです」的なエンディングも秀逸。

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ホルストの管弦楽も名盤ぞろいですが、これはすごく好みによって評価が分かれます。
まるで映画のBGMのような演奏もあれば、知的にまとめているものもあり、いろいろ視聴してから選ぶ方がいいですよ。

私はジェームズ・レヴァイン盤の『惑星』を持っていました。大月シンフォニアのお兄さんに「一般向けの無難な演奏が好みなら、これがいいよ」とすすめられたので。レヴァインらしい明朗快活な演奏です。

一番人気は小澤征爾さんみたいですね。

自分の好みをパーフェクトに満たしている演奏はさすがにないですし、どの曲にポイントを置くかで決めたらいいと思います。

私はやはり「火星」と「木星」かな。

それにしても、今のリスナーは何でも視聴できていいですよね。ほんの10年前までネットであれこれ視聴なんて出来なかった。音楽雑誌のレビューや指揮者&オケから内容を推測するしかなかったから、当然ハズレもあり、そのせいで、理想の演奏に行き当たるまで、いろんな演奏家のCDを何枚も買い込んだものデス(涙)。

私のようなリスナーがたくさんいたから(特にクラシック業界)、昔は、レコード業界も繁盛してたんじゃないかナ。

専門店の店員さんとのやり取りも楽しかった。
趣味の延長で仕事してるような店員さんや、「うちはコレしか置かへん」みたいな中古レコード店の親父とか、いろんなお店があって、聞けば何でも教えてくれました。
また店に出入りする客も頭の先から足の先までマニアックな香りがプンプンして、店員相手にウンチクたれて、「困らせるのが生き甲斐」みたいな人もちらほら。

でも、後にも先にも、10万円のポイントカードを数ヶ月で満杯にしたのは「大月」だけだったワ。。。。

ええ時代やったな。

誰かにこっそり教えたい 👂
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