人と社会– tag –
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中国の台頭と移民社会の未来を描く 映画『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』
80年代、21世紀の中国台頭について予見していたマイケル・チミノ監督のアクション映画。ニューヨークのチャイナタウンを舞台に昇竜の如く勢力を伸ばすチャイニーズ・マフィアとNY市警の死闘を描く。コラム「移民社会は国家より強し」と併せて。 -
人間と猿の違いは『No』と言えること 『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』
人間を超える知能を持つに至った猿のシーザーは危険動物とみなされ、動物施設に収容される。飼育館から虐待されたシーザーは『No』と叫び、仲間を引き連れて脱走する。Noは尊い意思表示であり、人間関係を円滑にする魔法の言葉でもある。 -
南北分断の悲劇と願いを描いた 韓国映画『シュリ』 ~自由に行き来する魚のように
韓国情報部の捜査官と北朝鮮工作員の女性の恋を中心に、南北分断の悲劇と願いを描く娯楽アクション。韓国では映画『タイタニック』をしのぐ大ヒットとなった。作品の魅力を画像付きで解説。「国家よりコンテンツ」の若い世代が世界を変えていくのではないか、というコラムと併せて。 -
オンライン漫画と貧困と子供の娯楽について ~もはやネットは無料では十分に楽しめない世界
近年、漫画も紙本ではなく、スマホのアプリやオンラインストアで読むものになった。 土曜の午後になると、比較的、親ルールの緩い友人宅に集まって、互いに持ち寄ったコミック本を日が暮れるまで読み耽ったのも遠い昔。 今では友人宅に集まるのはもちろん、ツーといえばカーのような趣味嗜好の合う仲間を見つけるのも難しいだろう。 漫画・音... -
インシャアッラー 全てを神の御心に委ねて 映画『デビルズ・ダブル -ある影武者の物語』
サダム・フセインの息子で、ブラック・プリンスと言われたウダイの影武者を務めたラティフ。ウダイの蛮行に苦しむラティフに、父親は「我々が無力でも、いつか必ず神の裁きが下る。お前が自由を得ることで、私が死ぬことになっても、それは神のご意志だ。インシャアッラー(すべては神の御心のままに)」と励ます。 -
映画『フロスト×ニクソン』 元大統領は謝罪するのか? 世紀のインタビューを描く
悪名高いウォーターゲート事件の中心人物として現役中に弾劾されたニクソン大統領と、真実を突き止めるべくインタビューに挑む人気司会者のフロスト。真実を語ることで復帰の足がかりを永久に逸したニクソンは、政治家としては完全に終わったが人として救われた。迫真の政治ドラマの見どころを解説。 -
『親の書いた作文で賞をとり、親が書いた絵で賞を取り』 利己的なエリート教育の末路
はじめに ~避けられなかった悲劇 2008年、東京・秋葉原で起きた通り魔事件の第一報を聞いて、一番に思ったのは、「日本はこの10年間、何も学んでいない」ということでした。 90年代半ばから、高学歴の若者を中心としたカルト教団のテロ事件、17歳による凶行、お受験殺人など、多くの課題が投げかけられてきたにもかかわらず、またも似たよ... -
マリー・アントワネットの負けの美学 ~オーストリア女に生まれ、オーストリア女として死す
フランス王家に嫁いでも、死ぬまで「オーストリア女」とみなされ、革命においては憎悪の対象となったマリー・アントワネットの無念と、安達正勝氏の著書より最後の様子を紹介。美しく負けることにこだわったマリーの生き様が感じられます。 -
鉱業問題が手軽に分かる ゴルゴ13『コルタン狂想曲』 / タンタルと携帯電話
バッテリー性能に優れた携帯電話を量産するには材料となるタンタル(コルタン鉱石)が不可欠だ。だが産出国・コンゴ共和国では民族紛争や武力抗争が続き、安定供給が難しい。メーカーの依頼を受けて、岩國氏はゴルゴ13に武力組織の抹殺を依頼するが、意外な結末が待ち受ける。コラム『鉱物資源は産出国の人々を決して幸せにしない』 -
テクノロジーによる格差社会を描く『銀河鉄道999』~永遠の命(機械の身体)を求める人は案外幸せなのかも
『銀河鉄道999』では機械化人間が永遠の命を得るが、それを欲する人は幸福な人ではないかという心のコラム。テクノロジーの発達による格差の拡大に関する社会的考察と併せて。『銀河鉄道999』が描く格差社会 / スティーブン・ホーキングの「技術による格差」 -
大人の優しさって何だろう 『秘密戦隊ゴレンジャー』 ユニークな仮面怪人と制作裏話
昭和の子供を熱狂させた戦隊ものの元祖。『ストーブ仮面』や『パイナップル仮面』など毎回ユニークな仮面怪人が登場し、制作スタッフの熱意と気づかいが伝わってくる。解説本『ゴレンジャー大全』のインタビュー記事には役者やスタッフの子供に対する気づかいが感じられる。コラム『大人の優しさって何だろう』と併せて。 -
バブル期の日本の強みと若者への願いを描く 劇画『サンクチュアリ』 池上遼一 / 史村翔
1990年代、バブル景気に湧く日本社会を舞台に、カンボジア大虐殺を生き延びた北条と浅見が、裏と表から日本のサンクチュアリに挑む。唱和の一党支配や金権政治を知る上でも参考になる政治ドラマの傑作。日米自動車競争の折、日本社会の強みについて語る浅見の言葉が印象的。 -
漫画『DEATH NOTE』 なぜ人を殺してはいけないのか
DEATH NOTEによって死神の力を手に入れた優等生・夜神ライトは、世直しと称して悪人の削除を繰り返すが、最後は手当たり次第に邪魔な人間を抹殺する大量殺人犯となる。「非凡な人間は法をも超える権利を有する」というドストエフスキーの『罪と罰』の世界観を交えながら、人が一方的に人を裁くことの危うさを説くコラム。『 優れた人間が悪い人間を削除していい、という考え方』『ライトの考えは独裁と同じ』『裁きは神の領域 ~神だけが本当の善悪を知っている』 -
それでも幸福は金で買える 映画『ウルフ・オブ・ウォールストリート』
儲けにプラスアルファで再投資。それを何度も繰り返す。すると客は金持ちになったと勘違いし、ますます株の売買にはまる。ウォール街の伝説ジョーダン・ベルフォートの金銭哲学と逮捕までの日々を過激に描くマーティン・スコセッシ監督の話題作。真面目に働くのが馬鹿馬鹿しくなるウォール街の名言を紹介。 -
法と支援の狭間 甘くない現実と愛を描く映画『チョコレートドーナツ』
歌手のルディは母親に置き去りにされたダウン症の少年マルコの監護者となり、恋人ポールと一緒に世話をするが、同性愛が発覚し、マルコと引き離される。法の狭間で翻弄される少年と支援の在り方を描く感動ドラマ。 -
社会正義とは相対的なもの ペルー日本大使館占拠事件と映画『ベル・カント とらわれのアリア』
若者ゲリラによるペルー日本人大使館占拠事件は全世界に衝撃を与えた。しかし銃を手にした若者は貧困と開発の犠牲者でもあった。あの時大使館で何があったのか。ゲリラのために涙した人々の水面下の事情を描くヒューマンドラマと「正義」に関するコラムを掲載。 -
ウェーバーの言葉 ~政治家とは「それにもかかわらず!(ダンノッホ)」と言い切る自信のある人間
現実の世の中が――自分の立場からみて――どんなに愚かであり卑俗であっても、断じて挫けない人間。 どんな事態に直面しても「それにもかかわらず!(ダンノッホ)」と言い切る自信のある人間。 そういう人間だけが政治への『天職(ベルーフ)』を持つ。 ウェーバー『職業としての政治』より 『政治』というと、みな、特別なものを思い浮かべま... -
詐欺師は他人にも詐欺行為を勧める イソップ寓話『尻尾のない狐』
なぜ尻尾のない狐は、尻尾の価値を否定し、他人にも尻尾がない事を勧めるのか。それは尻尾のない狐が増えた方が自分に都合がいいからである。同じ理屈が世間でもまかり通っていないだろうか。尻尾の価値を全否定する主張は要注意である。 -
政治の本質『三頭の牛とライオン』争いある所に
三頭の牛がいつも並んで草を食んでいた。ライオンがこれを捕まえてやろうと狙っていたが、三頭一緒では勝ち目がない。陰険な言葉と讒言で衝突を誘い、仲間割れさせてから、一頭ずつ切り離して、易々と平らげた。争いの影には勝者以上の利益を得ようとする狡猾な存在がある。 -
扇動政治家は祖国を内紛へと誘導する時、最も力を発揮する『水を打つ漁師』イソップ寓話集より
「しかし、こうやって川をかきまぜないと、俺さまが飢え死にせにゃならん」このように国の場合でも、扇動政治家は祖国を内紛へと誘導する時、最も力を発揮するのだ。ジョン・レノンのイマジンと併せて。