サハラ 死の砂漠を脱出せよ(2005年)
作品の概要
監督 : ブレック・アイズナー
主演 : マシュー・マコノヒー(ダーク・ピット)、ペネロペ・クルス(エヴァ・ロハス)、スティーヴ・ザーン(アル・ジョルディーノ)、ランベール・ウィルソン(イヴ・マサード)
あらすじ
南北戦争の末期。『甲鉄艦テキサス』は秘密の積み荷を搭載したまま、消息を絶つ。
海洋学者のダーク・ピットはNUMA(国立海中海洋機関)と共同で世界中に眠っている秘宝を探し出すトレジャー・ハンターであり、甲鉄艦テキサスは追っ手を逃れるため、アフリカの奥地に逃げ込んだと主張していた。
一方、ナイジェリアでは謎の疫病が蔓延しつつあり、WHOの美人医師エヴァ・ロハスは、パートナーのフランク・ホッパー博士と感染源と思われるマリに向かう。だが、マリではクーデターが勃発し、独裁者のカジーム将軍が実権を握っていた。
エヴァが暴漢に襲われた時、ダーク・ピットが救ったことから、二人は親密になり、行動を共にするようになるが、水質汚染にまつわる重大な秘密を隠匿しようとするカジーム将軍と大企業の経営者イヴ・マサードの共謀により、一行は命を狙われる。
果たして彼らは感染源を突き止め、甲鉄艦テキサスの謎を解くことが出来るのか――。
貧しい村にも銃がある
あまり期待せずに見始めたら、予想外に面白く、最後まで目が離せなかった。
甲鉄艦テキサスが秘密の鍵を握っているのかと思えば、決してそうではなく、その点はもう少しテキサスに活躍して欲しかったが、それでもアクションとしては満点。アフリカの武装勢力が登場するが、近年のハリウッド映画のように、辛気くさい政治論や弱者への忖度は一切なく、完全に勧善懲悪のコミックとして描ききっている点に好感が持てた。
何より、映画『マトリックス』シリーズのメロヴィンジアンを演じたランベール・ウィルソンがいい味を出している。決して目立つ役者ではないが、間抜けな小悪党を演じさせたら、ピカ一。マトリックスのメロヴィンジアンもそうだが、本作でも、お茶坊主みたいな悪徳・経営者を演じ、作品に爽快感を醸し出していた。
なぜ、あれほど間抜けなくせに、CEOにまで上り詰めるのか、首を捻りたくなるほどだが、それがメロヴィンジアン……いやいや、ランベール・ウィルソンの醍醐味。この方が登場すると、シリアス・ドラマでさえも、良い意味で「緩み」が生じて、ほっこりする。銃を構えて、「殺すぞ~」とヒロインを脅しても、全然怖くないどころか、(10秒後にはやられる)と先が読めてしまうのがポイントだ。制作サイドもそれを承知で使っているらしく、娯楽系アクション映画に欠かせない清涼剤の一つである。
また、ペネロペ・クルズやマシュー・マコノヒーが、これほどキレキレのアクションをするとは夢にも思わなかったし、何よりペネロペのスタイルのいいこと。ラストの水着姿も女神のようだ。本作をきっかけに、交際したこともあったようだが、頷ける話である。
本作では、独裁者・カジーム将軍に迫害される部族が登場するが、それもユーモアたっぷりに描いており、変に政治色が紛れ込まないところが好い。ラストのしっぺ返しや、高級車の小物使いも、非常に洗練されていた。
それにしても、今日食べるものにも不足するような貧しい村にも銃や弾丸だけは十分に揃っているのは、どういう訳なのか。
現実社会でもそうだが、衣食住さえままならない貧困地区でも、若者は立派な銃を携えていることが多く、そのお金はどこから出ているのだろうと考えることしきりである。
それだけの銃を買うお金があれば、村人の食糧や衣類に回せばいいのに・・と思うが、それだけの武装がなければ、たちまち襲撃されて、命を落とすからだろう。
彼らは、我々には想像も付かないような世界に生きていて、またそれを利用する勢力がある。
我々の正論など、所詮、きれいごとに過ぎず、地上の大半はサハラ砂漠のように殺伐としているのだろう。
それでも、こんな風にロケに入れば、幾ばくかのお金も入るし、現地の暮らしや文化も知ることができる。
実際、私もマリの町並みをじっくり見たのは、これが初めてである。
辛気くさい政治映画は困るが、明るいアクション映画なら、どんどんアフリカでもやって欲しい。
それが少しでも、現地の潤いになるならば、せめてもの罪滅ぼしというものだ。
政府高官が口にする、「誰もアフリカのことなど気にしない」という台詞が、妙に心に焼き付いた、アクション娯楽大作である。