男性は知っていることを言うが、女性は人を喜ばせることを言う。
人間関係において、話し合いほど不毛なものはない。
個人に限らず、社会全体に言えることだが、話して分かるぐらいなら、いちいち説明せずとも通じるはずだし、言葉を尽くしても通じないから、いつまでも平行線なのであって、何でも話し合いで解決するなら、とうに戦争も痴話喧嘩も無くなっているだろう。
「話せば分かる」は幻想だ。
期待するから、裏切られるし、腹も立つ。
考えの違う人とは、極力、距離を置く他ない。
なまじ相手の善性に期待し、馬でも空を飛ぶかの如く、期待を寄せるのが間違いなのだ。
それは男女の話し合いも同様である。
始まりはバラ色でも、最後には互いに失望するのは何故か。
それは、男性は知っていることを言うが、女性は人を喜ばせることを言うからだ。
男性と女性では、正解の基準が全く違う。
何かあると、男性は問題の箇所をずばり指摘するが、女性は違う。
いかに相手の尊厳を損なうことなく問題を解決するか、慎重に言葉を選び、状況を見極める。
男性にとっては、問題を訂正することが正解でも、女性の場合は、問題があろうとなかろうと、みんな仲良くが正義なのだ。
男性は知っていることを言うが、女性は人を喜ばせることを言うという価値観の違いがある限り、問題は永遠に解決しない。
そして、男性はなぜ女性が怒っているのか、まったく理解できぬまま、また本当の事を指摘して、再び喧嘩になるのだ。
男女は決して話し合うべきではない。
問題を乗り越えようとするのも間違っている。
正解は、問題が見つかっても、見て見ぬ振りをする。
気付いた方が、黙って直せばいいのである。
……と
ジャン・ジャック・ルソーが啓蒙したかは知らないが、『男性は知っていることを言うが、女性は人を喜ばせることを言う』というのは、まこと至言である。
あなたが、まだ男女間の問題が話し合いで解決できると幻想を抱いているとしたら、あと20年は離婚の危機に晒されるだろう。
昔から言うではないか。
愛とは一種の鈍さ、と。
人と付き合う時は片目をつぶれ。
賢く選び、間違いは早く忘れる。
ことばの花束―岩波文庫の名句365
古今東西の傑作(文学・哲学・随想)の名句が収められたアンソロジー。
私の中学時代の愛読書です。