恋が実れば、ロマンスも消える
恋を形而上に結びたかったのは、むしろ私の方かもしれない。
恋が実れば、ロマンスも消える。
ロマンスがなくなれば、創造の火も消える。
恋する者同志がカフェで向かい合い、
その想いの全てを語り尽くした瞬間、
恋の甘い苦しみも消えていくように。
触れるか、触れないかの、張り詰めた距離感が、
互いの存在をいっそう特別にした。
越えたいけれど越えられない禁忌が、
互いの希求をいっそうかきたてた。
「もっと一緒にいたい、だけど一緒にいられない」――
その餓えるような想いこそが、私とあの人の「恋」だった。
だからこそ言葉も生まれた。
満たされぬ現実を必死に埋めようとして。
伝えきれなかった想いは、これから別のものに向かうだろう。
それが一つの何かに結晶した時、私の恋も報われるのだ。
物語は未完の現実から始まる。
創造が無から何かを打ち立てていくように。
片言隻語
安心とともに、恋した日の感動も失われ、だんだん日常と化していく儚さを謳ったものです。