恋人の欠点ばかりが目につく人へ
このページを開いたあなたは、ほんとうは自分のものである性格上の欠点を、相手の欠点としてとらえています。
また、怒っているのはあなたなのに、怒っているのは相手だと思い込んでいます。これを心理学の用語で「投影」といいます。こういった思い込みは、自分では気がつかない場合がほとんどです。
たとえば、私たちは相手を非難するとき、悪いのは相手であり、自分は何も悪くないと思い込みます。怒っているのは相手。わがままなのも相手。弱いのは相手。消極的なのは相手。
退屈この上ないのも相手であり、扱いにくいのも相手であると決めつけるのです。
しかし、気がついていないかもしれませんが、相手の欠点を数え上げるとき、その欠点は自分のものである場合がほとんどです。自分の欠点を、相手に映し出しているのです。
たとえば、
「彼ったらすごく短気なんだもの、困っちゃう」
「うちの亭主はいつもガミガミ怒ってばかりいるのよ」
と夫や恋人を非難するとき、じつは怒っているのはあなたなのです。たとえ表情には出ていなくても、あなたが怒っているのです。
「夫が嘘をついている」
「彼はすごく意地悪だ」
と感じたら、嘘をついているのは、そしてほんとうに意地悪なのは、あなたなのです。
いま、あなたが相手のせいにしていることで、じつは自分の欠点であるものがありますか? 「怒っているのは、あの人じゃなくて、私なんだわ」と、気がつきましたか?
相手に投影して見ている自分の欠点に気がついたら、一歩前進です。これからは、相手を非難するのではなく、自分の欠点を直していきましょう。相手のことを怒りっぽいとけなすのはやめ、自分がほんとうは何に怒っているのかを考えましょう。
「投影」のよい点は、相手という鏡に映った自分の姿を見られることです。ですから、鏡の中の自分の姿をよく見つめてください。相手が怒っていると感じたら、自分の怒りを鎮めてください。すると不思議なことに、相手の怒りも消滅します。そのときに初めて、相手の本来の姿を見ることができるのです。
また、欠点だけでなく、自分の長所を相手の性格に見出すこともあります。あの人は勇敢だ、正直だ、信頼が置ける、思慮深い・・・・・・と、私たちが相手を褒めちぎっているとき、じつは自分の長所を相手に投影して見ている場合が多いのです。鏡に映った自分の美しい姿にうっとりしているようなものです。
ではなぜ、私たちは自分の性格を素直に認めず、相手の性格の中にわざわざ映し出すのでしょう?
それは、あなたの過去に関係しています。過去に、父親や母親に対して怒りを感じていた人が、その怒りを現在の夫や恋人にぶつけている場合もありますし、子どもの頃に虐待されていた人が、いまの夫や恋人にも虐待されるのではないかと疑いの目を向ける場合もあるのです。あなたがいま、夫や恋人に自分の問題を投影させて見ているのであれば、その問題を解決する努力をしてください。
自分の抱えている問題が明らかになり、解決できれば、ありのままの姿の相手を信頼し、深く愛し合うことができるのです。
出典 : あなたの欠点を相手の欠点にしない ~恋人の欠点ばかりが目につく人へ 『恋に揺れるあなたへ 56の処方箋』より
損得勘定は自分を卑しめるだけ
誰にとっても、自分を直視するのは辛いものです。
本当は自分が相手を嫌っているのに、「あの人は私を嫌っている」と相手を悪者にした方が自分は楽だからです。
誰の中にも、そうした部分は、大なり小なりありますし、そうして責任や負の感情を他人に転嫁することで救われている部分もありますから、一概に、それが悪いとは言えません。
しかしながら、それも度を超えれば、人間関係に大きな支障をきたします。
本当は自分が嫌いなのに、「あの人は私を嫌っている」と決めつけて、周りに言いふらせば、あなたは良くても、相手は嫌な気分になりますね。また、誰が見てもそんな風ではないのに、あなたが騒げば騒ぐほど、周りもウンザリしてしまいます。
誰しも自分を直視するのは辛いものですが、何でも相手のせいにするのと、自分で意識して行動を改めるのは大きく異なりますし、一足飛びに解決しなくても、周りに好感を与えることはできるでしょう。
損得勘定は、自分を卑しめるだけです。
自分だけが欠点を改めて、嫌なことも引き受けるのは、ずいぶん損な気もしますが、それと引き換えに得るのは、成長したあなたと、周囲の尊敬ではないでしょうか。
Projection 心の投影について
この章の原題は、Projectionです。
projection は、日本でもよく使われる project(プロジェクト)の名詞形で、「(スクリーンなどへの)映写」「(心理学用語としての)投影」の他、「見積もり」「見通し」「予測」といった意味があります。 [ジーニアス英和辞典第5版]
心理学用語としての投影について、下記に興味深い事例が紹介されているので、参考にどうぞ。
事例にもあるように、ある人に対する印象も、受け止め方によって大きく変わります。
その人は何気に言ったことも、敏感な人には、「きつい」「いじめられた」と感じられ、あまりに度が過ぎると、その人も、周りも悪者扱いされて困惑してしまいます。
Bさんがいらいら・もやもやさせられているのは、X先輩の言動ではなく、過去に起きたもっと別の事象や対象なのかもしれません。それを解消しないまま今に至ることで、目にするすべての物に対して、ほかの人に比べて常に不安が強かったり、信じられなかったり、いらいらしやすいのかもしれません。
こういう状態を放っておき、自分のケアをしないままでいると、これから先に起こることや会う人に対して良い印象を持つことができず、トラブルになりやすく、傷つき悩みやすくなるでしょう。
うつ状態で来院される方の中には、自分でも気が付かないうつに、この「投影」を客観視できていない場合がわりと多いものです。
とあるように、深刻な投影は、人間関係クラッシャーになりかねません。
自分もそうかもしれないと気付いたら、専門家の助けを借りてでも、良い方に持って行ったほうがいいと思います。