御存知の方もあるかもしれませんが、海外版の青空文庫『Project Gutenberg』(グーテンベルク・プロジェクト)で古典の名作の原書を無料でダウンロードすることができます。いわゆる、「世界文学」「哲学」の類です。ドイツ語やフランス語もあります。
Project Gutenberg
https://www.gutenberg.org/
たとえばオスカー・ワイルドならこんな感じ。
Project Gutenberg のすごいところは、文章だけを写し取るのではなく、ページをそのまま、挿絵付きで公開している点です。
(中にはテキストだけのものもあります)
この格調高い挿絵。まさに人類の遺産という感じ。
こうやってインターネット上に公開していれば、いつでも、誰でも閲覧することができます。
ネット以前は、現地の図書館にでも行かなければ、決して手に入りませんでした。
しかも、HTML版、EPUB版、KINDLE版と、様々なデバイスに対応するよう、ちゃんとファイル変換されている点が圧巻。
ネットというと、コミュニケーションだ、ステマだ、セルフブランディングだ、みたいな話になりがちですが、本来、こういうものの為に存在するんじゃないかと思ったりもします。
オーブリー・ビアズリーとアルフォンス・ミュシャを足して二で割ったような挿絵。
『オスカー・ワイルド』は、中学生の時、私が初めてトライした原書です。
『The Happy Prince 幸福な王子』が第一作目でした。
中学生の頃は辞書を片手に四苦八苦してましたが、私も成長したというか、なんというか・・今では辞書なしでさーっと読めるところが、私、ほんとに頑張ったよ!! という気分 (T.T) ハリウッド映画とスティングのおかげです。
今、改めてみてみると、こんなに平易な英文で書かれているんですよね。高校生でも辞書なしで読めるレベルだと思います。
ここが最後の場面。
王子の頼みで、彫像の宝石や金箔をせっせと町の困窮した人々に配っていたツバメがとうとう死期を悟り、最後にキスをして、その足下で息を引き取る場面です。
But at last he knew that he was going to die. He had just strength to fly up to the Prince’s shoulder once more. “Good-bye, 35 dear Prince!” he murmured, “will you let me kiss your hand?”
“I am glad that you are going to Egypt at last, little Swallow,” said the Prince, “you have stayed too long here; but you must kiss me on the lips, for I love you.”
“It is not to Egypt that I am going,” said the Swallow. “I am going to the House of Death. Death is the brother of Sleep, is he not?”
And he kissed the Happy Prince on the lips, and fell down dead at his feet.
At that moment a curious crack sounded inside the statue, as if something had broken. The fact is that the leaden heart had snapped right in two. It certainly was a dreadfully hard frost.
日本でも青空文庫が活用されていますが、根本的に「本」に対する愛情や、文化に対するリスペクトが違うように感じます。
青空文庫が、ではなく、全体的に、です。
ついでいえば、『本』に限った話です。(日本の伝統芸能や民俗を後世に残そうと努めておられる方も多いですから)
青空文庫でも文章は読めるけど、本って、装丁、挿絵も含めて、一つの芸術でしょう。
もしかしたら、活字や行間や章立てなど、目で見て楽しむ部分も大きいかもしれない。
青空文庫のように、「文章が読めればいいじゃないか」「ボランティアで勝手にやりたい人がやればいいじゃないか」というものでもないと思うんですね。
青空文庫そのものが間違いではなく、『青空文庫的なもの』に丸投げして、廃刊になったら廃刊になったで、そんなもん知らん、、という態度です。
そして、こういう時こそ、インターネットが集合知だか、情報の宝庫だかで活用されるべきなのに、なんというか、日本はここまでやらないんですよね。権利の問題があるのも分かるけど、どんな優れた作品も、人目に触れなければただのゴミと思いません?
図書館があるから、いいじゃないか、という考えなのかもしれませんが、それこそインターネットの利便性、公共性は、建物よりはるかに勝る部分がある。
ebookで、Kindleでも、Android端末でも、手軽に読めるようにすれば、もっと多くの人がその作品にリーチできるのです。
分厚い本を何冊も抱えて行き帰りする手間も省けるし、どこに、どんな本があるのかも分からない、巨大な書架の前をうろうろして、時間を無駄に過ごすこともない。
検索で、一発で取り出して、瞬時に中身を確認できる。
これが本当の文明の利器であり、人類の遺産の共有と思うのですが。
私も初版の「黒蜥蜴」や「人間椅子」とか見てみたいし(挿絵とか、どんなだったんだろう)、当時、どんな人が寄稿したりしていたのか、知りたいからね。
羨ましいですよね。
この本のURLは http://www.gutenberg.org/ebooks/30120
これは「ナイチンゲールと薔薇」の挿絵。
こちらは「わがままな大男」の挿絵。
絵だけでも十分に美しい。
こういうの、ebookという形でも、大勢の目に触れさせる事は、それだけで価値があると思います。
Project Gutenberg の作品は、学校の教材でも使えると思います。
興味のある方はぜひ。