自分の気持ちをはっきり伝えられない人へ
このページを開いたあなたは、いま、夫や恋人と話し合いの場を持つ時期にきています。
「話し合い」とは、二人が持っている欲求の妥協点を見つけることです。
ひょっとするとあなたは、自分の願望より相手の欲求のほうがずっと大切だと思っていませんか?
あるいは、いつでも自分がいちばん重要な存在であり、誰よりも優先され、望みのものを手に入れるのが当然だと思っていませんか?
しかし、あなたと彼は同じように重要な存在なのです。どちらが偉いとか、一方がより大切とかいうことはありません。同等な関係でなければ、二人は決してうまくいかないのです。
話し合いは、二人が愛し合い、生活を共にするうえで欠かすことのできないことです。双方の妥協点を見出し、問題があれば相談する権利が、二人のどちらにもあるのです。その前提を理解していなければ、話し合いは成立しません。
あなたは、自分だけが大切にされる権利があると言い張っていませんか?
彼の意向であれば、たとえ自分の意に反することであっても、ある程度我慢して受け入れるつもりですか?
それとも、自分の権利を主張しない彼の人のよさにつけこんで、自分だけが望みのものを手に入れようとしていますか?
すべてがあなたの思いどおりか、あるいは相手の思いどおりに進んでいると、二人の関係はやがてバランスを崩します。そして、結局は誰も幸福になれません。疑問や不安が出てきたときに、きちんと話し合わないでいると、相手に対する不平や不満が蓄積し、いつか怒りが爆発します。
せっかく話し合うチャンスを与えられても、頑なに話し合いを拒否したり、一時的にあなたが言い争いに勝ったりしていては、二人の関係はうまくいきません。二人が愛し合い、協力していくためには、お互いに心を開き、思いやりを持たなければならないのです。
それでもあなたは、相手と話し合うのがいやですか?
話し合いなんてとんでもない、と考えていますか?
こちらが譲歩すると、相手の優位に立てなくなりそうで怖いですか?
では、その問題となっている事柄が話し合いの対象としてふさわしいかどうか、よく考えてみましょう。
現実には話し合いにならない類の問題もあります。
たとえば、夫がほかの女性とデートしたいと願ったところで、そんなことは話し合いの対象にはなりません。しかし、それが話し合いにふさわしい問題であれば、とことん話し合う必要があるのです。一人ひとりの人の願い、希望、欲求は、それぞれ価値があり、貴重なものです。
これさえ理解していれば、自分を卑下することなく、相手に思いやりを持って話ができます。ただし、相手に対する自分の責任はきちんと自覚しなければなりません。また、相手の権利も十分に尊重しなければなりません。
話し合いは、私たちの生活を豊かにし、二人の関係のバランスをとるための、やりがいのある刺激に満ちた作業なのです。
出典 :たくさん話をしよう ~自分の気持ちをはっきり伝えられない人へ 『恋に揺れるあなたへ 56の処方箋』より
自分の問題も相手の問題と同じくらい大事
『自分を大切に ~愛を見失いそうな人へ』にもありますが、自分の問題より、相手の問題の方がはるかに重要だと考える人は少なくないと思います。
自分の虫歯も大事な問題なのに、相手が胃潰瘍だと知ったら、「あの人の方が私より大変。歯痛ぐらいで苦しむのは申し訳ない」と遠慮して、何も言えなくなってしまうのです。
しかし、そんな関係は、いくら表面的に仲良くても長続きしませんね。
自分の問題も、相手の問題と同じくらい大事。
その上で話をしなければ、いつもペコペコ、ヒヤヒヤ、我慢ばかりの関係になってしまいます。
もちろん、誰もが最初から自己主張する勇気を持てるわけではありません。
話し合いにも、積み重ねは必要です。
また、話し合ったからといって、今日、明日にも、問題が解決するわけでもありません。
事によっては、半年、一年、あるいは、それ以上かかることもあります。
それでも、自分の問題は無価値と卑下して、何も言わないよりは進歩ですし、勇気をもって、自己主張できた自分に誇らしさを感じると思います。
自分の意見を言うことは、自分の尊厳を守ることでもあり、これをなくして、表面だけ丸くしても、かえって不幸に感じるだけなんですね。
逆に、自分の問題の方がはるかに大事と決めつけて、相手に変わることを要求するのも賢いとは言えません。
ラブ・ウィズダムの言うように、人間関係は平等が基本。
どちらかが加害者で、どちらかが被害者であるような懲罰的な関係は、奴隷と主人を作り出し、相手の人間性を踏みにじるものです。
「虫歯か、胃潰瘍、どちらが重症か」という話ではなく、その人にとって、虫歯がつらいなら、重症・軽症に関係なく、大事な問題なのです。
話し合いは、物事を自分の有利に導くための駆け引きではなく、お互いに意見を述べ、相手の言い分に耳を傾ける作業です。
そこで得られるものは、「思い通りの結果」ではなく、『自己の尊厳(自分の意見を堂々と口にする)』と、『理解(相手の気持ちを知る)』です。
話し合いが上手くいけば、(たとえその時は修羅場になっても)、「お互いに言いたいことが言えて良かった」「相手の考えが分かって、ほっとした」と充実感を感じ、二人の関係にも希望がもてるようになります。
たとえ別れに終っても、恨み辛みで終わるのではなく、「互いに傷つけ合ったなら、仕方ない」と納得がいくものです。
話し合いのない関係は、ゾンビと同じ。仲が好いように見えて、実体は死んでいます。
逆の見方をすれば、衝突、和解を繰り返すのは、関係が生きている証しなのです。
Negotiation 目指すゴールは相互理解
この章の原題は、『Negotiation』です。
negotiationには、交渉、均衡、流通、譲渡、といった意味があります。[リーダーズ英和辞典第5版]
よくビジネスで使われるので、「ネゴシエーション」といえば、「駆け引き」のイメージがありますが、ラブ・ウィズダムのいう「交渉」とは、平等な立場から互いに意見を述べ、双方に納得のいく形で解決を探ることをいいます。
ビジネスなら、どちらか一方に有利な条件で片付くこともありますが、人間関係の場合、目指すゴールは相互理解です。
お互いに、お互いの気持ちや考えを知り、どうすればいいかを一緒に考える。
そのプロセス自体に意味があるんですね。
相手をねじ伏せて、有利な結果に導いても、人間関係においては、不幸をもたらすだけです。
互いの尊厳を第一としたネゴシエーションを心掛けたいものです。