初代『超時空要塞マクロス』とリン・ミンメイの魅力

■ はじめに

昭和の頃、私は熱心なアニメ&漫画ファンでしたが、初代『超時空マクロス』の劇場版「愛・おぼえていますか」を観て、アニメはこれで卒業しようと心に決めました。

理由は、二つ。

一つは、失恋した女の子の心情と旅立ちを歌ったエンディング『天使の絵の具』(飯島真理・作詞作曲)の、リン・ミンメイちゃんのパフォーマンスが素晴らしかったこと。

二つ目は、「もうこれ以上のアニメは出てこない」と実感したからです。

……と言うと、平成/令和のアニメファンは激怒するかもしれません。

でも、私にとって、初代マクロスの世界観、ストーリー設定、キャラ、演出、作画、全てにおいて、これを上回るものは作れないし、また世間の好みも変わるだろうと痛感せずにいられませんでした。

良くも悪くも、初代マクロスは「昭和」の集大成であり、以後のサイバー化、ライト化、CG化、等々との境目になる、記念碑的な作品だったんですね。

当時、ヒロイン像の最先端だったリン・ミンメイも、今にして思えば「昭和の女の子」だし、歌詞も、パフォーマンスも、皆がサザンオールスターズや松任谷由実の恋愛観にどっぷりはまっていた頃の集積みたいに感じます。

いわば、「昭和の最後・最高」であり、時代の金字塔ですね。

それでも、作画は綺麗だし、歌も可愛いし、男女のイチャイチャは苦手でも、戦闘場面には目を奪われると思います。

現代の若い子も、興味があれば、一度は視聴して欲しい傑作の一つです。

目次 🏃

超時空要塞マクロスとリン・ミンメイ

あらすじ

※ 解説には、TV版のエピソードを含みます

アイドル歌手を目指す中華料理屋の可愛い娘リン・ミンメイは、巨大な要塞都市マクロ・シティのミス・コンテストで優勝したのをきっかけに、両親の反対を押し切って家を出て、歌手としての活動を始めます。

あるコンサートの夜、マクロ・シティは謎の巨人兵ゼントラーディ軍の攻撃を受け、舞台にいたミンメイも戦闘に巻き込まれます。

そんな彼女の危機を救ったのは、戦闘機バルキリーの若きパイロット・一条輝(いちじょう ひかる)。

巨人兵から逃げ回るうち、無人のブロックに閉じ込められた輝とミンメイは、やがて恋に落ち、ミンメイもアイドルという立場を越えて、輝を愛するようになります。

そんな二人の恋を苦々しく見つめていたのが、輝の上官で、口うるさい年上の早瀬未紗。

何かと意見の食い違う未紗と輝は犬猿の仲でしたが、いくつもの戦闘を重ね、行動を共にするうち、二人の間には確かな絆が芽生えます。

いよいよ戦闘が激化し、人類の存亡をかけた争いとなった時、輝は、ミンメイではなく、未紗こそ「いつまでも一緒に居て欲しい人」だと告白するのでした。

それを知ったミンメイは激しく動揺し、巨人兵との戦いを前に、未紗の翻訳した『愛・おぼえていますか』を歌うことを拒みますが、愛する輝のため、そして宇宙の平和のため、ミンメイは歌手としてステージに立ちます。

ミンメイの歌声は星空にまばゆく輝き、文化の大切さに気づいた巨人兵らも次々に人類の側に寝返って、宇宙征服を企むゴル・ボルドザーを打ち倒します。

立派にステージを務め、ボルドザーとの戦いにも勝ったミンメイは、失った恋の痛みを吹っ切るように輝と未紗に感謝の意を伝え、歌手として、また一人の女性として、新たな一歩を踏み出すのでした――。

初代マクロスの魅力とは

1982年10月から、日曜日の昼枠で放送が始まった『超時空要塞マクロス』は、従来のロボットアニメの定石を打ち破る画期的なものでした。

第一に、主人公の一条輝が、シャイで、優柔不断で、等身大の少年であった点です。

それまでロボットアニメのヒーローといえば、『六神合体ゴッドマーズ』の明神タケルや『銀河旋風ブライガー』のブラスター・キッドのように、目元涼しく、たくましく、正義感に燃える好青年が定番でしたが、初代マクロスの一条輝は、脇も甘けりゃ考えも甘め、恋愛においても奥手で、ちっともヒーローらしくない。

かといって、初代ガンダムのアムロのような弱腰でもなく、一途に頑張る姿が初々しくて、女性ファンの好感度も大。

声優の長谷有洋さんの素人っぽい喋りと相成って、非常に親しみを覚えたものでした。

第二に、ヒロインのリン・ミンメイが、信じられないほど我が侭で、甘えん坊だった点。

それまでロボットアニメのヒロインといえば、『宇宙戦艦ヤマト』の森雪のように、男性の後ろを三歩下がって、ハイハイと頷く優等生タイプか、『銀河鉄道999』のメーテルみたいなお姫さまタイプ。あるいは、エンジェルお町のようにアクションも可能なセクシーお姉さまタイプがお決まりのパターンでした。

ところが、リン・ミンメイときたら、言いたい放題の我が侭三昧。人類が生きるか死ぬかの瀬戸際でも、「私とあなた(輝)以外、みんな死んじゃえばいいのに」などのたまい、ついには一条輝に横面を張り倒されるほど。(ホントです)

その言動は、もはや人類の理解を超えて、宇宙にぶっ飛ぶほどの自己中にもかかわらず、甘え上手で、いたずら好き。

この世に、「恋」と「自分」しか興味がないような天真爛漫さが、逆に魅力的で、最後まで恋の行方に目が離せませんでした。

多くのロボットアニメが「正義」や「救済」をテーマにする中で、初代マクロスは、恋愛を中心に物語が展開した点も、非常に画期的だったと思います。

そして、一番衝撃だったのは、これほどに可愛いヒロインが振られて、早瀬未紗という年上のお局と結ばれた点でしょう。

これには誰もが(・。・)になり、「輝……お前、本当に後悔はないのか……?」とブラウン管の前でうなったファンも少なくないと思います。

あらゆる面で型破り、かつ、進歩的。

考案したスタッフも秀逸なら、制作をバックアップした放送局も、非常に先見の明があったと思います。

劇場版『愛・おぼえていますか』の衝撃

そんなお茶の間の人気を受けて、1984年に劇場公開されたのが『愛・おぼえていますか』です。

劇場公開とあって、キャラ、メカニック、全てがハイクオリティ。

あまりにも凝りすぎたが為、エンディングの『天使の絵の具』(リン・ミンメイのファイナルコンサート)は作画が追いつかず、劇場公開時には、真っ黒な背景にクレジットが流れるお通夜のような仕上がりで、ファンを絶句させたほど。

後に、この『天使の絵の具』は幻のエンディングといわれ、数年後、リン・ミンメイの音楽PV『FLASH BACK』としてLD版に収録され、一時期、数万円の価格で取引きされたこともありました。(現在では編集されて、劇場版エンディングとして視聴することができます)

ファンがそこまで熱狂したのは、リン・ミンメイの可愛さもあるけれど、歌曲と声の演技を担当した飯島真理さんの魅力も非常に大きいと思います。

加えて、羽田健太郎氏による映画音楽もドラマティックで、天才マックスとミリアが交戦する場面で流れる『Dog Fight』のギターソロは息が止まるほどの美しさ。

『愛・おぼえていますか』は、リン・ミンメイ=飯島真理のミュージックビデオでもあり、音楽が好きで作品を見る人も結構あったんですね。(ビデオは買わないけど、サントラは買う)

公開中は、主題歌『愛・おぼえていますか』も国民的ヒットとなり、飯島真理さんも『ベストテン』や『夜のヒットスタジオ』など、いろんな歌謡番組に出演されていました。

恐らく、ガンダムの『哀・戦士』や沢田研二の『さらば宇宙戦艦ヤマト』、ゴダイゴの『銀河鉄道999』など、ロボット・アニメの主題歌が国民的ヒットになる流れの中で、最後のムーブメントになった歌曲ではないかと思います。(この後はナウシカやもののけ姫など、ジブリ系が中心になる)

脚本については、長いTV版を劇場向けに短縮したこともあり、予備知識がなければ理解しにくい部分もありましたが(なぜ地球にマクロスがやって来たのか。巨人兵に攻撃されて、人々がマクロスに避難したのか……といった経緯)、TV版を踏襲しながら、映画向けにグレードアップする演出で、TV版のファンも大満足の出来映えでしたし、劇場版をもって、一条輝とリン・ミンメイの物語を終結した点も非常に良かったと思います。

今、見返しても、画像やアクションの美しさに圧倒されますけど、「当時の若い才能が結集して」というのも分かる気がします。

儲けよりも、定型を打ち破る! みたいな意気込みが凄いというか。

リン・ミンメイにしても、実は、オタクにまったく媚びてなくて、彼女は自分の気持ちしか考えてないんですよ。

だからこそ、オタク男子が夢中になったわけで、最初から「お前ら、こういうのが好きなんだろう」という作り手の意図が見え見えのキャラは大して魅力ないでしょう。

ゆえに、この一作をもって、リン・ミンメイが永遠に去って行った点で、「天使の絵の具」にも説得力があり、もし、この後、同じキャラクターを使い回して続編を作っていたら、ここまで伝説の存在にはならなかったと思います。

そういう意味でも、初代・マクロスは、従来のロボット・アニメの定型からスコンと飛び出した作品であり、レジェンドと言えましょう。

『天使の絵の具(Flash Back)』で永遠に去って行ったリン・ミンメイに、今も作り手の気概と美意識を感じずにいられないのです。

公開当時、作画が間に合わず、真っ黒な背景にテロップのみで流された幻のエンディング。(最初から最後まで)
長い間、非公開でしたが、長い時を経て、レーザーディスク版でリリースされ、一時期、10万円近い価格で取引されていました。

スーパーヒーローの日常を描いた恋愛ドラマ

従来、SFアニメのキャラは、序盤から終幕まで戦闘に明け暮れ、ヒロインは添え物、恋愛要素は二の次で、男女の心理描写はそこまで重要視されていませんでした。

ところが、初代マクロスは、ヒロインがエプロンを着けて家事にいそしんだり、戦闘機のパイロットが普段着で女の子とデートを楽しんだり、男女の恋愛模様を中心に話が進んで、さながら「SFバトル系トレンディ・ドラマ」でした。

しかも、年上のおばさんが人気アイドルから若い恋人を奪い取る、まさかのドンデン返しで、最終話、口がパクパクした人も少なくないと思います。

そうした従来の定石をことごとく覆す設定&脚本で、「ロボットアニメとはこうあるべき」という既存ファンの価値観を吹っ飛ばし、本物とヴァーチャルの境もなくなるようなスーパーアイドルを生み出したのが初代マクロスで、いまだ、これに勝るインパクトは無いわけですよ。

でも、それは、マジンガーZや宇宙戦艦ヤマトの時代から、ずっと日本のロボット・アニメを追いかけた世代だから分かることで、へたれな主人公が市民権を得た現代においては、その凄さは今ひとつ実感できないかもしれません。

だとしても、リン・ミンメイの可愛さは尋常ではないので、機会があれば、ぜひぜひ視聴して頂きたいと思います😄

動画&CDの紹介

劇場版『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』

現在、ブルーレイが購入可能です。

とりあえず視聴したい方は、アマプラやU-NEXTなど、動画配信サイトでどうぞ。

画質もスケールアップされ、とても昭和期の作品とは思えないほど美麗です。

作画に懲りすぎて、エンディングが間に合わなかったのも有名なエピソードです。

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TVシリーズ

TVシリーズのBOXはマニア向け。

とりあえず内容確認したい方は、動画配信サイトで視聴可能です。

たまに無料(激安)サービスをやってるので、こまめにチェックしてみて下さい。

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サウンドトラック 超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか<音楽篇>

サウンドトラックは天才・羽田健太郎さんが手がけておられるので、シンフォニックで素晴らしいです。
特に、マックスVSミリアの一騎打ちで流れる『ビフォー・ザ・バトル』は圧巻ですね。
柿崎君、真っ先にやられてますけど😅

超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか 音楽篇
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『天使の絵の具』のレビュー

劇場版のエンディングで効果的に使われた『天使の絵の具』の魅力を動画を交えて紹介しています。

『天使の絵の具』失恋したら聴く歌 ~リン・ミンメイの幻のエンディング(飯島真理)

飯島真理さんの歌声と、アニメの演出が素晴らしいです。

Novella
『天使の絵の具』失恋したら聴く歌 ~リン・ミンメイの幻のエンディング(飯島真理) | Novella ■ はじめに 『天使の絵の具』は、劇場版『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』のエンディング、…
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