暴力をふるわれている人へ
このページを開いたあなたは、夫や恋人から、身体と心に危害を加えられていないかどうか、よく考えてください。この問題はたいへん重要であるにもかかわらず、あまり認識されていません。おまけに、そもそも誤解されている場合が多いのです。では、まず事実から確認していきましょう。いたって基本的な質問をします。
あなたは夫や恋人から、暴力を受けていませんか?
いいですか、よく考えてみてください。
もし、いまあなたが肉体的に暴力をふるわれているのなら、その暴力がどんどんエスカレーとしていませんか?
以前より暴力の度合いがひどくなっていませんか?
あるいは、精神的に暴力をふるわれている場合もあるでしょう。あなたの夫や恋人は、ドアをバタンと乱暴に閉めて部屋から荒々しく出ていったり、コップを割ったりして、あなたを精神的にないがしろにしていませんか?
あなたの前で乱暴な行為を繰り返すことで、あなたの自尊心を傷つけ、あなたをおとしめていませんか?
そして、それを日々、当たり前のように行っていませんか?
この問題は、よくよく、真剣に検討してください。あなたが肉体的に暴力を受けていようと、あるいは精神的に暴力を受けていようと、そういった暴力はいったん日常的に行われてしまうと、あとは悪化の一途をたどるだけだからです。
「殴られたり、蹴られたりしているわけではないし、とくに乱暴な行動を見せつけられてもいないわ」と思う人も、もう少し掘り下げて考えてみましょう。暴力は肉体と精神を傷つけるものですが、また、感情を傷つけるものでもあります。
あなたは、夫や恋人とのいまの関係をどう感じていますか?
相手に心を開き、ほんとうの自分をさらけだすことなどできないと感じていませんか?
いつも相手の顔色をうかがい、ビクビクしていませんか?
自分の弱点をひた隠しにしていませんか?
彼に対して常に萎縮しているようならば、あなたは彼から感情的な暴力を受けています。そもそも私たちは、「私は尊重されている。相手にとても大切にされている」と感じていなければなりません。相手より自分のほうが下の人間であるように感じてはならないのです。
また、「暴力などいっさい受けていない」というあなたは、夫や恋人との仲を、もっと安らげる関係、安定した関係にできるのかもしれません。そのためには、まず、自分がどんなときにホッとした気持ちになれるのか、試してみましょう。
あなたが心地よさを感じるのは、何をしているときですか?
相手と一緒にいて、もっとも安心感が得られるのは、どんなときですか?
「ほんとうは、もっとこうしてほしいの」という具体的な欲求が、あなたにはあるはずです。それを、夫や恋人にはっきり伝えてください。そうすれば相手も、何をすればいいのか、何をしてはいけないのかがよくわかり、あなたに協力してくれるでしょう。
もしいま、あなたが恋人募集中か、新しい恋人と出会ったばかりなら、くれぐれも厳しく自己管理をしてください。よく知らない男性と、すぐ二人きりになってはいけません。ほかにも人がいる公の場所でデートしてください。そして、相手を信じられるようになるまで、二人の仲をゆっくり進めてください。相手が信頼できる人ならば、用心するあなたの気持ちをきちんと汲んでくれるはずです。
身体も心も傷つけられない、安定した安らぎのある生活を送ること――それが、幸福な男女の関係の基本です。
出典 : 男女関係の基本は安らぎにある ~暴力をふるわれている人へ 『恋に揺れるあなたへ 56の処方箋』より
【コラム】 自分の恐怖をごまかさないで
『自分自身の嘘や偽りを認めよう ~相手の間違いを認めることは、自分の間違いを認めること』にも書いているように、一番の問題は、相手の暴力や嫌がらせで辛い思いをしているのに、「悪いのは私。彼が怒るのも仕方ない」など、自分で自分に都合よく言い聞かせることです。
相手の暴力に対して、だんだん心が麻痺して、逃げる勇気も、抗う気力もなくしてしまったら、それこそ相手の思うツボ。
それこそ、一生、身も心も支配されかねません。
「おかしい」と感じたら、少しずつ距離を置きましょう。
あなたの前では紳士でも、ファミレスのお姉さんやコンビニの店員さんには、横柄な態度を取る人は少なくありません。
あなたが「おかしい」と思うなら、その通りだし、自分より弱い立場の人に乱暴な口を利く人が「本当は優しいはず」なんてことは決してありません。
自分自身をごまかさず、悪いものは悪いと認めましょう。
一人になるのは寂しいですが、信頼できない相手に一生服従するよりは、淋しくても自分に誇りのもてる暮らしの方が何倍も快適です。
相手が(表面上)謝っても、それに騙されてはいけません。
あなたの優しさを利用して、自分に都合のいい状況を作り出そうとしているに過ぎないからです。
あなたを心から大事にしてくれる人は、きっと他にもいるはずです。
あなたを脅かすものから自由になる勇気を持ちましょう。
Lofty 居丈高という罪悪
この章の原題は、Lofty です。
loftyには、「非常に高い」「そびえ立つ」「高位な」「高尚な」という意味の他に、「高慢な」「傲慢な」という特徴も表します。 [ジーニアス英和辞典第5版]
イメージ的には、(山や塔のように)際だって高いもの、人間的には、高いところから見おろす印象でしょうか。
“lofty contempt [disdain] 人を人とおも思わぬ傲慢、尻目にかけること” というイディオムも存在するように、「高い」けれど、尊敬は伴わない、威圧的な高さを表すようです。
男性に限らず、女性でも、相手が自分より弱い立場と見るや、高圧的な態度に出て、じわじわと相手を責めさいなむ人がいますが、そういう人間に遭遇したら、話し合いで相手の考えを変えようとか、自分の心の痛みを訴えて分かってもらおう、などと考えないこと。
『理屈で人を変えることはできない』にも書いているように、話し合いで人の考え方を変えることはできません。
それができるのは、自分も相手に言いたい放題できる、イーブン(同等)な関係だけ。
暴力と威圧で支配する主従関係においては、説得など、何の意味もありません。
相手の心変わりに期待し、すがりつけば、すがりつくほど、相手は「あなたに愛されている」と増長し、いっそう支配を強めるでしょう。
深く関わった相手と距離を置くのは、誰にとっても一大事ですが、物理的距離を置く以外に解決策はありません。
暴力と威圧によって支配される人生は、ゆっくり死に至るようなものです。