恋人にしがみついている人へ
このページを開いたあなたはいま、もっとも難しい行動をとらなければなりません。
簡単なことのように思えるかもしれませんが、それは「愛する人を自由にさせる」ことです。つまり、「でしゃばらず、何もかも大目に見なさい」と言っているのです。それがあなたの責任でなくて何でしょう?
愛する人を、ものごとの結果を、きょうを、明日を、永遠に自分の思いどおりにコントロールできないのは当たり前のことです。これはなにも、受け身になりなさい、思いやりを持つのをやめなさい、と言っているわけではありません。また、彼との関係を解消しなさい、
恋人を探すのをやめなさい、と言っているわけでもありません。大切なのは「なるようになれ」の精神を持ち、成り行きに身を任せることなのです。他人のことに必要以上に首を突っ
込むのはやめましょう。
「自分のことは自分でさせる」――それが基本です。そして、あなたも自分のことだけしてください。あなたの願望に世間を合わせようとするのをやめるのです。ものごとをあるがままに受けとめましょう。
そして、自分の運命をひたすら受け入れてください。ひとまず腰を下ろし、深呼吸しましょう。人生に起きてしまったことは、もう起きてしまったのです。それを受け入れてください。あなたの意のままに相手を操ろうとしたり、説得したり、教育したり、圧力をかけたりするのは、おやめなさい。また、自分に対しても同じことをしているのならいますぐ、やめるのです。
ただ、時の流れに身を任せればいいのです。
すべてを思いのままに操ろうとして、あわただしい生活を送り、他人のお節介をやいているうちに、あなたはどれほど多くの貴重な経験と機会を逸してきたことでしょう!
いま二人の間に横たわっている深い溝を飛び越えるためには、相手を束縛するのをやめることです。そして、もし彼があなたと別れたがっているのなら、行かせてあげましょう。
だいじょうぶ、不安に思うことはありません。あなたが相手をコントロールしようとしていたときより、事態はずっとよくなります。万事うまくいきます。すべてが本来のあるべき姿に戻り、ものごとは自然によい方向に流れはじめるでしょう。
忘れないでください。人生はあなたの味方です。すでに、あなたに必要なものをすべて与えてくれているのです。
あなたがいま激流の中を、向こう岸まで泳いで渡ろうとしているのはわかります。しかし、必死になってしがみついている流木から手を離さないかぎり、両手を自由に動かし、向こう岸まで泳ぐことはできません。
手を離してみましょう。流木から手を離して自由になるのです。そして、自力で泳ぎましょう。流れに押し流されそうになっても、だいじょうぶ、人生という水があなたを支えてくれますから。
束縛するのをやめ、愛する人を自由にしてあげましょう。いますぐ、実行してください。
出典 : 自分の力で歩もう ~恋人にしがみついている人へ 『恋に揺れるあなたへ 56の処方箋』より
自分を変えるより、相手を変えた方が楽
『『No』と言わせない女性 ~罪悪感で人を支配しない~』にも書いているように、わざと誘導するような言い方をして、相手を自分の思い通りにコントロールしようとする人は少なくありません。
「今日は気分がすぐれないから、代わりに、リビングに掃除機をかけてもらえる?」と言えば済むのに、「夫婦も家事を分担するのが当たり前」とか「こんなに私が苦しんでいるのに、何とも思わないの。薄情な人ね」みたいな言い方をするから、相手もしんどいし、いっそう事態がこじれてしまうのです。
恋人だろうが、夫婦だろうが、元々は、他人なのですから、考え方も生き方も違って当たり前。
その全てを自分の思い通りにすることなど、誰にも出来ません。
相手の欠点や失敗を非難して、自分の思う通りに物事を運ぼうとする人は、自分から何かを変えるより、相手に罪悪感をもたせて、相手の考えを改めさせた方が楽なのでしょう。
それで表面上は上手く行っても、相手に恨まれるだけ。何も得することなどありません。
何か気に入らない事があっても、すぐに相手を責めるのではなく、自分も日頃の態度を見直してみる、物の言い方を変える、自分から率先して動く、などして、良い風に変える方法もたくさんあります。時間はかかっても、お互い納得いくような結末になるでしょう。
また、「去る者は追わず」で、どうしても上手く行かない時は、相手を自由にすることも大事です。
どれほど美人でも、人間として優れていても、その気のない相手を、自分の思う通りに愛させることは不可能だからです。
一時期、孤独になっても、あなたに魅力があれば、いつかお互い愛し合える人に巡り会うでしょうし、別れた方がいい相手だっています。(浮気男に必死になっても、裏切られるだけでしょう?)
『別れも幸せに至るためのステップ ~人間関係も変化するのが当たり前』にも書いているように、人の心も、人生も、常に変化するものです。個人の努力では、どうにも出来ないこともたくさんあります。「ここが潮時」と悟ったら、「何が何でも結ばれなければならない」みたいに、こだわるのを止めて、自分からも、相手に対しても、自由でいましょう。
幸せというのは、ぽつんと空いたスペースに、すっと入ってくるものです。
Let go 『あるがまま』とは
この章の原題は、Let go です。
Let go といえば、ディズニー映画『アナと雪の女王』で歌われた、Let it go (レリゴ~、レリゴ~)が有名ですね。日本では「ありのままで」の邦訳で有名になりました。
直訳すれば、「it(それ)が行くがままにまかせる」で、「それ」が意味するのは、触れるものをなんでも凍らせてしまう力であり、自らを解き放ったエルザ自身です。エルザは長年、自分の本当の力を怖れ、自らの中に封印していました。しかし、自分以外の何ものにもなれないと気付いたエルザは、封印するのをやめ、「ありのままの 自分になるの」と、自分の本来の姿に身を任せます。
それは、他人においても同じこと。
海が好きな人に、「あなたは山に登りなさい」と命令することはできません。
Let him go で、海が好きな彼氏には、彼の望むままに、海に行かせてあげるのが愛です。
自分の都合で、「海は危険だ」と言い聞かせても、下心が見え見えだと、心に響きません。
「あなたはいつ海に出掛けてもいい。でも、台風が接近してる時は行かないで」という心配なら、相手も納得するでしょう。
繰り返しになりますが、物事には、自分の努力でどうにかなることと、どうにもならないことがあります。人の心は、どうにもならないことの典型です。
「山に行け」「家にいろ」と命令するのではなく、Let him go。相手の望むままに行かせてあげましょう。
また、時の流れが別れを告げているなら、Let it go の気持ちで受け入れましょう。それも変化の一つに過ぎません。
大らかな心で、成り行きを見守っていれば、一時期、不幸に見えても、あなたの納得いく形で落ちつきます。
物事にこだわって、相手も自分も不幸になるより、すべては天命にまかせる気持ちで、自由に構えてはいかがでしょうか。