『曇り空』 ~誰かに心惹かれても背中を向けたくなることがある
誰かに心惹かれても、ふと背中を向けたくなることがある。
もっと自分を知って欲しいのに、どこか億劫で、相手の前から逃げ出したくなる。
怖いわけでもなければ、いい格好してるわけでもない。
好きだから、後ろを向いていたい。
相手を真っ直ぐ見つめられるほど、心が強くないから。
きまぐれだって おこらないでね
本気で好きになりそうだから約束だけは気にしてたけど
急にやぶってみたくなったの昨日は曇り空
外に出たくなかったの
人は孤独を嫌うけど、時に、心を守ってくれる。
会いたくない時は、会いたくない気持ちのままに、そっとカーテンを閉じればいい。
一人で静かに過ごしていれば、いつか人の笑顔が懐かしく感じられる日も来るだろう。
だから、今日は気まぐれを許して。
一人でいたい気持ちも分かって。
そうすれば、明日はまた笑顔で会えると思うから。
『曇り空』の魅力
『曇り空』は、ユーミンのカセットテープを作る時(昭和時代はそう呼んでいた)、一番最初に吹き込む曲でした。
煙るようなイントロから、ぐいぐい歌の世界に引き込まれます。
派手なフレーズがあるわけでもなければ、ぎらぎらした歌詞が差し込まれているわけでもない、まるで水に溶かした水彩画みたいに、ぼんやりした曲なのですが、何度聞いても飽きることがありません。
朝、目覚めた時の億劫な気持ちを、これほど見事に物語っている歌詞もまたとないと思います。
『曇り空』は、ユーミンのデビューアルバム『ひこうき雲』に収録されています。
1973年にリリースされ、バック・バンドは、未来の夫となる松任谷正隆氏をはじめ、YMOの細野晴臣、はっぴいえんどの鈴木茂、ドラマーで音楽プロデューサーの林立夫氏など、レジェンド級のミュージシャンが名を連ねています。
アルバム『ひこうき雲』は、アコースティックで、シンプルな作りながら、胸が痛くなるほどの映像美にあふれ、彼女の歌に自分の青春を重ね見る人も多いのではないでしょうか。
ほっとしたい時、優しい気持ちになりたい時に聞きたいアルバムです。
同時収録の『雨の街を』に関するレビューはこちら。
荒井由実『雨の街を』 ~ 誰かやさしく肩を抱いてくれる人に出会ったら
Spotifyで全曲視聴できます。
初稿 2010年3月9日