心に深い傷を負った人へ
このページを開いたあなたはいま、癒しの過程にいます。ですから、どうか安心してください。あなたは、これからもっと強くなり、やすらかな気持ちになれるのです。
あなたの前に伸びている道は、愛情に満ちあふれた幸福の場所へと続いており、あなたは必ずそこにたどり着くことができるのです。
「癒し」とは、傷ついた心が回復していくことです。あなたの心は、いま、つらい出来事によりひどく傷ついています。しかし、傷は着実に癒されています。癒しの過程は、あなたの傷をそっと包みこむように、いたわるように、やさしく進行する場合と、あなたの苦痛などおかまいなしに手荒く進行する荒療治の場合とがあります。
たとえば、病気から回復する過程で、完治する前に、いったん具合が悪くなる場合があるでしょう?それと同じで、あなたの心の傷が癒える前には、つらく苦しい時期があるものです。ですから、愛する人から裏切られ傷ついた心が、またひどく落ち込むような出来事があったとしても、それは癒しの過程なのだと信じてください。
また、ちょうどいま、夫や恋人との信頼関係を必死になって修復しようとしている人もいるでしょう。いったんこじれてしまった二人の関係を元に戻し、以前よりもっと強い絆にするためには、たいへんな心労がともないます。すると、健康がむしばまれる場合がよくあります。腰痛や皮膚疾患など、身体の不調が再発している人もいるでしょう。そういったちょっとした不調で、あなたの心と身体はSOSを発信しているのです。
「腰がひどく痛い」
「肌にアレルギーが出はじめた」
というのは身体的な症状ですが、あなたの心も悲鳴をあげているのです。ですから身体の不調が出はじめたら、心の健康状態にも目を向けてください。
では、自分で「心」を癒すには、どうすればいいのでしょう?それには、いったん悲嘆に暮れ、とことん悲しむのがいちばんです。そして、自分を十分いたわりましょう。仕事や家事などで、明日にまわせるものは明日に延ばしましょう。出席しなくてもいい会合や懇親会につきあうのはやめましょう。余計なプレッシャーを避け、のんびりすることが大切です。あくせくするのをやめるのです。そして、リラックスしている自分を怠惰だとかのろまだとか非難するのもやめましょう。
人生は、私たちが望むものではなく、私たちに必要なものを経験させてくれます。どれほどつらいことがあっても、それはあなたに必要なことなのです。そして、いまのあなたには、癒しが必要なのです。
癒しという過程のトンネルの出口は、すぐそこにあります。あなたは、そこを何としても通り抜け、トンネルの外に出なければなりません。
そしていま、まさにあなたは、その第一歩を踏み出したところなのです。
出典 : 癒やしの力を信じよう ~心に深い傷を負った人へ 『恋に揺れるあなたへ 56の処方箋』より
【コラム】 自分を責めても物事は改善しない
以前、育児コラムニストのブログで、「育児書というのは、読む必要のない人が真剣に読んで、いっそう自分を責めている」と言及されていました。
「こんな言い方は止めましょう」「いい母親になりましょう」、、、元々、ちゃんと出来ている人ほど、育児のことも熱心に勉強し、育児書の正論に振り回されて、疲れ果てる、というわけです。
逆に、放任主義で、虐待が日常化しているような親は、元から育児に関心などありませんから、育児書など手に取ることもありません。
どれほど優れた育児書も、読むべき人に届かず、かえって、読む必要のない人に自責の念を与え、いっそうストレスを増しているんですね。
人生も、それと同じ。
くよくよ、うじうじ悩んでいる人の多くは、善良で、常識があって、少しでもいい人生を生きようと真面目に努力している人が大半です。
元から身勝手で、冷酷な人は、仕事や人間関係で悩むことがないですから、落ち込むこともありません。いつも自分が正しいと思っているので、逆に傍目には心の強い、立派な人に見えます。
そう考えると、『正しいことのために苦しむ ~悩むのは真剣に生きている証し 《ペトロスの手紙》より』にも書いているように、痛み苦しみは、心が正しい証しと言えるのではないでしょうか。
たとえば、健康な人が腐ったヨーグルトを食べたら、お腹が痛くなります。
それは身体が正常に機能しているからで、元からお腹が腐っていたら(?)、腐ったものを食べても何も感じないでしょう。
心も同じ。正しく機能しているから、人間関係に疲れもするし、仕事の失敗がいつまでも尾を引くのです。
元から心が歪んで、開き直った人間は、余計なひと言で人間関係がぎくしゃくしたり、仕事のミスでお客さんに迷惑をかけたぐらいで、心が傷ついたりしないでしょう。
逆に言えば、心が傷つくから、問題の存在に気付くし、改めるべき点も分かります。
どこも痛まなければ、目の前のヨーグルトが腐っていることにも気付かず、バイ菌の毒素に侵されて、死んでしまうでしょう。
今は、心の正しい機能が、悪いものと戦っているのだと考え、自然に回復するのを待ちましょう。
腐ったヨーグルトを食べて、お腹を壊しても、健康であれば、いつか自然治癒するのと同じです。
正しい心には、打ち克つ力が備わっているのですから、自身の免疫機能を信じて、自然の流れに身を任せましょう。
弱った身体がビタミンを求めるように、心にも、読書や映画、旅行といったビタミンをあげましょう。
無理さえしなければ、いつか流れが変わって、「あの時は大変だったなぁ」と思える日が来ると思います。
『出口のないトンネルはない ~人生の大局を見る』と同じく、人生は刻一刻と変化するものだからです。
Healing 心の免疫機能
この章の原題は、Healingです。
healingには、「治療」「癒やし」といった意味があります。 [ジーニアス英和辞典第5版]
癒やしというと、「そのままのアナタでいいんだよ」みたいな、自分の全てを肯定する、ゆるい生き方を連想しますが、実際には、免疫細胞がバイ菌と戦うような、深く、激しいものです。
風邪の季節、「喉がイガイガする」程度なら、多くの人は「大したことない」と考え、普通に一日を過ごしますね。でも、あなたがデータ入力したり、カツ丼を食べたり、お風呂に入ってリラックスしている間も、あなたの体内では、小さな免疫細胞が、無数のバイ菌と必死に戦っています。体調が悪くて、バイ菌の方が強いなら、高熱が出たり、激しく咳き込んだり、身体も大きなダメージを受けるでしょう。
あなたの心もそれと同じ、平素は「いいや、気にしない」で済むことも、状況によっては、どーんと落ち込み、二度と立ち直れないようなショックを受けることがあります。
もうダメだと思うような時でも、あなたの心の奥深くでは、必死の戦いが繰り広げられています。
痛い、苦しいのは、当たり前なのです。
そうした人生の危機に打ち克つためにも、無理はせず、心と身体にたっぷりのビタミンを供給して、自然治癒するのを待ちましょう。
たちの悪いインフルエンザも、身体が丈夫なら、数日で自然に治ってしまうように、あなたの心もいつか癒やされ、目指す幸福に向かって、再び歩き出せるはずです。