もし鳥になれたら最初にどこへ飛んで行きたいですか?
『質問』 田中未知さんより
それは『過去の自分』です。
『あの頃の私』が頑張ってくれたから、今がある。
過去の私には感謝しても、しきれないくらい。
挫けなかった私。
決して諦めなかった私。
思えば、どんな危機に陥っても、不思議と「絶望しきる」ということはありませんでした。
目の前が真っ暗に感じても、いつでも、その先に、希望の光を感じ取ってきました。
どんなに辛く、果てしなくても、心の底では、自分の行きたい場所に辿り着けると分かっていたからです。
もしかしたら、未来の私――すなわち、『現在の私』が、過去の私に必死に呼びかけていたのかもしれません。
死ぬな、絶対に諦めるな、と。
だから、私は過去の自分の所に飛んで行って、必死で頑張っている自分を抱きしめてやりたいし、その後の道筋を教えてあげたいとも思う。
人は未来ばかりを有り難がるけど、本当に報われるべきは『過去の私』と思います。
もはや誰にも振り返られない、自分自身でさえ忘れてしまったりしているので、時々は思い出して、いたわってやりたいです。
「あたしは階段を半分降りたところが好きだよ。ここが『あたしの場所』だよ。てっぺんでもなくって、一ばん下でもない」
勿論、誰も聞いてやしなかった。アパートでムギの話し相手になることは、他の居住人から物笑いになることを意味していたのだ。
「この階段を半分降りたところからは、上へものぼれるし、下へも降りていける。どっちへ行っても、何だかいいことがあるような気がするね」
寺山修司『あゝ荒野』