『千一夜物語・新宿版』
私達は様々な情報を見聞きし、それらに対して意見を述べたり、共感したりするが、実行が伴わなければ効力も薄い。
ただ論じているだけでは無力で、縦のものを横にする勇気と行動力がなければ、どんな立派な論説も空回りに終わってしまう。
革命を遠くから見ているだけでは、何も変わらないし、何も身に付かない。
革命は、その中に身を投じて初めて、自身の歴史となり、人と世界を動かすものである。
ちなみに、寺山修司のいう『革命』とは、社会的アクションだけでなく、個人の人生も指す。
物事に行き詰まったら、自分自身に革命を起こすことが一番だからだ。
仕事を変えたり、コンテストにチャレンジしたり、大きな革命はもちろんのこと、いつもの停車駅をわざと乗り過ごして、見知らぬ町で降りてみるのも革命のうちである。
いつも赤系統の服ばかり着ている人は、たまには青系統を試してみるのもいいし、いつも定食屋で食事を済ませている人は、プロのレシピを片手に本格中華を作ってみるのもよい。
日常レベルで実践できる『革命』は数知れず、達成する人としない人の違いは「やるか、やらないか」の差なのである。
そんな革命の原動力となるものは、立派な理想や成功哲学ではなく、どれだけ心が欲しているかだ。
薄っぺらい憧れや見栄だけでは、人は何も成せない。
こうしたい、こうなりたい、これだけは譲れない、
なりふり構わぬ強い動機こそが、真に人を強くする。
そうした力の湧き出る泉は、理屈ではなく、心臓だ。
どれほど理屈をこねくり回しても、ガソリンの無いエンジンに火を付けることはできない。
そしてまた、この心臓というものは、意識して鍛えないと、すぐに弱ってしまう。
弱った心臓は、感じることも、奮い立つこともなく、いずれ人間を空疎な肉の塊にするだろう。
社会改革にしろ、個人のチャレンジにしろ、遠くから見ているだけなら、何とでも言える。
言葉だけなら、誰でも偉人であり、冒険者だ。
だが、革命を遠くから見ているだけでは、何も変わらない。
目だけ、弁だけでは、人は動かないし、世の中も変わらないのである。