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なぜ小児性犯罪には厳罰が科せられるのか 映画『スポットライト ~世紀のスクープ』
聖職者の小児性犯罪を記事で告発し、隠された真実を世に知らしめたボストンの新聞紙『スポットライト』の記者の奮闘と被害者らの心の傷をリアルに描く秀作。社会コラムと併せて。 -
映画『ペレ 伝説の誕生』 アイデンティティと自信喪失の時代を自分らしく生きる
サッカーの神様ペレの誕生にはブラジルの国民性を象徴する『ジンガ』の動きがあった。欧州風のフォーメーションプレイに従うよう強要され、自分のプレーを見失うが、ジンガこそ自らのルーツと思い定め、ブラジル国民の願いを体現する。コラム『スポーツと国家の威信 : 伊藤みどりさんの活躍を振り返る』 -
底辺にしか分からぬ感情がある 映画『モンスター』(2003年) シャーリーズ・セロン主演
自己責任か、境遇か。シャーリーズ・セロン演じる連続殺人犯アイリーン・ウォーノスは一見、無節操・無計画に見えるが、底辺には底辺の苦しみがあり、自己責任では割り切れないものがある。アカデミー賞に輝いた捨て身の熱演を画像付きで解説。『みんな私のことを、生き残ることしか考えないクズと思ってる。私には”選択肢”がなかった』 -
生命は道を探し出す 映画『ジュラシック・パーク』(1993年) スティーブン・スピルバーグ
化石に閉じ込められた蚊の胎内から恐竜の血液を採取し、現存する爬虫類のDNAと掛け合わせて、恐竜を現代に蘇らせる。夢のテーマパークはコンピュータシステムで完全制御され、絶対安全のはずだったが、巨利に目がくらんだ職員によってシステムが破綻し、恐竜たちが暴走しはじめる。コラム【技術開発と社会的責任】と併せて。 -
実体なき現代のマネーゲームを描く 映画『マネーモンスター』
人気投資番組の司会者ゲイツは、彼のすすめた投資で大損した青年カイルに生放送中に襲撃される。事件は米国中に生中継され、株価暴落のカラクリが次第に明らかになる。現代のマネーゲームに警鐘を鳴らすジョディ・フォスター監督の傑作。 -
才能や個性は本当に人を幸せにするのか 自制と自覚を説く 映画『アナと雪の女王』
エルザの魔法は『才能』『個性』と置き換えると分かりやすい。個性のままに生きることは、周りと齟齬を起こす。エルザは自分自身をコントロールする術を見出し、周りと調和を図ることに成功した。自制と自覚の重要性を説く秀作。 -
ソウルな歌唱とは自我の発露 ~ジェニファー・ハドソンの歌唱が素晴らしい 映画『ドリームガールズ』
女性グループ『ザ・ドリームス』を売り出す為、プロデューサーは実力派のエフィをセンターから降ろし、美人のディーナをリードに据える。エフィは傷つき、落ちぶれるが力強く再起する。ジェニファー・ハドソンの歌唱が素晴らしい音楽映画の傑作。コラム『ソウルな歌唱とは自我の発露』。 -
楽天こそ才能 インドの教育熱と前向き思考を描く青春映画『きっと、うまくいく』
インドの工科大学に学ぶ3人のルームメイトの生き様を通して、過熱教育や競争社会の弊害を描くコメディ映画の傑作。『すべてうまくいく』の楽天思考で生き抜くランチョーの姿が印象的。ダンスあり、ギャグありのエンターテイメントでありながら、ビジネスと学術のグローバリズムについて考えさせられる良作。コラム「自己肯定感の低下は高い能力も腐らせる」「楽天性を身に付けるのは難しい」「悲観的な秀才10人より、楽天的な凡人100人の方がいい仕事ができる」 -
難波康子さんと映画『エベレスト 3D (2015)』なぜ命を懸けて高い山に登るのか
1996年 エベレスト大量遭難を描いた山岳ドラマ『エベレスト』。圧倒的な3D映像の美しさと、登山に命を懸けたクライマーの願いと悲劇が胸に迫る良作。日本人女性として初めて登頂に成功した難波康子さんに思いを馳せながら綴る映画コラム。 -
美しい女が老いに直面する時 映画『血の伯爵夫人』 エリザベート・バートリと年下の恋人
若さと美を願うのは、間違いですか? 美貌の伯爵夫人エリザベート・バートリは、21歳の若くてハンサムなイシュトヴァンに恋をしたことから、自分の老いを強く意識するようになる。愛を失うことを恐れた夫人は自らの美貌を永遠に保つことに執心し、乙女たちの生き血を求めるようになる。女性の老いと悲哀を正面から描いた人間ドラマ。 -
極限下の愛と支配を描く 映画『愛の嵐』 ~暴力でしか愛を表現できない男と離れられない女
半裸の少女がナチス将校の衣装をまとい、両手で胸元を隠して、マレーネ・ディートリッヒの曲を儚げに歌う場面で有名。将校マクシミリアンと囚人のルチアは、戦後、見知らぬ他人として再会するが、再び激しく求め合う。『私は第三帝国に仕えたことを誇りに思う。再び生まれても同じことをするだろう』『僕はあえてドブネズミの人生を選んだんだ。夜、働くのには訳がある。光だよ。私には光が眩しいんだ』の台詞が印象的な衝撃作。 -
戦争とは歴史の無慈悲なロシアン・ルーレット 映画『ディア・ハンター』
運が悪ければ頭が吹っ飛び、運がよければ生き延びる。敵国だろうが同盟軍だろうが、貧乏人に待ち受ける運命はみな同じ。気まぐれにロシアン・ルーレットを弾く手は、決して自ら汚れることはない。ロバート・デニーロとクリストファー・ウォーケンの名演が胸に迫る戦争映画の傑作。 -
泣き虫の殺し屋『ニキータ』女は美しさを利用して成長する
フランス情報機関により、不良娘が一流の暗殺者に教育される。その指導を行うのが名女優ジャンヌ・モロー。『微笑みなさい。知的に見えなくても、相手に好感を与えるわ』『この世には無限のものが二つある。女の美しさとそれを利用すること』のような台詞は若い女性へのエールでもある。女性の成長と切ない恋を描いたアクション&ロマンスの傑作。 -
映画『エイリアン』(1979年) が描く生殖とエロティシズム
エイリアンの造形に秘められた性と生殖のシンボルを読み解く映画コラム。H・R・ギーガーのデザインを中心に、異物としての異星人を描く。 -
中国の台頭と移民社会の未来を描く 映画『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』
80年代、21世紀の中国台頭について予見していたマイケル・チミノ監督のアクション映画。ニューヨークのチャイナタウンを舞台に昇竜の如く勢力を伸ばすチャイニーズ・マフィアとNY市警の死闘を描く。コラム「移民社会は国家より強し」と併せて。 -
人間と猿の違いは『No』と言えること 『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』
人間を超える知能を持つに至った猿のシーザーは危険動物とみなされ、動物施設に収容される。飼育館から虐待されたシーザーは『No』と叫び、仲間を引き連れて脱走する。Noは尊い意思表示であり、人間関係を円滑にする魔法の言葉でもある。 -
パンデミックの脅威を描く 映画『アウトブレイク』 ~なぜ感染症は水面下で拡大するのか
ダスティン・ホフマン主演の医療サスペンス。医療機関の監修に基づき、感染症が拡大する様子をリアルに描いている。陰謀あり、駆け引きありで、娯楽としても楽しめる良作。医療コラム『なぜ感染症は水面下で拡大するのか』と併せて。 -
南北分断の悲劇と願いを描いた 韓国映画『シュリ』 ~自由に行き来する魚のように
韓国情報部の捜査官と北朝鮮工作員の女性の恋を中心に、南北分断の悲劇と願いを描く娯楽アクション。韓国では映画『タイタニック』をしのぐ大ヒットとなった。作品の魅力を画像付きで解説。「国家よりコンテンツ」の若い世代が世界を変えていくのではないか、というコラムと併せて。 -
美しい生命のSF叙情詩 『ブレードランナー』(1982年) 私は何もので、人生はいつ終わるのか?
『ブレードランナー』は「近未来SF」にカテゴライズされるが、根底にあるのは人間や生命に対する問いかけであり、答えは見る人に委ねられる。すべては一編の詩のように流れ、明確な回答は一つとしてない。心と自己に関するコラム。 -
ブラックジャックの診療報酬 ~患者さま時代の医療
ブラックジャックの診療報酬 手塚治虫氏の医療マンガ『ブラックジャック』は、無免許の天才外科医でありながら、患者に法外な診療報酬を要求する。 常識で考えれば、「人の弱みにつけこんで、なんたる外道!」と思うが、ブラックジャックはあえてダーティーな要求を突きつけることで、患者にこう問いかけているのだ。 「君は全力をかけて自分...