キリスト教が分かれば、世界も広がる
ドストエフスキーに限らず、西洋文化を理解するなら、キリスト教の知識は必須です。
文学、絵画、音楽、映画など、あらゆる面にキリスト教の精神やモチーフが盛り込まれています。
特に『原罪』(旧約聖書・アダムとイブの楽園追放)と『イエスの磔刑』(新約聖書・全人類の罪を購う)に関する考え方が重要です。
また、『受胎告知』『山上の垂訓』『狭き門』『一粒の麦、もし地に落ちて死なずば』『ゲッセマネの祈り』といった新約聖書の有名なエピソードも必須です。
さすがに全書読破は大変なので、まずは、図解本、西洋美術の本、伝記映画などから親しむことをおすすめします。
特に西洋美術の解説本は、装幀も美しく、可愛いイラスト付きで、基礎となる知識やエピソードが分かりやすく紹介されている良書が多いです。
今は娯楽としても楽しめる伝記映画もたくさんありますので、自分の好きなジャンルから攻略して下さいね。
ついでに、イエスの教えは、癒しの効果もありますよ(^^) ← これ大事
『日本聖書協会』の書籍一覧はこちら.旧約聖書から新約聖書まで全てのタイトルが揃っています。Kindle版もあり。
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※ 岩波文庫でも聖書の訳本が出版されていますが、岩波は文学的、日本聖書協会は信徒さん向けです。
基本の聖書(新約・旧約)
一口に『新約聖書』といっても、口語訳、文語訳、福音書、信徒の手紙を含む全書など、膨大な数と種類があります。
他人のおすすめが必ずしも自分にも合うとは限りませんし、まずは書店や図書館に行って、片っ端から目を通し、文体や構成、印字や解説など、自分の感性にフィットしたものを選びましょう。
ある程度、親しんで、読み比べる余裕ができたら、改めて書評などを参考にして、学術的価値の高い本に進めばいいと思います。
新約聖書 共同訳全注 (講談社学術文庫)
私が一番最初に購入した新約聖書です。
上述の通り、何の予備知識ももたずに大型書店に出掛けて、片っ端から内容に目を通し、一番読みやすいものを購入しました。
私が購入した前バージョンは廃刊になっていますが、現行の共同訳全注は、訳文も現代的にアレンジされて、Kindle版もあります。(Kindle Unlimited対象)
共同訳は、平易ながら、格調高い文章で、エッセーのようにすらすら読むことができます。
構成も、四大福音書『マタイによる福音書』『マルコによる福音書』『ルカによる福音書』『ヨハネによる福音書』『使徒言行録』『ローマの信徒への手紙』(他、全ての手紙が収録)『ヨハネの黙示録』と全てが網羅。
ほとんど全ての漢字に”よみがな”が付いており、幅広い年齢層を対象にしています。
入門編としてもおすすめです。(これ一冊あれば、事足りる)
【amazon レビューより】
原典のギリシャ語発音表記を地名・人名に採用したこの聖書の効果は、「使徒の宣教」から特に現れる。
これを読むとき、まさにイメージとしてギリシャ・ローマ世界がパウロスとともに展開していく。
例えば「イタリーのロームで聖フランシスが」などと言うと、イタリア世界に膜が張ったように感じないだろうか。
これは言葉にこだわって本質を見ていない発言とも言えるだろうが、「共同訳」は、あったほうがよい聖書翻訳のかたちであるに違いない。
教会で使うのに不便であるとしても、是非ハードカバーでも復刻して欲しい一冊である。
私が所有しているのは、前バージョンです。
文庫本(紙の本)の場合、印字が非常に細かいので、老眼世代にはKidle版をおすすめします。
聖書 新共同訳 旧約聖書 Kindle版
日本聖書協会による『旧約聖書』です。『創世記』から『預言書』まで、すべてが網羅されています。Kindle版あり。(Kindle Unlimited対象)
全てに目を通すのは大変なので、特に有名な『創世記』『出エジプト記(モーゼの十戒)』『ヨブ記』『詩編(映画や文学でよく引用される)』あたりを押さえておけば、いろいろ役に立つと思います。
旧約聖書 創世記 (岩波文庫)
「最初に光ありき」で始まる創世記は圧巻。
一口に聖書といっても、出エジプト記や預言書など、実に膨大な書物の集まりなのだが、創世記はちょっとスペクタクルな要素があって、物語として読んでも十分面白い。個人的には岩波文庫の訳が文学的で好きです。Kindle版あり。
天地創造、楽園の追放、カインとアベル、ノアの方舟、ソドムとゴモラ、など。罪を犯して神から追放を受けた人類とその人類に対する神の救いが聖書全体をつらぬく問題であるとすれば、旧約巻頭のこの書こそ、その問題への出発点である。天地の創造、人類のはじまり、楽園追放、ノアの洪水、その子孫の増加、そしてイスラエル民族の祖先たちの罪と罰の記録。次々に壮大な神と人類の物語が展開されてゆく。
【amazon レビューより】
天地創造、エデンの園からの追放、ノアの洪水、ソドムの滅亡など、誰もが一度は耳にしたことのあるような物語はこの旧約聖書開巻第一の書「創世記」に全ておさめられている。
民族の分布や、系図などいったい何なんだと思うような箇所もあるし、旧約聖書といえばキリスト教、イスラム教、ユダヤ教の聖典であるが、とりあえずどの宗教を信じているかなど関係なく、勿論無心論者の人も一度は目を通してみるとなかなか面白い発見などもあり有意義だと思う。
旧約聖書 出エジプト記 (岩波文庫)
映画『エクソダス 神と王(リドリー・スコット監督 / クリスチャン・ベイル主演)』や『十戒(チャールトン・ヘストン主演)』で、モーセが海を割る場面を見て、出エジプトの歴史に興味をもった人も少なくないのでは。
本当に紅海が割れたかどうかは分かりませんが、数ある聖書のエピソードの中でも、最もドラマティックなパート。「モーセと十戒」を理解する上でも、不可欠な一冊です。映画のノベライズとして読んでみてはいかがでしょうか。
旧約聖書 ヨブ記 (岩波文庫) Kindle版
「あの男をわたしにお渡しなさい。そうすればあなたの僕が不平を言い、あなたの名を呪(のろ)うところをお目にかけましょう」
サタンは神に挑戦し、信仰深い義人ヨブに様々な試練を与えます。財産を失い、皮膚病に冒され、不幸のどん底に突き落とされても、ヨブは信仰を失わず、苦難の中に神の意図を読みとります。
ドストエフスキーも愛読した、旧約聖書の代表的なエピソードです。
キリスト教の解説本
誰もが聖書を読むために (新潮選書)
聖書を手に取ってみたものの、抽象的な話が多く、何が言いたいのか分からないまま、途中で投げだしてしまう人も少なくないのではないでしょうか。
また全編読破しても、『原罪』や『贖罪』の意味がまったく理解できてない人もあります。
本書は、宗教社会学者の鹿嶋 春平太によるユニークな解説本。何かと美化され、ポエムになりがちな聖書の世界を科学的な視線で解き明かす、画期的な本です。
現在は廃刊になっていますが、キリスト教の核である『原罪』を知る上で非常に参考になる良書。中古本あり。図書館で探してみて下さい。
オーソドックスな聖書の読み方とはどういうものか。
なぜ、神が「光よ。あれ」というと、光が出現するか。
バイブルでいう「神(GOD)」とはなにか。
エデンの「楽園」の様子と神の理想の「楽園」とは。
バイブルの基調をなす発想とは何か。
唐突な記述や奇跡の数々を読みこなす認識パターンはあるのか。
難解な聖書の冒頭部分に直に接し、18の基本原則から聖書を読み解く
【amazon レビューより】
西欧人の思想に、いかに聖書が入り込んでいるかを説明した本。
特に、アメリカを意識して書かれています。
西欧人の行動様式を聖書をもとに解明しようとする試みは独創的であり、好感が持てます。
また、ある程度、整合の取れた説明も出来ているので、それなりに読み応えがあります。
日本人が理解しにくいアメリカ人の思想をも簡単に説明した文には感銘すら受けます。
ただ、難を言いますと、聖書を基本としているのでアメリカとヨーロッパを一くくりにしているのですが、イラク戦争に対する各国の反応を考え合わせると、プロテスタントという同じ土壌でも異なった対応が取られており、この理論に完全に納得してしまうのも危険かと思う所です。
一つの見方を提供してくれていると理解した方が良いかもしれません。
キリスト教の本 (上) 救世主イエスと聖書の謎を解く
本屋によっては、精神世界系のコーナーにあるので手を伸ばしにくいかもしれないが、写真やイラストも多数掲載されており、キリスト教を教養として身に付けたい方におすすめ。
信仰ではなく、歴史・文化の一つとしてキリスト教を紹介しており、内容も学術的です。
昨今の「図解でわかるシリーズ」とは一線を画しています。
知的雑学の読み物としてもおすすめ。
これも廃刊になっていますが、中古で入手可能。もしくは図書館で。
2000年の昔、全人類の罪を背負い、ひとりエルサレムで十字架上に死に、そして復活した人間イエスの原像と聖書成立の謎を徹底解読。また神の国=教会を舞台に展開した、キリスト教信仰のすべてを網羅し、世界最大の宗教の全体像に迫る。
【amazon レビューより】
ナザレトのイエースースの生涯と原始キリスト教時代の歴史、そしてローマ帝国による迫害と国教化、異端論争など、おもに古代キリスト教史を若い世代の人々向けに平易に書き記した入門書です。
トリーノの聖骸布やウェロニカの聖布、ロンギーノスの聖槍、ヘレナが「発見した」という聖十字架、そして聖杯伝説、等々の聖遺物のトピックが載っているので、なかなか面白く読むことが出来ますよ。
また、奇跡物語の解釈や死海文書の提示するイエースース像など結構きちんとした記述が書かれて居て興味深い本でもあります。
ただしかし、外典や教父文書の解説が手短か過ぎて物足りないような気がしたことは否めませんが...。
キリスト教の本 下 聖母・天使・聖人と全宗派の儀礼
上巻のカラーページ。ナザレ、ベツレヘム、ヨルダン川とヨハネの洗礼、誘惑の山、ゲッセマネの園、悲しみの道、などなど、かの名所がカラー写真で紹介。
上巻の目次
上巻のコンテンツ。
下巻のカラーページ。バチカンと教会にまつわるカラーページ。
下巻の目次。
下巻のコンテンツ
フルカラー図解本
決定版 図説 旧約・新約聖書 この一冊で聖書がまるごとわかる
旧約聖書と新約聖書の世界観をフルカラーのビジュアルで解説。
旧約聖書は似たような名前の登場人物がぞろぞろ出てくるので、ビジュアルの方が分かりやすいです。
決定版 図説 旧約・新約聖書 この一冊で聖書がまるごとわかる
ビジュアル図解 聖書と名画 [世界史徹底マスター] Kindle版
同系列の本です。
有名な西洋絵画と併せて、創世記からイエスの磔刑までざっくり解説。
西洋美術の入門編としてもおすすめです。
ビジュアル図解 聖書と名画 [世界史徹底マスター] Kindle版
マリアのウィンク ― 聖書の名シーン集
西洋美術の基礎も合わせて学びたいなら、こちらの本がおすすめ。
名画に描かれたモチーフや創作裏話など、西洋美術の面から分かりやすく解説しています。
一見、マンガ本のようですが、中身はアカデミックで、入門編としておすすめです。
本書はKindle版より、紙の書籍での購入をおすすめします。
大半が、見開きページなので、タブレットやモバイルでは読みにくいと思います。
マリアのウィンク―聖書の名シーン集 (ハートアートシリーズ)
【この本で紹介する内容】
・旧約聖書の名シーン
・まんがで見る アブラハム・モーセ
・新約聖書の名シーン
・まんがで見る キリスト・ヨハネ
・聖人伝
● 天使のひきだし―美術館に住む天使たち
● オレたちに明日はない?―黙示録の解読ガイド
● 悪魔のダンス―絵の中から誘う悪魔
● ヴィーナスの片思い―神話の名シーン集
西洋絵画の主題物語〈1〉聖書編
これも重厚なフルカラー本で、有名な作品と聖書のエピソードは全て網羅されています。
本格的な図解本ですが、現在は中古のみ入手可能です。
キリスト教の本を選ぶコツ ~初心者向け
キリスト教の本を選ぶコツは、まず「読む目的」を明確にすることです。
信者になりたいのか。
西洋美術の題材として興味があるのか。
歴史や文学の素養として身に付けたいのか。
目的によって、本の種類も違ってくるからです。
私の場合、作曲家ワーグナーから哲学者ニーチェに興味をもち(二人が仲違いしたのは有名な話)、ニーチェがあまりに「神は死んだ」を連呼するので、その理由を知りたくなったからです。
それ以前には、キリスト教団体の運営する病院に勤めた経験がありますし(院内に礼拝堂があり、イベントでは讃美歌を歌う。正規の医療機関です)、『ノストラダムスの大予言』『映画エクソシスト』『血を流すマリア像』等々、昭和のオカルトブームにおいては、マストアイテムでもありました。
また、キリスト教をモチーフとした西洋美術や映画にも興味があったので、これを機にがっつり勉強しようと思い立ち、いろんな本に目を通すようになった次第です。
ただ、日本は宗教観も希薄で、キリスト教も、癒しの一環として消費されることも多いです。
癒しには違いないですが、『創世記』から続く神と人間のドラマは、癒しでは解釈しきれない部分も多々あり、それが如実に表れているのが刑罰に対する考え方ではないでしょうか。(死刑廃止、被告のプライバシー保護など。根本に「赦し」と「改悛」「再生」の考え方がある)
キリスト教には、社会科学の一面もありますので、イエスの名言だけを拾うのではなく、一度は歴史と社会学の両面から精読されることをおすすめします。
以下、『二人の「綾子」――入門書・解説書はなぜわからないか』 (「誰もが聖書を読むために」(鹿嶋 春平太))より。
「二人の綾子」とは、キリスト教徒でもある作家の三浦綾子氏と曾野綾子氏のことです。
聖書というのが、膨大な体系を持っている書物であることは間違いないようです。そして、例えば、全体が、象の身体であるように考えますと、どの著者もその象の全体像を見せてくれていない。だから読者は、ちょうど盲目の人が象を部分的に撫でて、そして、象はこんなものだろうというふうに、想像するのと同じようなことをさせられていたように思います。
≪中略≫
もちろん、筆者たち自身は、各々全体像を掴んでいるだろうと私は信じています。が、少なくとも書く段においては、全体像を示そうとしていない。にもかかわらず、その自分の撫でた部分を「部分です」と言わないで、「聖書です」と言っているのが日本の聖書入門書の実情であるように思われます。ですから、読者は読んでもわからない。部分的なところでわかったような気持ちにさせられるのですが、結局は振り出しに戻るというわけです。
ものごとは部分的にしかわからないと、ある部分の解説が、全体の中の他の部分と、どういうような関連を持っているかという位置づけが全くできなくなります。だから、全体像を示してくれない解説書は、我々にとっては聖書のある部分、ある聖句をとって、そして、それに対する個々人の随想を述べているだけに過ぎない本ということに結果的にはなるわけです。
ある言葉や、事件をすくいあげて、それに関する物語を編み出すということになれば、これは作家が一番得意とするところです。作家は、職業柄、面白く、興味深く、聖書に関するドラマを創作してゆくことができます。聖書の入門書の中でも、日本では作家のものがとりわけよく売れるということになっているようですが、日本のキリスト教文学の隆盛の一因には、解説書の類いが聖書の全体像を定時していないことが底流としてあるように思えてなりません。
「誰もが聖書を読むために」 鹿嶋 春平太
映画
ベン・ハー
歴史スペクタクルの金字塔。1959年の制作ながら、まったく色褪せず、12万人のエキストラを動員したコロッセウムでの戦車レースは白眉のもの。
親友メッサラ(ローマの将軍)との行き違いから、母と妹を投獄され、自身もガレー船に送られたベン・ハーは復讐を誓うが、「ナザレの人」との出会いが彼の心を変える。イエスの生涯がメインの物語ではないが、「洗礼」「迷える小羊」「磔刑」などがモチーフとして描かれ、入門編としてもおすすめ。
父よ、彼らを赦したまえ。イエス・キリストの教えを描く 映画『ベン・ハー(1959年)』
『復活』(RISEN)
イエスの死後、十二人の使徒の伝道にフォーカスした歴史ドラマ。『復活の奇跡』とは何を意味するのか、静かなタッチで描く秀作。
映画『復活』(RISEN) 復活とは何か ~12人の弟子と信仰の奇跡
沈黙 -サイレンス
島原でのキリシタン迫害をテーマにした重厚な人間ドラマ。神はなぜ沈黙されているのか、踏み絵は棄教なのか。胸をえぐるような問い掛けとイッセー尾形の「転ぶ」が印象的な良作。拷問の場面が痛々しいので、苦手な方は遠藤周作の小説をどうぞ。これも名作です。https://amzn.to/423S4lN
ザ・ウォーカー
核戦争で荒廃した世界。孤高の旅人(デンゼル・ワシントン)は、「世界でたった一冊の本」を届けるため、西へと旅を続ける。旅人の秘密を知った独裁者カーネギーは執拗に彼を追うが、果たしてその中身とは……。最初のタイトルでネタバレする作品ですが、随所に聖書の本質がちりばめられ、宗教ドラマとしても秀逸。デンゼルと少女の友情も印象的です。マッドマックス+キリスト教という感じ。
十戒
チャールトン・ヘストン主演の歴史大作。こちらも往年の名画ながら、紅海を渡るシーンは見応えがあるし、ユル・ブリンナー演じるラムセス王も圧巻。
2014年に、クリスチャン・ベール主演の『エクソダス 神と王』としてリメクされたが、旧約聖書の世界観は『十戒』の方がよく描けている。「ヤハウェの神」も森厳として、特撮の古さも気にならない。