数年前、ある大手新聞に、漫画家の池田理代子さんの人生相談のコーナーがありました。
漫画さながらの劇的な人生を送ってこられた理代子先生だけあって、その回答も非常に個性的。
ありきたりの「正答」ではないところに魅力を感じます。
中でも印象に残っているのが、浪費癖のある若い女性のお悩み相談。
『私は高級ブランドバッグが大好きで、欲しいと思えば借金してでも買ってしまいます。
このままではいけないと思い、その都度反省するのですが、素敵なバッグを見つけるとまた買ってしまいます。
どうしたら止められるでしょうか?』
それに対する理代子先生の回答は、
『気の済むまで、買いなさい。買って、買って、いつか破産しなさい。
好きなバッグのために破滅するのも、それもまた人生です』
なかなかこうは言えません。
大抵は、「冷静になりなさい」「自分の人生を大切にしなさい」みたいなお説教に終わるでしょう。
そんなことは他人に言われなくても、この相談者自身が一番よく知っています。
それでも止められないから、苦しんでいる。
それに対して、当たり前のことを、当たり前のように説いて聞かせても、誰も救われないでしょう。
駄目なものを「ダメ」と言うのは簡単なことです。
人に正しい道を説くのも、簡単です。
肝心なのは、バッグを買い求める自分からも、その行為に苦しむ自分からも、逃げられないということを自覚させた上で、責めない、否定しない、ことかなと思います。
幸福が人生の目的の全てではなし。
買って、買って、破産するまで買って、欲望とは何か、人生とは何の為にあるのかを悟るのも、生きる目的に違いないので。
‐ 1999.10.18のエッセイより