『A HAPPY NEW YEAR』 新年の祈り
人を好きになることは祈りにも似ている
人を好きになることは「祈り」にも似ている。
本当に愛したら、その人が、いつまでも幸せでいることしか願わなくなる。
自分は苦しさで潰れてもいい。
でも、愛するあの人だけは、いつも笑顔でいて欲しい。
あの人の幸せが、私の幸せ。
そんなシンプルな気持ち。
本当の幸せは『想う人がある』ということ
私が初めてユーミンの『A HAPPY NEW YEAR』を聞いたのは、まさに正月三が日のこと。
普段は聞かない『NHKラジオ第一放送』の新春番組から、ふと流れてきたのがこの曲だった。
その頃、私には好きな人がいて、明けても暮れても、その人のことばかり想ってた。
それは「恋」と呼ぶにはあまりに稚なくて、心の中で想うのが精一杯だった。
電話で話したいとか、デートしたいとか、そんな月並みな願望もほとんどなく、その人を「好き」というだけで、すっかり満足しているような状態。
たまに声をかけてもらったり、こっちを見て、ニコッと微笑んでもらうだけで幸せで。
その人が他の女のコと親しくしようが、取り巻きに騒がれようが、どうでもいい。
なんとも無欲で淡泊な恋だった。
そんな時、FMラジオで耳にした、松任谷由実の『A HAPPY NEW YEAR』。
雪の降り積もる街を、天使の羽で駆け抜けていくような透明感に、涙があふれそうになった。
世界の美しさとは、きっとこういう情景を言うのだろう。
まるで世界中の恋する女の子を祝福するかのようだった。
*
知り合ってから、二度目のお正月。
私の方は、この曲の彼女みたいに、彼に会いに行けるわけでもなければ、電話も気軽にかけられるような間柄じゃない。
ふと触れ合った瞬間の思い出を繋ぎ合わせて、遠くから想うだけ。
それでもユーミンの『A HAPPY NEW YEAR』を聴いていると、一緒に初詣に出掛けたり、電話で「おめでとう」を言い合うのと同じくらい、幸福なこともあると感じずにいられなかった。
それは、あの人の幸せを想うこと。
こうして、年の初めに、想う誰かがある、ということ――。
A Happy New Year!
大好きなあなたの部屋まで
凍る街路樹ぬけて急ぎましょう
今年も最初に会う人が
あなたであるように はやく はやくA Happy New Year!
今日の日は ああどこから来るの
陽気な人ごみにまぎれて消えるの
こうしてもうひとつ年をとり
あなたを愛したい ずっと ずっと今年も沢山いいことが
あなたにあるように いつも いつも
「あなた」という、かけがえのない存在と、その人を想う幸福。
人に生まれてよかったと思うのは、いつも、こんな瞬間だ。
本当の恋は、それだけで奇跡とも思う。
風のように過ぎ去っても、想いは永遠に──。
アルバム『昨晩お会いしましょう』について
ファンの間でも名盤と名高いアルバム『昨晩お会いしましょう』は、1981年にリリースされました。
このアルバムの特徴は、荒井由実のアコースティックな世界観から大きく抜け出し、シティポップのようなサウンドを作り上げたことです。
当時、関西屈指のデートスポットと謳われた『神戸ポートピアランド』とその象徴である『ポートタワー』をイメージして作られたと言われる『タワー・サイド・メモリ』を筆頭に、国民的ヒットとなった『守ってあげたい』(角川映画『時をかける少女』の主題歌)、ドライブデートをモチーフにした『カンナ8号線』、卒業後の思い出を謳った『グループ』、恋する気持ちを新年の祈りに託した『A HAPPY NEW YEAR -Happy New Year-』など、名曲が目白押しで、ユーミンの最高傑作と称されるのも納得の出来映えです。
キャッチコピーは「過去、現在、未来、時の流れは 今 ユーミンに止められた。あなたの青春の一場面が息づく。」
特に『A HAPPY NEW YEAR -Happy New Year-』は雪景色をイメージしたシンプルな作りながら、透明感にあふれ、歌詞もメロディラインも非常に美しい傑作です。
Spotifyで全曲視聴できます。
80年代、関西屈指のデートスポットだった神戸ポートピアランドとポートタワーをイメージしたヒット曲。過ぎ去った恋を懐かしく歌う思い出の曲です。