帰る場所のある人は幸せだ。
帰る場所があるから、何所までも遠くに行くことができる。
帰る場所がなければ、何所にも行かれない。
それが家の中であれ、生まれ育った町であれ、何所にも行けないのは、帰る場所がないからだ。
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現代人の不幸の多くは心のホームレスに起因する。
『家』と名の付く場所はあっても、それは私の帰る場所ではない。
安らぎもなく、理解もなく、ただ雨露をしのぐ屋根があるだけ。
屋根があるだけ幸運だという人もあるだろう。
だけども、人として生きて行かれない場所で、どうして幸福を感じ得るだろう。
本当の意味で帰る場所があれば、人はそこまで追い詰められることはない。
何かあっても、そこに帰りさえすれば、またやり直せるからだ。
だけども、帰る場所もなく、安らげる場所もなく、ただがむしゃらに動き続けるしかないとすれば、どんな人もいずれ疲弊し、人生は絶望に変わる。
誰もが父母から生まれ、社会に育まれ、本来、一人に一つずつ、帰る場所はあるはずなのに、それを持てない人の方が多分圧倒的に多い。
では、その人たちに雨露をしのぐ屋根を与えれば解決するかといえば、決してそうではなく、人はみな心の円居を求めているのだ。
Homeという、安心して帰って行ける場所を。
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人はみな、いずれ巣立ち、人生という旅を始める。
だけども、ふと振り返った時、そこに帰る場所があるのと無いのでは、まったく違ってくる。
帰る場所のない人生は、呪われた幽霊船の如くだ。
人が無力に感じるのも、破れかぶれになるのも、疲れきって自信をなくすのも、生きるためには、ただひたすら歩き続けるしかないからだろう。
ほんの一時でも、帰れる場所に帰って、心の羽根を休めることができたら、どんな荒海も越えて行けるのに。
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1974-way-home。
果てしない道の先に、懐かしい我が家の明かりが見えたなら、こんな夜でも温もりを感じるだろうに、帰る場所のない人生は、まるで闇に閉ざされたように感じる。
いつか何所かに帰れたら、こんな私でも、生きててよかったと思えるはずなのに。
1974-way-home。
私は何所に帰ろうか。
星の下を歩きながら、遠い昔に捨ててきた小さな円居を思い出す。
1974-way-home。
あなたは何所に帰って行くの。
たとえ帰る場所はなくとも、ひたすら歩き続ける。
この道の先にあるかもしれない、小さな明かりを探して。
というような詩が一本書けてしまう、素敵な曲です☆
上記の『1974-way-home』はこちらのアルバムに収録されています。
一番最後に締めで収録されているのが粋ですね。
女性ヴォーカリストのbirdとコラボした『LIFE』もソウルフルないい曲です。
MP3でのダウンロード購入が可能。
Spotifyはこちら。
初稿 2015年12月7日