松任谷由実『タワー・サイド・メモリー』 愛は恋が過ぎ去った後に始まる

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『タワー・サイド・メモリー』が教えてくれること

愛は恋が過ぎ去った後に始まる

愛は、恋が過ぎ去った後に始まるもの。

恋の只中にある時は、ただ目が合うだけで幸せだったり、側に居るだけで満たされたり、自分の悦びでいっぱいで、相手のことなど何も見てないから。

そうして恋が終わり、何もかも懐かしくなって初めて、その人の優しさに気づいたりする。

あの言葉も、眼差しも、そういう意味だったのだと理解した時には、もう恋は終わっていて、愛を伝える機会も永久に失われているのだ。

あの時 さらって くれたらいいのに

「ごめんね」なんて 言って欲しくない。

松任谷由実『タワーサイド・メモリー』

恋の後には、後悔ばかり。

どうして、もっと強く気持ちをぶつけなかったのだろう。

好きなら「好き」、失いたくないなら「失いたくない」と、どうしてはっきり伝えなかったのだろう。

あれこれ考え過ぎて、本当の気持ちさえ見失っていた。

愛し方も、傷つき方も、分からなかったから、あの頃は……。

痛みの中で知る、本当に愛し方

ユーミンのタワー・サイドメモリーを聴いていると、『人を恋すること』、それ自体が、どれほど素敵な心の体験か、今更のように思わずにいない。

でも、恋の只中では、二人の関係長続きさせることが目的になって、だんだん心の体験としての恋を実感できなくなってしまう。

そして、後になって、「ああ、あの素敵な一瞬を、どうして笑って過ごせなかった口惜しむ。

もっと、あの人の声、あの人の笑顔、仕草の一つ一つを、深く、強く、心に刻みつけておけばよかったと悔やんでも、すべては時の向こう。

あの人がどんな声で笑っていたかも、今はもう、よく思い出せない。

自分の馬鹿さに呆れながら、一枚、一枚、思い出の写真を消すうちに、ふと目に留まった『神戸ポートピア』の写真。

ああ、ここも皆で行ったなぁ……夜景がとても綺麗だった……屋台でアイスクリームを食べて……それから、それから……

痛みの中で知っていく。本当の、人の愛し方──。

アルバム『昨晩お会いしましょう』について

ファンの間でも名盤と名高いアルバム『昨晩お会いしましょう』は、1981年にリリースされました。

このアルバムの特徴は、荒井由実のアコースティックな世界観から大きく抜け出し、シティポップのようなサウンドを作り上げたことです。

当時、関西屈指のデートスポットと謳われた『神戸ポートピアランド』とその象徴である『ポートタワー』をイメージして作られたと言われる『タワー・サイド・メモリ』を筆頭に、国民的ヒットとなった『守ってあげたい』(角川映画『時をかける少女』の主題歌)、ドライブデートをモチーフにした『カンナ8号線』、卒業後の思い出を謳った『グループ』、恋する気持ちを新年の祈りに託した『A HAPPY NEW YEAR -Happy New Year-』など、名曲が目白押しで、ユーミンの最高傑作と称されるのも納得の出来映えです。

キャッチコピーは「過去、現在、未来、時の流れは 今 ユーミンに止められた。あなたの青春の一場面が息づく。」

特に、『タワー・サイド・メモリー』は、バブル世代の関西人カップルにとって、「あの頃の気恥ずかしいデート」を思い出させる名曲ではないでしょうか。

Spotifyで全曲視聴できます。

神戸ポートピアランドは、1981年、神戸ポートアイランド博覧会の娯楽施設としてオープンし、お洒落な街・神戸のデートスポットとして人気がありましたが、湾岸の埋め立てによって、売り物の海岸線はどんどん遠ざかり、内陸化したことで、ロマンティックなムードも消滅。客足も途絶えて、2006年に閉園となりました。
私はオープンして間もない頃、町内会の日帰りバスツアーで訪れましたが、観覧車から見る神戸港の夜景が素晴らしかったことが今も思い出されます。
また、当日、野外コンサートに出演していたのは、世界的に注目を集める前のフュージョン・バンド『カシオペア』で、都会的なサウンドに感銘を受けたものです。
日本は空前のバブル期を迎える手前で、ポートピアのみならず、遊びも、文化も、何もかもが百花繚乱の賑わいでした。
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初稿 2010年3月17日

誰かにこっそり教えたい 👂
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