『さみしさのゆくえ』が教えてくれること
人生の翳りと美しさ
どんなに頑張っても、予期せぬ別れに至ることはある。
ちょっとした行き違いが雪崩みたいに大きくなり、結局、分かり合えぬまま終ったり。
心にもない言葉で傷つけてしまったり。
どうして素直に「好き」と言えないのか。
ずっと側に居て欲しいのに、気のない素振りをしてしまうのか。
過ぎ去ってから、やっと気付く、その人の大切さ。
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誰だって、最初から上手に愛せるわけじゃない。
でも、別れたり、振られたり、失恋するのは不幸なんだ、一人でいるのは恥ずかしいことだと、
そんな風に言い出したら、人はいつ愛し方を学ぶのだろう?
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私たちは、人生で一番大切なものを、一番最初になおざりにする。
愛も、あの人も、いつまでも側にいるように勘違いして。
悪ぶるわたししか知らず あなたは旅立って行った
お互い自分のさびしさを抱いて それしか持てなかったのこんなわたしでもいいと いってくれた一言を
いつまでも大切にしてる私を笑わないでしたいことをしてきたと 人は思っているけど
誰にも心の翳りはわかるものじゃないから残った都会の光見つめて たたずめば
その時 私の中で
ほんとに 何かが終わる荒井由実『さみしさのゆくえ』
誰の人生にも翳りはある。
色あせた写真みたいに、いちいち思い出さないだけで。
そして、それが幸福の証しでもある。
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幸せになるには、同じくらいの翳りが必要で、それと静かに向き合える人だけが、人生の真の美しさを知るのだろう。
「恋をしてよかった」と心から思えるのは、いつもそれが過ぎ去ってから。
本当の幸せは、恋の只中にではなく、心ならずも傷つけてしまったあの人の幸せを遠くから願えるようになった時、しみじみと感じるものではないだろうか。
アルバム『14番目の月』
荒井由実(ユーミン)の代表曲『さみしさのゆくえ』は、4枚目のオリジナルアルバム『14番目の月』に収録されています。
同アルバムには、『中央フリーウェイ』『グッド・ラック・アンド・グッドバイ』など、初期の名曲が揃っており、わけても、『さみしさのゆくえ』は、メロディラインと歌詞の美しさで定評があります。これがユーミンの最高傑作という人も少なくありません。私もその一人です。
おそろしいのは、これが10代で書かれた曲だということ。
言葉の力といい、作曲能力といい、凄まじい天性ですね。
これも名曲ぞろいです。「中央フリーウェイ」「グッド・ラック・アンド・グッド・バイ」「14番目の月」と、ユーミンファンには外せないタイトルが揃っています。
ファンの中にも「荒井派」と「松任谷派」があって、荒井時代の方がよかったという人も少なくないですが、これを聞けば納得です。
ああ、ユーミン、どうしてあなたはそのままで居てくれなかったの?? と、こぼしたくなるような一枚です。
Spotifyで全曲、視聴できます。