ルパート・ホルムズの『ヒム』 邦訳と70年代 AORの思い出

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『ヒム』の概要と邦訳

ルパート・ホルムズは、70年代~80年代にかけて活躍した英国のシンガーソングライターです。

優しい歌声と美しいメロディラインで定評があり、わけても、部屋に残されたタバコの吸い殻から彼女の浮気を疑う『ヒム(Him)』は世界的ヒットとなり、この曲を通してルパート・ホルムズを知ったファンも少なくないのではないでしょうか。

曲全体はアコースティックな作りで、80年代ロックバンドのような華やかさはないが、さびの部分「ヒム、ヒム、ヒム…ワッシゴナ ドゥアバウ ヒム~」というフレーズは一度聞いたら忘れられません。

時を超えて聴衆を惹きつける名曲です。

私は中学生の時、メロディの美しさに惹かれて、ドーナツ盤(33回転)を購入しました。

歌詞と邦訳

邦訳は当方のフィーリング歌詞です。何となく状況を察して頂ければ幸いです。

Over by the window, there’s a pack of cigarettes.
Not my brand you understand,
Sometimes the girl forgets
She forgets to hide them
I know who left those smokes behind
She’ll say, oh, he’s just a friend,
And I’ll say, oh, I’m not blind
to..

(chorus)
Him him him, what’s she gonna do about him?
She’s gonna have to live without him,
It’s him or it’s me, me me,
No one gets to get it for free
It’s me or it’s him.

窓のそばに タバコの箱を見つけたよ
僕が吸っているのとは違うブランドだ
時々 女の子は忘れてしまう
こういうものを隠しておくことを
僕には分かっている
誰がこのタバコを置いていったのか
彼女は言うだろう
「彼は、ただの友達よ」
そして僕は答える
「僕だってバカじゃない」

彼 彼 彼
彼女は彼のことをどうするつもりなのだろう
彼なしで生きていけるのか
彼 あるいは僕なのか
誰も自由にはならない
僕 あるいは彼

『ヒム』がヒットした頃は、ボズ・スキャッグスやクリストファー・クロスなど、いわゆる「AOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)」の全盛期で、メッセージ性よりも、フィーリング重視の楽曲が多かったように感じます。

同じ英国でも、クイーンやザ・ポリスのように、音楽の中心に確たるメッセージがあり、そこにメロディが付いてくるのと対称的に、最初にふわふわした、心地いいサウンドがあり、そこに歌詞を当てていくイメージです。

なので、内容も軽く、フィーリングとして恋を謳う印象。

かといって、歌詞にまったく意味がないわけではなく、メロディに合った、優しい響があり、ルパート・ホルムズの楽曲も、熱い恋ではなく、恋する男性の夢想や切なさを描いたものが多い。

そうしたフィーリングが『大人の恋』として妙齢の男女に支持され、デートに欠かせないBGMになったのが、AORブームの大きな特徴だと思います。

Spotify

ルパート・ホルムズの『ヒム』は、Spotifyでも視聴できます。

ルパート・ホルムズの名曲

Partners In Crime

その他の名曲で、私の一押しは『Partners In Crime』。

この曲は出だしが独特で、「チャーチャラッ、チャーチャラッ」というリズミカルな旋律に心を鷲づかみにされます。

メロディも美しく、『ヒム』に並ぶ傑作です。

Answering Machine

恋人に電話して、留守録にプロポーズのメッセージを吹き込むべきか、揺れる男性の胸の内を歌った良作です。

メロディも可愛く、爽やかで、途中で挿入されるプッシュホン電話の音が効果的。スマホの普及で、こんな音も聞かなくなりました。

上記を収録さいたアルバム『PARTNERS IN CRIME』はSpotifyで全曲視聴できます。

終わりに ~美しいメロディは何所へ?

今では『アルバム』という概念も薄れ、有名歌手のヒット曲もばら売りで聴く時代。

多くの人は、音楽配信サイトを利用し、自分のプレイリストからエンドレスに流れてくる音楽をBGMに仕事したり、通学したりが当たり前になりました。

次から次に、いろんな音楽が流れてくるので、飽きることはないですが、反面、ルパート・ホルムズの『ヒム』のように、はっとさせられる曲は激減したように感じます。

アーティストにとっては、今も一曲一曲が全力勝負なのかもしれませんが、ラジオ&レコード時代とはリリースの重みが全く違うので、手抜きと言ってはなんですが、何となく、小手先で、機械的に作ってる感が否めず。

私などは、FMラジオの洋楽ベストテンで初登場の時の衝撃を今も鮮明に覚えていたりするので、現代の配信サービスは、賛成半分、違和感半分といったところです。

そういう意味でも、『ヒム』は本当にさびの部分が印象的で、何十年経っても、この曲がラジオや繁華街の店先で流れていた頃の事を忘れない人も少なくないでしょう。

私は一番いい時と便利な時代の二種類を経験して、ラッキーなリスナーだと思っています。

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初稿 2008年12月1日

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