映画『TIME/タイム』 あらすじと見どころ
TIME/タイム(2011年) - In Time
監督 : アンドリュー・ニコル
主演 : ジャスティン・ティンバーレイク(ウィル)、アマンダ・サイフリッド(シルヴィア・ワイス)、キリアン・マーフィー(タイムキーバー・レイモンド)
あらすじ
近未来。
人類は遺伝子操作によって25歳から年を取らなくなった。
通過の代替に『時間』が用いられるようになり、持ち時間がゼロになると、寿命も終わる。
長い時間を持つ人は富裕層の町で永遠の若さを生き、時間のない人はスラム街でぎりぎりの暮らしをしていた。
スラム街に暮らすウィルは、マフィアに襲われた富裕層の男から『時間』をもらい、時間切れで命を落とした母の仇を取る為、富裕層の町に乗り込む。
成り行きで出会った美女シルヴィアの力を借り、時間を支配するタイムキーパー・レイモンドの陰謀を知るが……。
見どころ
『時間』をお金に見立てた斬新な世界観が素晴らしい。
単なる近未来SFにとどまらず、「人生とは時間そのもの」「一瞬、一瞬を大切に生きろ」というメッセージをさりげに織り込んでいる点がポイント。(人によっては人生観が変わるかも)
主演は、クールなパフォーマンスで人気のあるジャスティン・ティンバーレイク。
歌手としても絶頂期の作品なので、演技も見応えがある。
なお篠田麻里子による吹替えは最悪で、エイリアンの続編『プロメテウス』の剛力彩芽に並ぶ、稚拙さ。
米倉涼子もそうだが、なぜこんな芸無しが芸能人を名乗っているのか、首を捻りたくなるほどである。
最初に吹替え版で観ると、途中で死にたくなるので、本作は絶対的に字幕版で視聴することをおすすめする。
人生とは時間そのもの ~TIMEが伝えたいこと
時間が支配する斬新な設定
科学技術の進歩によって、人間の生体は25歳で成長を止めることが可能になった。
しかし、25歳を過ぎると、与えられる時間は「1年」限り。大半の人間はあくせく働き、通貨の代わりに「時間」を稼がなければならない。
一方、裕福な「時間もち」は、100年も200年も若い姿のまま生き長らえ、死とは無縁の人生を送っている。
文字通り『時は金なり』の世界観をリアルに描き出したのが、近未来SF『TIME/タイム』だ。(原題は In Time)
主演は、セクシーなパフォーマンスで世界を魅了する、歌手のジャスティン・ティンバーレーク。
映画『インセプション』で、アイデアを植え付けられる御曹司をクールに演じたキリアン・マーフィが悪役のタイムマスター・レイモンドをクールに演じ、映画『マンマミーア』でキュートなヒロインを演じたアマンダ・セイフライドが脇を固めている。
ハリウッドのアクション大作を見慣れている人は、映画全体に漂うB級観に物足りなさを覚えるかもしれないが、与えられた時間の中からバス代を支払い(乗車一回、2時間分。この数値は、どうやって算出したのか?)、高級車を購入し(一台、59年分)、貨幣の代わりに「持ち時間」をやり取りするユニークな世界観は目を見張るものがある。
また、貧しいスラム街から富裕層の町にやって来て、優雅なランチを楽しむ主人公のウィルに、美人ウェイトレスが「あなたは外から来たでしょう?」と尋ねられ、「どうして分かる?」「だって、動きが忙しいもの」と答える場面も洒落が効いている。
映画としては、ドラマ重視なのか、アクションを見せたいのか、どちらも中途半端な印象があり、「もう少し、テーマを掘り下げてもよかったのではないか」という感が否めないが、 「時は金なり」の世界観は上手に描けており、一見の価値はある。
本当の富裕とは何か
本作のテーマは、まさに『時は金なり(Time is Money)』だ。
美人だろうが、天才だろうが、持ち時間が尽きれば、人生も終る。
「もう一度」と願っても、失われた時間は二度と戻らず、人生をやり直すこともできない。
人は若い間、美貌や才能を望むが、本当に大事を成したいなら、必要なのは健康な肉体と寿命だ。
ひ弱な肉体では徹夜作業もできないし、集中力も続かない。
映画TIME/タイム』の描く、「若さと健康を保障された、時間持ちこそ富裕層」という設定は、まさにの通りで、現実社会の全てを物語っている。
一般に富裕層といえば、「お金をたくさん持っている人」というイメージがあるが、お金とは、すなわち時間に他ならず、裕福な人と貧しい労働者の決定的な違いは何かといえば、「日銭を稼ぐために、あくせく稼ぐ必要がない」という点である。
時間のない貧乏人に比べ、富裕層は、1万円、2万円の小遣いを稼ぐために、あくせく働く必要がない。
貧乏人が眠っている間にも、利子や不労所得で資産は膨らみ、掃除や洗濯など、面倒なことも、全て人を雇って押しつけることができる。
映画『TIME/タイム』では、時間切れで寿命の尽きた人々の亡骸がそこら中に転がっているが、現実に、人が肉体を酷使できるのも、せいぜい40代まで、そこから先は『運』と思えば、いろんな示唆に富んでいる。
何故なら、底辺の人間にとっては、労働に時間を差し出すことが生きること、だからである。
時間の使い方で人生の価値が決まる
そんな過酷な世界で、「100年」もの持ち時間を得たウィルは、命をかけて富裕層の町ニューグリニッジへと乗り込む(グリニッジ時刻のもじりかと)
その100年を与えたのは、老いることもなく死ぬこともない人生に絶望しきった富裕層の男だった。
マフィアの追っ手から逃れるから逃れる男と、恐怖の一夜を過ごしたウィルが目覚めた時、窓に書かれていた言葉は「Don’t waste my time(時間を浪費するなかれ)」
それは映画でなくても同じこと。
人生とは、まさに『時間』。
大事を成したい人には、お金に換算できないほどの価値がある。
何故なら、金持ちも、貧乏人も、与えられた時間は「一日24時間」。そこだけが平等だからだ。
現実社会においては、生きる為の対価が『貨幣』というだけで、時計の上では、腕に持ち時間の刻まれた映画のキャラと変わらない。
その限られた時間を、どのように過ごすか。
人生の価値は、その一点に尽きる。
あり余る時間を放蕩に費やすのも本人の自由なら、限られた時間を勉学や友情に使うのも本人の自由である。
同じ一時間でも、スマホを見ながらダラダラ過ごすのと、本を読んだり、家族と有意義に過ごすのでは雲泥の差があり、その差は人生の質の違いとなって現れる。
あくせく働く必要のない富裕層に比べたら、貧乏人の時間の使い方は限られるかもしれないが、それでも、毎日の十分、二十分をどう過ごすかで、人生の価値は大きく変わる。
時間こそ、万人に平等に与えられた人生最大の財産だ。
果たして、あなたは時間を有意義に使っているだろうか。
あれこれ言い訳しながら、時間を無駄に浪費してないか?
映画『TIME/タイム』は、一見、アクション映画に見えて、人生の根源を問いかける、ユニークな作品だ。
だからこそ、時間に追われる人間の葛藤と、時間はたっぷりあるけれど、どこか満たされない虚しさを、もっと掘り下げて描いて欲しかったのだが。
前半が非常にテンポが良かっただけに、後半の捻りがいまいち物足りなかった、そこだけが気になる異色作である。
ジャスティン・ティンバーレークの魅力
私がジャスティン・ティンバーレイクを知ったのは2006年。
世界中で大ヒットした「セクシー・バック」のMTVがきっかけだ。
特に素晴らしいのが、官能的な美人女優スカーレット・ヨハンソンを相手役に迎え、昔のヨーロッパ映画風の演出が印象的な「What Goes Around…Comes Around」
メロディも綺麗で、本当におすすめです。
マドンナと共演した『4 minits』もノリのいい曲。
この時、マドンナ50歳。奇跡のような肉体美。
初稿 2012年1月12日