文芸– category –
-
詩を書く心・言葉で一瞬を永遠に留める ~寺山修司の少女詩集に寄せて
ハイティーン詩集傑作選もみずみずしい筆致で綴られた可愛い作品ばかりだ。「寺山修司なら読んでくれる」。そんな信頼も感じられる。だから、みな「ポエム」などと自嘲したりしない。自分の言葉を大事にする者は、相手の言葉も大事にできる。幼い詩人に必要なのは、詩を批評する先生ではなく、その詩情を受け止めてくれる優しい大人だろう。 -
人は「時を見る」ことなどできない ~認識の仕方は人それぞれ 『仮面画報』より
人は「時を見る」ことなどできない。見ることができるのは、「時計」なのである。人は「それ」をどのように認識するのだろう? 事象は事象であって、それ自体は何の意味もなさない。 -
現代人に欠けているのは「話し合い」より「黙りあい」 ~『東京零年』より
私は、現代人が失いかけているのは「話しあい」などではなくて、むしろ「黙りあい」だと思っている。絶え間ない情報の洪水というよりは、沈黙に対する耐性の低下。喋ってる間、人は深く考えないように、書いたり、覗いている間も、深く考えない。 -
手紙は距離を感じさせるだけ 寺山修司の戯曲『チャイナ・ドール』より
便りがない方が、身近に感じられていいの。手紙は距離を感じさせるだけだわ。何のレスポンスもない方が相手を身近に感じるのは、そこに無視も裏切りもないからだ。最後の便りの印象の中で、相手はいつまでも好ましい人物あり続ける。 -
詩心とは世界と人を愛する気持ち 『寺山修司 少女詩集』について
寺山修司の『少女詩集』の概要と「一ばんみじかい叙情詩 / しゃぼん玉 / 三匹の子豚 / 十九歳 / かなしみ / 汽車」を紹介。詩は役に立たないものにも美しさを見出し、人間社会に潤いをもたらす。コラム『詩心とは人と世界を愛する気持ち』と併せて。 -
美しいものへのあこがれが、どのように幸福を汚してゆくか
『この世で一番きれいな人は誰ですか』という問いかけは、美意識ではなく、自己顕示であり、支配欲である。美に対する理解から美しいものを求めるのではなく、グラビアの美女みたいに「誰よりも美しければ、権力を得られる」という野心が源にある。寺山修司の『幸福論』より美に関するコラムを解説。 -
全人的な意味での革命とは、自分が望んでいることが何かを知ること
政治的な革命というのは部分的な革命にすぎない。全人的な意味での革命とは、本当に自分が望んでいることがなにかを知ることから始めなければならない。寺山修司の名言をテーマにした生き方コラム。 -
懐かしのわが家(寺山修司の遺稿)
ぼくは不完全な死体として生まれ 何十年かかって 完全な死体となるのである そのときが来たら ぼくは思いあたるだろう 青森市浦町字橋本の小さな陽あたりのいい家の庭で 外に向かって育ちすぎた桜の木が 内部から成長をはじめるときが来たことを -
芸術作品の権威と格付け ~舌足らずにしか書けない、ユニークな詩の世界もある
「ベートーベンは楽聖である。私がベートーベンを好きになれないのは、野球のジャイアンツ、相撲の大鵬を好きになれないのに似ている。それは、すでにできあがった権威であり、ゆるぎない古典だからである」「音による支配」「楽器が生み出す権力」という寺山評。 -
母の呪いと子の彷徨を描く 寺山修司の戯曲『身毒丸』
幼い頃に母を亡くした少年しんとくは生みの母を恋しがっていたが、父親はそんな息子を不憫に思い、見世物小屋で蛇娘の母親を買ってくる。しかし、しんとくは継母に懐かず、継母も息子を呪い、地獄のような光景が繰り広げられる。作り物の家族と歪な母子関係を描いた寺山修司の戯曲を解説。母の本性をえぐるような台詞が印象的な傑作。「母に疎まれ、虚しい土人形 / まま母の呪いと子の悲劇 / 母とは菩薩でもあり、鬼でもある」等。 -
孤独とは慣れるのではなく、利用するもの 寺山修司の小説『ああ、荒野』より
孤独な老人の話を誰が積極的に聞きたいと思うだろう? 一人の時間と空間を大切にして、自分の内なる世界を楽しもう。寺山修司の小説『あゝ、荒野』の名言をモチーフにした心のコラム。 -
宮尾登美子『天璋院篤姫』 与えられた運命の中で生き抜く
親に命じられるがままに嫁ぎ、嫁いでからは個よりも公として生きる。今よりもっと女性が縛られた時代、天璋院篤姫は自らの意思によって将軍を支え、幕府政治の未来を負う。女性の生き方について考察するコラム『与えられた運命の中で生き抜く』と併せて。 -
厳しくも、その厳しさの中で生きていく ~宮沢和史さんのプシェミシル・コンサートの思い出 (2005年)
2005年、ポーランドの小さな地方都市プシェミシルで、外国人観客を相手に、立派にコンサートを務められたTHE BOOMの宮沢和史さんのプロ魂を綴ったライブの感想です。プロとは何かを考えさせる素晴らしいステージでした。 -
美空ひばりの名曲『人生一路』と幸せの数え方
昭和の歌謡界の女王・美空ひばりの名曲『人生一路』『川の流れのように』『悲しい酒』の歌詞を動画で紹介。人生と幸せに関するコラム。
『人生一路』 これが自分の生きる道『川の流れのように』/ この世は生きるに値する場所『悲しい酒』一幕の芝居のように / 人は一生かけて自分を磨き上げる / 近藤真彦の逸話 ~歌の上手いおばさん / 幸せの数え方 今日の己に、明日は克つ -
山崎豊子の医療小説『白い巨塔』 あとがきに記された作家の社会的使命とは
貧しい地方出身の財前五郎は浪速大学の教授に上り詰めるが、ガン転移を見逃し、患者を死に至らしめる。悲しみ憤る遺族は裁判を起こすが、財前は政治力を駆使して叩き潰そうとする。医学界のヒエラルキーと権力に翻弄される人間模様を、確かな医学知識を元に描く医療小説の金字塔。本作のあとがきに記された作家・山崎豊子の社会的使命を紹介。 -
戦後日本の宿命と社会の不条理を描く 森村誠一『人間の証明』
八杉恭子に人間の心が残っているなら、必ず自白するはずだ。戦争直後の混乱と貧困を背景に、人種差別や階級格差を描いた本作は、単なる推理劇にとどまらない重厚かつ社会的な人間ドラマ。 -
アルトゥール・ランボーの詩と伝記映画『太陽と月に背いて』
もう一度 探し出したぞ。何を? 永遠を。それは、太陽と番った 海だ。待ち受けている魂よ、 一緒につぶやこうよ、空しい夜と烈火の昼の 切ない思いを。フランスの天才詩人ランボーの傑作と、ポール・ヴェルレーヌとの男色スキャンダルをテーマにした映画『太陽と月に背いて』の魅力を紹介。 -
初心者におすすめ FOR BEGINNERS『ニーチェ』解説本 ~ルサンチマンの乗り越え方
竹田青嗣のやさしい文章とサイケデリックなイラストが魅力のビギナーズ本。生涯考え抜いたニーチェの生き様とルサンチマンの解決法などを引用を交えて紹介しています。 -
アーサー王伝説『シャロットの女』 恋と孤独を恐れた処女姫
呪いをかけられ、高い塔に閉じ込められた乙女にとって、外界と繋ぐ唯一のものは鏡だった。ある日、その鏡に騎士ランスロットが写り、その麗しさに魅了された乙女は思わず外界を目にして「呪いが私にふりかかった」と叫ぶ。運命を覚った乙女は一隻の船に乗り込み、最後の歌をくちずさみながら、やがて息絶えてしまう……。 -
名刺の肩書きは『旅行中』 小説『ティファニーで朝食を』 ~本当に自由な生き方とは
彼女の名刺には生き様そのものともいえる肩書きが一つ、『旅行中』。何ものにも属さず、誰のものにもならず、自由奔放に生きる女ホリー・ゴライトリー。”ティファニーで朝食を”とは、自我と自由を愛するホリーの心意気と、留まる所の無い不安と淋しさを表した、象徴的な言葉です。